1. トップ
  2. 恋愛
  3. 「誰が並ぶって決めたんだ!」逆ギレしてきた"割り込みおじさん"を撃退した、ちょっと笑える最高の一言

「誰が並ぶって決めたんだ!」逆ギレしてきた"割り込みおじさん"を撃退した、ちょっと笑える最高の一言

  • 2023.3.11

並んでいるのに割り込んでくる人、歩きスマホでぶつかりそうになる人、ポイ捨てする人……。マナーの悪い人に遭遇したとき、イライラを抑えるにはどうしたらいいのか。漫画家の田房永子さんは「『相手がどうしてくれたら自分は満足なのか』という視点を持つことで、イライラを引きずらなくなった。そして相手に直接抗議することもあるが、その時には3つのルールを自分に課している」という――。

頭を抱える女性
※写真はイメージです
マナーの悪い人にイライラしてしまう

『キレる私をやめたい』という漫画を出している私は、「怒りを静める方法」を伝える講座をやらせていただくことがあり、そこでこんな質問を受けることがあります。

街でマナーの悪い人に遭遇した際、すごくイライラして一言物申しそうになります。結局言わないのですが、そのあとずっとモヤモヤしてイヤです。イライラを抑えるにはどうしたらいいでしょうか。

ここで指す「マナーの悪い人」とは、狭い道ですれ違うときにこちらを避けようとせずに真っすぐ歩いてくる、電車でみんなが降りようとしているのにドアの前に仁王立ちで動かない、歩きスマホで人にぶつかりそうになる、喫煙所じゃないところでの喫煙、列に割り込む、ポイ捨て、などをする人です。

そこで今回は、私が心がけている「マナーの悪い人に遭遇した際のイライラを抑える方法」をご紹介します。

「普通はこうするものなのに」がイライラを加速させる

みんなが守っていることを守らず秩序を乱す人に出くわした時、「どうしてこの人はこんなことをするんだ」という疑問が浮かびがちです。その疑問の軸には「こういう時は普通こうするものなのに」という「常識」があります。

しかしこの疑問は、イライラを加速させる悪玉です。だって考えても絶対に解けないし、すでに相手への敵意と見下しが発生しているので平和な答えは出にくい。考えれば考えるほど「相手が悪で自分は善」という構図が強化され「よし、言ってやろう」につながります。

この状態で「ひとこと言ってやる」を実行すると、その疑問をまんまぶつける形になり、「あなたは非常識だ」というメッセージがこもりまくってしまいます。すると相手が逆ギレしてきて収集がつかなくなったりします。

街でケンカになってる人たちの言葉を聞いてみると、たいていこのテイストで相手を責め合っています。

まあ、人間同士、そういう日もありましょう。

しかし私は絶対にケンカしたくない。けんか腰で物申した時点で「同じ穴のムジナ」って感じがするし、駅でキレ合っちゃったりしたら勝手に撮影されてYouTubeにアップされたりする時代だし。何より、嫌な気持ちを家に持ち帰りたくない。

そのために、マナーの悪い人に遭遇して「なんだこの人、非常識だな」と思ったら、途中から「この人がどうしてくれたら自分は満足できるのか」という疑問に変えるようにしています。

「私はあの人に、避けてほしかった」

例えば、お互いに譲り合わないと通れない狭い道ですれ違う時に、こちらを避けようとしない人がいたとします。「すれ違いざま」が多いから瞬間のことだけど、そこでほのかに感じる相手からの悪意と故意な感じに、スンッと心が悲しくなることってありませんか?

その人のパッと見の人となりから、どんな人なんだろう、なんでそういう態度をするんだろう、と想像が始まるのを意識的に切り上げて、「私はあの人にも避けてほしかったなあ」と「私」を主語にしてみます。するとだんだん「私だけ避けて、あっちだけ得してるみたいで腹立ったんだなあ、私は」とか、その出来事のどの部分に自分は腹が立ったのか、が分かってきます。

人間は、「自分がどこにどういう感情を働かせているのか、について自分自身に関心を持ってもらうと満足する」という傾向があります。これはセラピーや心理療法でよく言われています。

「道で避けない人間って一体なんなんだよ」と怒りが湧くのは、そこに自分の「道は譲り合って歩くべきだ」という思いがあるから。

「道は譲り合って歩くべきだ」というところを軸にしていくと「そうしない人は間違っている」というポイントから動けなくなる上に、そこには「私」が登場しないので、イライラとモヤモヤだけが続き、相手がどんどん悪人に思えてきます。

「私はあの人に、避けてほしかった」という気持ちを軸にするだけで、不思議とイライラがおさまる感覚が出てくると思います。

その方法に慣れてくると、心のゆとりが生まれて「もしかして相手にはのっぴきならない事情(大便を我慢している等)があったのかもしれない」などの発想ができるようになったりもします。

「相手がどうしてくれたら自分は満足なのか(自分のニーズ)」の視点を持つことは「NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)」というコミュニケーションスキルを習う場で教えてもらいました。

この方法をやるようになってから、そういう人に遭遇しても、目的地に着く頃には忘れているようになりました。

抗議するときの3つのルール

私は、マナーの悪い相手に直接抗議をすることもあります。これも今までにいろいろ試行錯誤してきました。

自分がわざとじゃなくてやってしまって、知らない人にキツい口調で注意されてショックだった経験や、逆にこちらが感情にまかせて言ってしまって後味が悪くてつらかった出来事など、それらを織り交ぜて、自分はどういう風に人に指摘したいのか、それを考えてきました。

決めたのは3点。

1 明らかに故意に、私へのアクション(割り込み)をしてきた人には抗議する。状況を見て、絶対に安全を確信してから。危険すぎると思われる相手には無理しない。 2 抗議の際は、相手に敬意を持つ。バカにするような失礼な物言いや乱暴な言い方はしない。 3 ユーモアを交え、意表を突くことが理想。

というものです。意表を突く、というのは「あなた、ダメでしょう!」みたいな普通の言い方をしないということです。周りにいる人も思わず吹き出してしまうような、コミカルな感じで抗議する、というのが理想だなと思っていました。

先日、その集大成とも言える対応ができました。

割り込んできて「逆ギレ」

駅にある個別ロック式の有料駐輪場(無人)に自転車を止めようとした時のことです。

駐輪場には私1人しかおらず、全て埋まっていて自転車が止められませんでした。ちょうど1人の男性がやってきて自転車を出そうとしました。

人が自転車を出し終わるのを露骨に待つのは恥ずかしいけど、「待っている」ということが分かる位置に立ってないと他の人に取られてしまうので、その男性の近くまで自転車を押していき、待っていました。

イラスト=田房永子

男性が自転車を出しきるか否かの時、自転車を押したおじいさんがやってきて、スーッと私の前に入ってきました。おいおい、と思い

「あの、私が並んでました」

と声をかけたのです。

そうするとおじいさんは

「んんだああ!!! 誰が決めたんだ!! 並べって言われたのかぁっ!!!」

と怒鳴ってきました。

その瞬間「確かに、整理券を配ってるわけでもないし、並んで待つシステムはここにはないな、おじいさん一理あるじゃん」と思いました。

「でも、それがないからこその、みんなの暗黙のルールで成り立ってるわけで……」という感情も0.001秒くらいで出てきて、それらが入り交じった私はおじいさんの顔を見て

「そ、そんなぁ~」

と言いました。

「そんな、殺生なあ~」の言い方です。そんなこと言おうと思ったこともなかったけど、とっさに口から出てきました。

顔はトホホ~~みたいな表情になっていたと思います。

イラスト=田房永子

するとおじいさんは「⁉」という感じで言葉をつまらせ、Uターンして立ち去ってしまいました。

私は、自分史上最も好ましい対応ができた! と思いました。

「勝った」感じがした

おじいさんを必要以上に攻撃することなく脅かすことなく、「相手にも確かに一理ある」ことを認め、自分がちょっと下に立った感じで、敬意を持って自分の意思をユーモアを交えて伝えることができた。さらに、自分の正当性を相手に認めさせることができた。「勝った」感じがしました。

しかし自転車を押しているおじいさんの背中を見たら、私のほうが若いのに申し訳ないな……と罪悪感が湧いてきて「いいですよー! 譲りますよー!!!」と叫んだけどおじいさんはこちらを振り返ることなく行ってしまいました。

最後の罪悪感からくる「譲る」は、好ましい対応での勝利ゆえの心のゆとりから生まれたものなので、最初からおじいさんの割り込みを許して「譲る」のとは全く違うわけです。

自分としてはそれも含めて満足しました。自分のニーズを自分の求める形で満たすことができたからです。

そこまでくるともはや、「『そんなあ』の一言で引き下がってくれたおじいさん、ご協力ありがとう」みたいな感謝の念まで出てくる始末でした。

いかがでしょうか。

こういった対応は、外見も大きく影響すると思います。私の場合は「丸い体型の中年女性」なので、今回の対応が効いたのかもしれません。今後も使っていこうと思っています。おそらくさらに加齢したら別の対応が必要になってくるので随時更新していこうと思います。

街にいるみんなそれぞれが、ご自身に合わせた対応を編み出した時、世の中さらに平和になるんじゃないかと思っています。

田房 永子(たぶさ・えいこ)
漫画家
1978年東京都生まれ。2001年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞(青林工藝舎)。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に刊行、ベストセラーとなる。ほかの主な著書に『キレる私をやめたい』(竹書房)、『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』(河出書房新社)、『しんどい母から逃げる!!』(小学館)などがある。

元記事で読む
の記事をもっとみる