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"雑魚"にモテても意味がない…婚活アプリで非"男尊女卑"の「金の卵」を一本釣りできるプロフィールの書き方

  • 2023.3.30

男女平等意識が高いパートナーを見つけ、支え合える結婚をするにはどうしたらいいのか。フェミニズムについて書く作家のアルテイシアさんが、尊敬する女性学研究者の田嶋陽子さんと語り合った――。(第1回/全3回)

※本稿は、アルテイシア・田嶋陽子『田嶋先生に人生救われた私がフェミニズムを語っていいですか⁉』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

出会い系アプリを使用する女性
※写真はイメージです
「大黒柱1本」ではなく、2本の柱で生きる“リスクヘッジ結婚”

【田嶋】若い世代は昭和モデルから脱却しかけているわけでしょ? あなたやあなたより若い世代の女性にとって、働く意味はどんなところにあるの?

【アルテイシア(以下、アル)】私が20代だった頃はまだ「自己実現」「好きを仕事に」みたいな夢や憧れがあったけど、今は「そんな悠長なこと言ってられねえ、働かないイコール死」みたいな感じですね。

とにかく将来不安がすごいです。たとえ今はそこそこの収入を得ていても、体を壊したりリストラされたりして働けなくなるかもしれない。だから男性に大黒柱になってほしいんじゃなく、2本の柱で支え合いたいから結婚したいという人が多いです。

【田嶋】なるほど、それだけ経済的不安が大きいわけね。

【アル】自分たちの老後は年金も破綻してるだろうし、国は2000万貯めておけとかムチャ言うし、今は小学生すら老後の心配をしているそうですよ。

【田嶋】へえ。若い人どころか子どもが老後の心配をしてるなんて……。

【アル】なので、若い世代にとって結婚はリスクヘッジの一つでもあります。柱は1本より2本の方が安心だよねっていう。指輪パカッされてプロポーズされてめでたしめでたし……みたいな夢や憧れはもうなくて、結婚しても3組に1組は離婚するし、先のことなんかわからないし、結婚して仕事を辞めるなんて怖くてマジ無理、専業主婦なんてリスクが高すぎます。

【田嶋】ちょっと前までは、男の稼ぎだけで女房、子どもを養っていた。男は配偶者控除に助けられながら頑張ってきたけど、女房はタダ働きで、仕事につく自由はなかった。2人で1人。今の話を聞くと、今もやっぱり2人で1人の体制だけど、違うのは2人ともそれぞれ給与所得者であるということ。女性と男性は同じ働いている人として発言権は、比較的対等にある。その違いは大きいと思う。

【アル】若い人の多くは、助け合う・支え合うパートナーがほしいって考え方ですね。「結婚せざるは人にあらず」という世間の圧は減ってきて、だから「結婚しないと恥ずかしい」みたいな理由ではなく、このヘルジャパンを一緒にサバイブするチームになろうぜ、おおー! みたいな感じです。

【田嶋】ある意味、理想的!

子育てをしっかりやる夫は妻にも子にも愛される

【アル】私は選択的子なしですが、チームとして子育てをする夫婦も多いです。育休を取る男性も増えてますよね。2020年の育休取得率は女性が81.6%、男性が12.65%です。12.65%という数字は過去最高だけど、取得期間は5日未満が約3割なので、やっぱり女性の育休とは大きな差があります。

ただ私の周りでは、夫が長期育休をとるケースも増えてきてます。女友達は出産後半年で職場復帰して、夫が1年半の育休を取りました。

【田嶋】それはいい。そういう選択が周りの目を気にしないでできるようになってほしいですね。

【アル】産む以外は男性も全部できるんだから、男性に長期育休をどんどんとってほしいです。

そしたら「男は仕事、女は家庭」というジェンダーロールも滅んでいくし。友人の夫は育休中のパパ友と子連れで出かけるとかしてますよ。

【田嶋】男性にとっても、そういう新しい楽しみが見つかるはず。

【アル】男性だって奴隷みたいに会社に使いつぶされる人生はつらいですよね。夜遅く帰って子どもの寝顔しか見られないなんて悲しいでしょう。それに妻側からの子育てしない夫に対する愛が冷めたという声はよく聞きますよね。逆に子育てをしっかりやってる夫は妻にも子にも愛されてます。男性こそ「子育てする権利を奪うな!」と声を上げてほしいですよ。

【田嶋】ほんとそうだよ、男女ともに生き方の幅が広がるわけだからね。

多くの女性が男を選ぶ時代になってきた

【アル】私の周りには、妻がメインで働いて夫がメインで家事育児をするカップルが何組かいます。そうやって得意分野で支え合えばいいですよね。この場合、夫側の「どうせ俺は君より稼いでないし」といじけないメンタルが大事ですけど。

【田嶋】そういう面倒なこと言わないのは大事。その発言の背景には「稼いでない男は情けない」「男より稼ぐ女はかわいくない」みたいな男らしさ・女らしさの呪いが見えるよ。

【アル】妻の方が高学歴高収入で仕事ができても、夫が劣等感を抱いたりせず、お互いに尊敬して感謝しあえる夫婦。そんな夫婦も徐々に増えてきてますね。

【田嶋】共働きの夫婦の中には20代で家とかマンション買っちゃう人たちもいるからね。そういう人たちがどんどんメジャーな場に出てきて、ロールモデルになってくれるといいね。

【アル】私の周りは血中フェミ濃度の高い女性が多いので、男女平等意識の高いパートナーを選んでます。「夫選びに成功した」とみんな言ってますよ。

【田嶋】昔はどっちかというと「男に選ばれる」って考え方の女性が多かったけど、今はより多くの女性が主体的に男を選ぶ時代になってきた。そういう人たちの人口がもっとどんどん増えるといいね。

キッチンで皿を洗う男性
※写真はイメージです
マッチングアプリには無限の可能性がある

【アル】最近はマッチングアプリで婚活して、パートナーをゲットしている人が多いです。

【田嶋】なるほど。選択肢が日本全国の男たち?

【アル】そこに無限の可能性があるんです。アプリなら何万人もの選択肢の中から、自分にマッチする人を選べるから。

【田嶋】それで騙されるみたいなことはないの?

【アル】そのリスクはあるので、上手に使わないといけないんです。拙著『自分も傷つきたくないけど、他人も傷つけたくないあなたへ』(KADOKAWA)では、アプリでベストパートナーに出会うための「効率的な婚活のノウハウ」も書いてるんですけど。

【田嶋】へえ、それは助かるね。

【アル】いろいろ書いてるんですよ(笑)。アプリの中にはセックス目当てのヤリチンや隠れ既婚者といった魑魅魍魎ちみもうりょうも潜んでいるから、そいつらをブロックするには「すぐに会えないアピール」が効果的です。プロフィール欄に「真面目な出会いを求めてます。メッセージのやりとりをしてお互いを知ってから会いたいです」と書くと、きゃつらは「面倒くさい、ヤレなさそう」と判断するんですよ。

あと初回アポでは昼間にお茶かランチを提案すること。魑魅魍魎は夜に活動するので「夜飲みに行こう」とゴリ押ししてくる男は要注意とか。

【田嶋】なあるほどねぇー。

「金の卵」を“一本釣り”する

【アル】真剣に相手を探している男性もたくさんいるので、上手に使えばキンタマをゲットできます。キンタマとは「金の卵」という意味なんですけど(笑)。「モテよりマッチング」「雑魚モテを捨てて一本釣り」「プロフィールでフル開示」「NG項目を明記する」など、私の提案するノウハウを実践して「キンタマを一本釣りできました!」と嬉しい報告をもらいます。

【田嶋】一本釣りか、すごいなあ。

【アル】たとえばプロフィール欄に「男尊女卑な人は苦手です」「共稼ぎで家事育児を分担できる方を希望します」とか明記しておくと、女に家事育児を丸投げしたい男尊女卑マンは寄ってこないですから。

【田嶋】なあるほど。そうやって選抜していくってことなんだ。面白い。

【アル】昔は職場の人とか友人の紹介とか、身近なつながりから探すしかなかったけど、アプリを使えば選択肢は一気に広がりますよね。この世はでっかい宝島ですよ。

「モテたい」「男受けしたい」という邪心を捨てる

【田嶋】可能性は無限大、ということか。アプリ婚活を成功させるためのポイントは何なの?

アルテイシア・田嶋陽子『田嶋先生に人生救われた私がフェミニズムを語っていいですか⁉』(KADOKAWA)
アルテイシア・田嶋陽子『田嶋先生に人生救われた私がフェミニズムを語っていいですか⁉』(KADOKAWA)

【アル】ポイントは「モテたい」「男受けしたい」などの邪心を捨てることです。私は「喧嘩に負けて勝負に勝つ」とバトル漫画のようにたとえてますけど(笑)

結婚は選挙と違って「自分にピッタリのたった1票」をゲットすればいい。でもどうしても不特定多数に好かれたいと思ってしまうじゃないですか、女性は特に「女はいつも笑顔で愛想よく」と刷り込まれているし。そうじゃなくて「雑魚モテしても無駄無駄ッ!」と嫌われる覚悟で「いいね」の数を10分の1に減らそうって作戦です。残った1割の中に、本当に自分に合うキンタマが潜んでいるから。

【田嶋】きちんと自己主張をして、そのうえでマッチングすることが大事なんだ。

【アル】「男尊女卑な人は苦手です」とハッキリ主張すれば「面倒くさそうな女だな」と思う男は排除できるし、「自分も男尊女卑とか苦手だし、価値観が合いそう」と思うジェンダーイコールな男子を一本釣りできるんですよ。

【田嶋】今の話を聞いてると、しっかり自分の意見がある人で、取捨選択できる能力がないとできないってことかな。いいね、まさにフェミニズムだよ。それができる女の人たちも、それを教えてるあなたもお見事!

フェミニストは婚活に向いている

【アル】フェミニストは男に嫌われることに慣れているし、「女は男に選ばれるもの」ではなく「自分で選ぶ」と主導権を握れる人が多いので、意外と婚活に向いてるんです。

【田嶋】うんうん。嫌われる覚悟と勇気をもって、ちゃんと自己主張できるってすごく大事。それはフェミニズムの精神がないとできないことだと思う。

【アル】自分をさらけ出して「これが私だ! こんな私をいいねと思う者だけ来い!」と思える強さが必要ですよね。

【田嶋】すばらしい覚悟と勇気だよ。素敵な話を聞かせてもらった。もう今日の話はこれでおしまい!(笑)

【アル】いやまだ終わらんですよ(笑)。

【田嶋】今の結婚がそういう方向になってるなら、フェミニズムが成功してるじゃない。結婚はタダ働きの疲れてなんぼ、みたいなのと全然違う。

【アル】女を奴隷扱いしない、対等に尊重し合えるパートナーを選べば、結婚して幸せになれる可能性は高いと思います。

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