1. トップ
  2. 不満と反感を抱きながら仕事を続ける「リセンティーズム」ーあなたの職場にもあふれてない?

不満と反感を抱きながら仕事を続ける「リセンティーズム」ーあなたの職場にもあふれてない?

  • 2023.3.10
  • 1025 views

ホリデーシーズンを間近に控えた12月は、みんな一刻も早く仕事を終わらせようと頑張っていた。ところが短い年末年始休暇が終わった途端、職場は過去に逆戻り。振り払おうにも振り払えない従業員たちの不満が目に見える形で現れている。

足を引きずるようにして出勤を続ける人は非常に多い。2022年は、“静かな退職”が世界中の職場で見られたけれど、2023年は“リセンティーズム”という現象が注目を浴びる予感。リセンティーズムは、いまの仕事に大きな不満を感じながらも出社して、働き続けることを言う。

静かな退職のキーワードが“無関心”だったとすれば、リセンティーズムのキーワードは“反感”。静かな退職を選ぶ従業員は、仕事に対する意欲や関心を失って最低限のことしかしない。2022年の中国では、“let it rot(レット・イット・ロット/腐らせちゃえ)”という言葉も生まれた。これは「意味があるとも実現するとも思えない期待を捨てて自堕落になり、好きなだけ腐っちゃおう」という諦めにも似た言葉。

スタッフ管理ソフトウェアプロバイダの『RotaCloud』は、強い反感を胸に秘めながらも働き続け、現状に対する不満を募らせていく人を見て、この言葉を生み出した。『RotaCloud』によると、リセンティーズムは伝染病で、1人がリセンティーズムを発症すると、自分の役割やキャリアに疑問を感じる人が増えてくる。

受賞歴のあるトランスフォーメーショナル・キャリアコーチのブルック・テイラーいわくリセンティーズムの台頭は、パンデミックがもたらした大量離職と“閉じ込められて逃げ道がない感じ”に起因する。「労働人口の大半を占めるミレニアル世代とZ世代は、お金のためだけに働きません。彼らは仕事に目的、意味、帰属感を求めます。でも、ほとんどの雇用主には、それを提供する方法が分からないので、従業員はよくても不満、最悪の場合、反感を抱きます」

「昨今は弱気市場、大量解雇、景気後退が懸念される世の中なので、人々は好きでもない仕事にしがみつかなければなりません。それが反感につながっています。不仲で別れたいけれど、別れたら安定した生活が送れないから仕方なく一緒にいる夫婦関係に似ています」

仕事でフラストレーションを感じることは誰にでもあるけれど、リセンティーズムの場合は、そのフラストレーションが解消されることなく永遠に続く。従業員が反感を抱く理由には、仕事が安定していない、成長の機会がない、給料が低い、福利厚生が充実していない、などがある。

テイラーと同じく『RotaCloud』も、リセンティーズムの始まりは、パンデミックで大勢の人が一斉に離職したことにあると見ている。私たちにとって仕事は「忙しすぎて」という言い訳が通用するほど生活の中心、そしてアイデンティティの一部になっていた。でも、パンデミックによって私たちは、自分の働き方だけでなく生き方にも疑問を感じるようになった。「私は自分の人生を会社のデスクで過ごしたかったのか、自然の中で過ごしたかったのか?」「高収入の仕事を選ぶべきなのか、好きな仕事を選ぶべきなのか?」、そして何より「好きなことで収入を得ることは可能なのか?」と。

多くの人がキャリアチェンジをした一方で、その場に残った人たちは人手不足による仕事量の増加で心身ともに疲れている。でも、長引く景気の後退で生活費は上がる一方。だから、いまの仕事に不満があっても、怖くて転職に踏み切れない。

2023年の職場には、このリセンティーズムが溢れている。でも、このトレンドに乗りたくて乗った人は1人もいない。いまの仕事や労働条件に不満や反感を抱いているなら、テイラーのアドバイスに従って、少しでも気持ちを楽にしてほしい。オーストラリア版ウィメンズヘルスから詳しく見ていこう。

ブルック・テイラー直伝:職場におけるリセンティーズムを乗り越えるためのコツ

不満や反感といった負の感情を和らげるには?

まず、不満や反感の原因を自分の中に探してみよう。自分が声にしていない期待やニーズ、フィードバックには、どのようなものがある? コーチやセラピストと一緒に向き合わなければならないトリガーや感情は?

次に、いまの仕事に満足できない“明確”な要因を特定する。

そして、あなたは閉じ込められているわけでもなく、選択肢がないわけでもないことを思い出す。あなたが望めば、士気の低い同僚に声をかけたり、成長の機会を積極的に求めたり、いまの気持ちを上司に伝えたりすることも可能。

最後に、思考は現実になる。感謝を習慣にして、その仕事から得られる教訓、安定した生活、成長の機会に意識を向けよう。そうすれば、意欲が増して不安が減り、物事を前向きに考えられるようになる。

従業員の立場で、上司や雇用主とリセンティーズムに関する建設的な議論をするには?

いま以上に不満や反感を増幅させるのは、バーンアウト、完全離脱、大きなミス、うつ病につながるので何としてでも避けたいところ。自分なりの解決策とアイディアを用意した上で、満たされていない自分のニーズ、期待と現実のズレ、いまの課題を上司に伝えてみよう。「この会社や仕事から私が学ぶべきことは、もっともっとあるはずです。だからこそ、一緒に解決策を見つけていきたい」という風に協調的な言い方をすれば、その問題が他人事ではなく自分事になるので好印象。

上司や雇用主の立場で、リセンティーズムに対処するには?

リセンティーズムは感染力を持っているので、企業全体が意欲の欠如や集団離脱に見舞われて、ビジネスに多額の損失を与えることも。マネージャーやリーダーは興味と思いやりを持って、担当部署や企業全体の声を聞くべき。マネージャーは従業員1人ひとりと話し合いの場を設け、このような報告が上がった理由を理解して、その理由と企業のビジョンと紐づける術を探るといい。組織レベルでは、リーダーがハイレベルのビジョンを語り、従業員に働く意義と目的を思い出させる。従業員が組織や社会に及ぼす目に見える影響を言葉にすれば、その仕事に意味があることも伝わりやすい。

最後のアドバイス

リセンティーズムは、不当な扱いを受けている、過小評価されている、閉じ込められているという複数の感情が組み合わさって起こる現象。自分の不幸を仕事や会社のせいにするのは確かに簡単。でも、不満や反感の種は多くの場合、自分の中でキャリアの方向性や目的が決まっていないことにあるので、自分がどのようなキャリアを築きたいのか、何にやりがいを感じるのかを広い視野で考えて、理解することが大切。自分のビジョンが明確になった途端、リセンティーズムが生み出す思考の罠から自分の力で抜け出そうと思えることも少なくない。

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Jessica Campbell Translation: Ai Igamoto

元記事で読む
の記事をもっとみる