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50歳前後で"出世の見込みが消える"ことは素晴らしいこと…会社員歴40年のお金のプロがそう断言する理由

  • 2023.3.29
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50代前後となると、さらなる出世の見込みが絶たれる人が多くなる。経済コラムニストの大江英樹さんは「40代のうちは、まだ、ひょっとしたら役員になれるかもしれないという希望を持っていたとしても、50歳を過ぎれば事実上、ほぼその可能性はなくなります。つまりその会社の中での出世はもう終わったということになるのです。これはとても素晴らしいことです」という――。

※本稿は、大江英樹『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

オフィスで疲れている女性
※写真はイメージです
何をやればいいのかわからない

企業で50代社員向けセミナーをすると、必ず出てくるのが「好きなことをやれといわれても何をやっていいのかわからない」という言葉です。この声は、ほぼ例外なくどの企業でも出てきますので、サラリーマンにとってはごく自然な感想なのだろうと思います。

でも私に言わせると、これは典型的な「サラリーマン脳」の発想です。この言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、最近はいろいろなところで使われるようになってきました。

「サラリーマン脳」とはいったい何か? それを一言で表すと、「すべての活動が受動的である」ということです。

上からの指示がないと、自分からは能動的には行動できなくなってしまう。何かをすることによるリスクを過剰に恐れ、ひたすら責任を逃れることばかり考えるようになる、という感覚です。

これは何もよいところがないようですが、サラリーマンとして生きていく上では必要とされる能力だったのです。自分でなりたくてサラリーマン脳になってしまったのではなく、サラリーマンとして優秀であるがゆえに、サラリーマン脳の持ち主になってしまったのです。

なぜ「サラリーマン脳」になってしまうのか

人間、誰でも、学校を出て社会人になる時は、不安がある一方で希望もあるはずです。自分はこんな仕事がしたいとか、将来はこうなりたいという目標だってあるのは当然です。

ところが、いったん組織の中に入ってしまうと、すべてにおいて自分の意思だけでものごとを決めることはできなくなってしまいます。

もちろん、社長の鶴のひと声で何事も決まるような会社であればこれは当然ですが、必ずしもそんな独裁的な会社ではなく、普通の会社であっても、組織で決まれば、それは個人の意思よりも優先されるのは仕方のないことです。

結局、組織の中でものごとを進めようとすると、根回しとか、社内力学とか、そういうバランス感覚を重視せざるを得なくなります。それに、自分のやりたいことを、ある程度根回しをしながら進めていったとしても、どこでどんでん返しを食らってボツになるかもわかりません。私も40年近くサラリーマンをやってきましたから、そんな経験は嫌というほど味わっています。

1人1人が経営者の視点を持て! と言われても無理

会社という組織の中で、自分が関わるすべての案件を、自分が考えているように通すためには、気の遠くなるようなパワーが必要になります。したがって、これだけはどうしても実現したいという案件以外については、大勢が決定するまで待つのはやむを得ないでしょう。社内の偉い人は、「1人1人が経営者の視点を持て!」などと聞こえのよいことを言いますが、いくら経営者の視点を持っても、それに見合う権限が与えられていないわけですから、そんなこと無理に決まっています。第一、それほど給料はもらっていません。

必然的に、仕事において「自分のやりたいこと」を考える、ということは次第に遠ざかっていきますし、仕事以外のことでも、「自分のやりたいこと」を明確に意識するという習慣はだんだんなくなっていきます。

かくしてサラリーマン脳に侵された結果、「やりたいことをやれ、と言われても、何をやっていいかわからない」ということになるのです。

出勤中の会社員
※写真はイメージです
50歳前後からは「サラリーマン脳」を排除せよ

それでも、会社にいる間は「サラリーマン脳」で何の問題もありません。いや、むしろサラリーマン脳でなければ、余計な摩擦と労力を費やすことになるかもしれません。

でも、定年が視野に入ってきた50歳前後からは、できるだけ頭の構造を変えて、サラリーマン脳は排除するように努めるべきだと思います。

現代では、得体の知れない「老後不安」というナラティブ(物語)に誰もが影響を受けています。その結果、そればかりに気を遣い、ひたすらお金を貯めていく一方で、自分のやりたいことが何かもわからないまま、定年を迎えることになります。

そうなると、お金はあったとしても、それを使って充実した楽しい老後を過ごすことができない、という事態になってしまうからです。

そして、そんな事態のまま、人生の最後を迎えた時に何千万円あったとしても、それはまったく意味がありません。そのお金をそれまでに自分のやりたいことに使っていれば、あるいは欲しいものを手に入れていれば、どれぐらい充実した人生が送れたことでしょう。死ぬ間際になって、「これだけのお金を、もっとやりたいことに使っていれば」という後悔はしたくありません。

「やりたいことがわからない」などという悲しいことを言っている場合ではありません。今からでも遅くないので、サラリーマン脳を捨て去り、自分のやりたいことを探すべきだと思います。

どうすれば「サラリーマン脳」を捨てられるか

では、どうすればサラリーマン脳から脱却することができるのでしょう。

これはそれほど簡単なことではありません。なぜなら前述したように、会社の中で頑張って上を目指そうとすると、自分1人が突出した存在のままでいるというのは難しいからです。別に「事なかれ主義」でなければだめ、というわけではなく、最終的にものごとをスムーズに進めるためには、周りにも配慮しなければなりませんし、我を通すだけではうまくいきません。必然的にサラリーマン脳を続けざるを得ないのです。

個人的な開発、個人的およびキャリアの成長、進歩と潜在的な概念
※写真はイメージです

では、そもそもいったい何のためにそんなことをするかといえば、ホンネでは、会社の中で偉くなりたいからですよね。実力主義とか成果主義といいますが、やはり人事は好き嫌いで決まることが多いものです。もちろん、上に気に入られても、仕事ができなければ話になりません。当然成果を出した上で、協調性とか人間関係を大事にしながら、うまくバランスをとりつつ仕事を進めていくのが理想です。結果として、自分のやりたいことを第一に主張するということはしないという「サラリーマン脳」になってしまいます。

でも、ここで少し発想を変えてみましょう。もし、会社の中で偉くならなくてもよいと思ったらどうでしょう。周りとぶつかろうが上に嫌われようが、主張すべきことは主張するという仕事スタイルにはなりませんか?

だとすれば、会社の中でそうなった時点から、発想を変えてみればいいのです。

“成仏”すればサラリーマン脳から脱却できる

私はいつも、50代の社員の人たちへの企業内研修において、「50歳になったら早く成仏しなさい」と言います。「成仏する」というのは、もちろん比喩的な表現であり、具体的にいえば、会社での立場とか出世を気にするのをやめよう、ということです。

40代のうちは、まだ、ひょっとしたら役員になれるかもしれないという希望を持っていたとしても、50歳を過ぎれば事実上、ほぼその可能性はなくなります。つまりその会社の中での出世はもう終わったということになるのです。

出世の見込みが消えることは素晴らしいこと

これは考えてみると、とても素晴らしいことです。それまで、仕事で成果をあげるだけでなく、「サラリーマン脳」をフルに使って周りに気を遣いまくり、いろんなことに我慢をしてきたのも、ひとえに、上からの評価を受けて出世したいという心の重圧があったからです。もうその可能性がなくなったのであれば、こんな気楽なことはありません。自分の思うことを素直に表せばいいのです。

大江英樹『90歳までに使い切る お金の賢い減らし方』(光文社新書)

もちろん、受け入れられる可能性は低いでしょうが、だからといって残念に思う必要もありません。そんなものと割り切ればいいのです。

かくいう私も50歳手前で、社内的にはあまり陽の当たらない部署に異動になり、気持ちを切り替えて“成仏”しました。そうすると、それまで見えていた世界とはまったく違うものが見えてきて、やりたいこともたくさん出てきたのです。

そうやって気持ちを切り替えるうちに、仕事だけでなく、趣味や生活の面でも、自分のやりたいことを考えられるようになってくると思います。人生の後半、会社生活の終盤では、この「サラリーマン脳」からの脱却がとても大切なことなのです。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。

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