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『幻滅』のバンジャマン・ヴォワザンが語る【sweetムービーインタビュー】

  • 2023.3.18

Benjamin Voisin

バンジャマン・ヴォワザン

Benjamin Voisin 1996年12月24日、フランス・パリ生まれ。2017年の『ホテル・ファデットへようこそ』でスクリーンデビュー。初主演作『Summer of 85』(20)で一躍脚光を浴びた。


少年達の恋を描いたフランソワ・オゾン監督『Summer of 85』(20)で注目されたバンジャマン・ヴォワザン。

最新作は、19世紀の文豪オノレ・ド・バルザックによる人間喜劇『幻滅 メディア戦記』を原作にした『幻滅』。2022年セザール賞で作品賞を含む7部門を受賞し、彼自身も史上最年少で有望新人男優賞に輝いている。

「受賞の発表を待つまでの20分間はストレスで胃がすごく痛かった」とにこやかに当時を振り返るバンジャマン。身長185㎝の長身に端正な小顔。文句なしのイケメンなの
に、会うなり「キミ、なにか飲む?」と愛嬌もサービス精神もたっぷり。惚れるわぁ。

演じるのは、詩人を夢見ながらも名声と欲望に溺れる青年リュシアン。初恋に頰を染める初々しさ、コンプレックスに苛まれる卑屈な眼差し、束の間の名声に酔う狂乱の姿など多彩な演技を披露している。

「人物像は誰にも相談せずに、いつもひとりで創ります。監督がどこを目指しているかを想像しながら、準備万端で現場に入るのがボクの流儀。泣く、笑う、叫ぶ。その場で要求されることの全てに、即、対応できるようにしたい。

とはいえ『Summer of 85』の撮影終了からこの作品の撮影開始まで5日間しかなくて……。ボクの苦労、分かるよね(笑)」

詩集出版を目指すリュシアンは、その糸口と生活のために新聞記者に。そこで痛烈に描かれる19世紀フランスのメディア事情が今と変わらない。

現代でいうところのフェイクニュースやステルスマーケティングが横行しているところが興味深く、ひどく滑稽だ。

「ジャノリ監督の父親がジャーナリストだから、ジャーナリズムについて描きたいという気持ちはあったと思います。でも、もっと本質的なテーマは自分の行為について。リュシアンなら詩を書くという行為の美しさを犠牲にして、どこまで汚いことに手を染めるのかという。

あなたの欲望を満たすためにやることについて、“どこまでがリミットなのか?”という問いかけですね」

リュシアンの暴走を見守る誠実な作家にはグザヴィエ・ドラン。監督としても絶大な人気を誇る彼の作品に、出演する可能性は?

「前は出たかったけど、友達になっちゃったから。彼と一緒にやりたいという俳優はたくさんいるでしょ。だからこそ役欲しさに取り巻きになることは絶対したくない。公
明正大に、誠実に接していたいから。もちろん“ぜひに!”と言われれば出演する。ただしボクのほうから誘うようなことはしたくないんだ」

今後の予定は?
「たくさんのオファーが来ているけど、だからこそ厳選しなきゃいけない。同じようなことを繰り返すのは、観客や監督のためにもしたくない。“ちょっと怖いな”と思うくらいが、原動力にもなるしね。とにかく、今は前だけを向いて突っ走っている最中です!」

『幻滅』
story:19世紀フランス。詩人を夢見る青年リュシアン(B・ヴォワザン)は貴族の人妻ルイーズ(C・D・フランス)と駆け落ち同然でパリに来た。やがて生活のために新聞記者になるが、金のために魂を売る先輩達に感化されてしまい……。
監督:グザヴィエ・ジャノリ/出演:バンジャマン・ヴォワザン、セシル・ド・フランス、ヴァンサン・ラコスト、グザヴィエ・ドラン ほか/配給:ハーク/公開4月14日
より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

© 2021 CURIOSA FILMS – GAUMONT – FRANCE 3 CINEMA –
GABRIEL INC. – UMEDIA


■ライター プロフィール
よしひろまさみち

『スウィート』のカルチャーページでもおなじみの映画ライター・編集者。日本テレビ系『スッキリ』ではレギュラーで映画紹介を務める。

text_MASAMICHI YOSHIHIRO
web edit_KAREN MIYAZAKI[SWEETWEB]
※記事の内容はsweet2023年4月号のものになります
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