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サーフィンの習得はメンタルヘルスケアになるって本当?

  • 2023.3.18

サーフィンをすると、頭が最高にスッキリする。地上の喧騒を逃れて波に乗るわけだから、気持ちよくないわけがない。

サーフィンがメンタルヘルスに良いことを示す研究結果は着実に増えており、子どもと思春期の若者を対象に行われた最新の予備調査も、それを裏付ける結果となった。

サーフィンの効果は、メンタルヘルス疾患を抱えていなくても十分に感じられる。今回の調査結果から、その理由を学んでほしい。オーストラリア版ウィメンズヘルスから詳しく見ていこう。

サーフィンがメンタルヘルスによい理由

これまでの研究で実証されたサーフィンのメリットは、自尊心の向上、社会からの孤立感の軽減、うつ病をはじめとする心の病の改善と幅広い。

このようなエビデンスは主に、サーフィン療法プログラムから得られたもの。サーフィン療法プログラムは、親切丁寧なサーフィン指導と心の健康を促進するアクティビティ(マンツーマンまたはグループ)を組み合わせた新しいタイプの心理療法。

サーフィン療法プログラムの特徴は、心理的に安全な環境で、参加者にサーフィンの習得という課題を与えること。

このプログラムは以下の理由からメンタルヘルスによいと言える。

・社会とつながっているという感覚が強くなる

・このプログラムにおける達成感から、他の活動にも積極的になれる

・サーフィンの習得に集中することで、日常のストレス要因から一時的にでも解放される

・サーフィンをすると、ストレスホルモンが減ったり、気分を高める神経伝達物質が分泌されたりといった生理学的な反応が起こる

・自然の中、特に“ブルースペース”(水の上または近く)で体を動かせる

調査概要

この最新の予備調査は、『オーシャンマインド』というサーフィン療法プログラムによって、子どもと思春期の若者のメンタルヘルスが改善するかどうかを調べるために行われた。

調査チームは、参加者がサーフィンを「メンタルヘルスの問題に対処するための方法」として受け入れるかどうかにも興味があった。

この調査には、不安障害や神経発達障害(注意欠陥多動性障害か自閉スペクトラム症)の治療を求める8~18歳の若者36名がメンタルヘルス専門医、総合診療医、スクールカウンセラーを通じて参加した。

この36名は『オーシャンマインド』サーフィン療法プログラムをすぐに開始するグループと、順番待ちをするグループ(コントロールグループ)に無作為に分けられた。ただし、どちらのグループに対しても、専門医による通常の治療および症例管理は継続して行われた。

プログラムの参加者は6週間にわたり、週末に2時間のセッションを受けた。また、このプログラムでは、参加者の1人ひとりにメンタルヘルスの教育とサーフィンの指導を受けたコミュニティ・メンターがついていた。

親切丁寧なサーフィン指導とグループ制のメンタルヘルスサポートは、いずれもビーチで行われた。各セッションを取り仕切ったのは、メンタルヘルスとサーフィン指導のトレーニングを受けたプログラムコーディネーター。

調査結果

6週間後、コントロールグループの症状は悪化していたのに対し、サーフィン療法を受けたグループには、うつ、不安、注意欠陥、多動性の症状の緩和だけでなく、感情的な問題や仲間同士のトラブルの減少も確認された。

このようなプラスの変化は、残念ながらプログラムの終了を機に止まってしまった。

それでもサーフィン療法は、「若者にふさわしいメンタルヘルス疾患の管理方法」として参加者に認識された。このプログラムの修了率が87%と高かったのも、その証拠にほかならない。一般的な心理療法(カウンセラーと患者が話し合うトークセラピー)では、子どもと思春期の若者の28~75%がドロップアウトしてしまう。

考察

有望な結果が出たとはいえ、この調査はまだ初期段階。今回の調査結果を裏付けて、サーフィン療法プログラムの対象者を広げるためには、より大規模な研究が必要になる。

調査チームは、理想的なセッションの頻度と長さ、プログラム期間に加え、参加者のメンタルヘルスに現れたプラスの変化をプログラム終了後も維持する上で必要な要素も把握したいと考えている。

今回の調査でサーフィンが効果的で受け入れやすいメンタルヘルスの療法として捉えられたという事実は、明るい未来を予感させる。でも、だからといって、トークセラピーや投薬といった従来の療法が不要になることはない。一部の人には、サーフィンより従来の療法のほうが効果的と言えるはず。

それゆえにサーフィンは、従来の療法を補完する療法、あるいは従来の療法から効果が得られないときの代替案として捉えてほしい。

サーフィンをしてみたい?

サーフィンに興味があるなら、これだけは覚えておいて。

海のコンディションは絶え間なく変化するので、サーフィンは高い集中力を必要とする。だからこそ、日常生活を離れてストレスを発散するには、うってつけの方法と言える。

サーフィンなら、メンタルヘルスの治療を受けることに抵抗がある人でも比較的受け入れやすいはず。

でもサーフィンには向き不向きがあるし、それで症状が絶対に緩和するとは言い切れない。世界屈指のサーファーでも、うつになって外部のサポートを必要とすることはある。

もし海やサーフボードがなくても大丈夫。自然の中で行う他のアクティビティ(ハイキングやーデニング)も、メンタルヘルスにとてもよいから。

※この記事は当初、『The Conversation』に掲載されました。

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Nikolia Ilic Translation: Ai Igamoto

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