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いま佐賀がおもしろい! 目と舌 (と脳) がよろこぶ美食の祭典「サガマリアージュ」

  • 2023.3.9

人間国宝などの器で美食を食べる――。佐賀県でおこなわれた、期間限定のプレミアムレストランの様子をお伝えします。

人間国宝の器で食べる!?

佐賀県と言えば、焼物の里です。「伊万里焼」「有田焼」「唐津焼」などはみなさんもご存知かもしれません。いずれも豊臣秀吉の時代から佐賀県で作られてきた陶磁器です。

「すばらしい器なんだろうなぁ、でも自分との接点はないだろうな」なんて思っていたところ、驚きのイベントを知ります。その名も、「美術館(MUSEUM)に飾るような人間国宝などの器を使って(USE)、佐賀の美食を楽しむ、期間限定のプレミアムレストラン“USEUM SAGA(ユージアム サガ)”」。こんな機会はめったにない! とよろこび勇んで参加することにしました。

入り口からすでにワクワクの体験が始まっています。
食材もメンバーもプレミアム過ぎ!

プレミアムなのは器だけはありません。料理は日本のトップシェフによるコラボレーションで提供されます。今回の料理は、ミシュランも獲得した地元佐賀のレストラン「Kaji synergy restaurant」の梶原大輔シェフと、岩手県遠野市で予約のとれない人気店「とおの屋 要」を営む佐々木要太郎シェフが担当します。

互いへのリスペクトから、今回のコラボレーションが実現。 左が梶原シェフ、右が佐々木シェフ

ふだんから地域らしさをお皿の上に表現しているという点では近い、そして九州と東北という距離としては遠い2人が、いったいどのような料理を生み出すのか、興味しんしんです。

おいしい! けれどこれはなに?

いよいよ料理が並び始めます。最初の一皿目は、「ニシユタカ/武雄イノシシのジャーキーとコンソメ」。真っ白な皿の上に、乾燥させた肉とボール状のものとコンソメスープ。

1皿目 ニシユタカ/武雄イノシシのジャーキーとコンソメ 李荘窯業所

ボール状のものは、口に含んでビックリのとても複雑で芳醇な味わい。これはニシユタカという品種のジャガイモに大根・人参・ごぼうの味噌漬けで風味付けをした一品で、発酵を得意とする佐々木シェフがふだんは「芋サラ」という名前で提供しているシグネチャーだそう。それに添えられるジャーキーは、梶原シェフが地元で獲れたイノシシを燻したもの。隅々までイノシシを使い尽くすべく、その骨を使ってコンソメスープを引いてあります。野性味と滋味が、奥からどんどん湧いてきます。

今回の趣向のカケラが見えてきました。皿の上にまるで謎掛けのように料理が並び、わたしたちはそれを、耳から得たヒントを頼りに、目と、舌と、頭を使って縦横無尽に探索するというもののようです。これは楽しい!

五感を使った大冒険

全11皿の中から、特に印象に残ったお皿をピックアップしてご紹介します。ちなみに今回は東京からやってきたソムリエの大越基裕さんが、すべての料理にアルコールとノンアルコールをペアリングさせていて、料理とのマリアージュも楽しめます。口が忙しい! けどうれしい!

3皿目 唐津産真鯵/多久野生高菜 文祥窯

フレッシュな鯵のタルタルに、野生の高菜を焦げる寸前まで焼いて合わせた一皿。苦味と旨味が合わさって、大人な風味。そこに合わせるアルコールは、米全部を使い切りたいと、佐々木シェフが醸造している米ぬかの酒。米ぬかまで一緒に発酵させることで、日本酒にはない酸味が加わり、さらに料理に奥行きを与えています。

8皿目 武雄イノシシ/蕪の葉/仏手柑 弓野窯

この青い皿は、まさに今回のイベントを知るきっかけともなった、人間国宝である弓野窯・中島宏さんの作品。「中島ブルー」として多くの人を魅了する青磁に、イノシシの茶色が映えて、コントラストが美しい一皿です。

同じテーブルの器に詳しい方から、「中島さんのお皿で食事ができるなんて、ありえませんよ!」と教えてもらい、その一生に一度かもしれないよろこびを堪能。もちろん緊張もしましたが、お皿そのものからは柔和な優しさを感じました。シェフが丹精込めた料理を盛られて、お皿もなんだかうれしそう。

イノシシの上には、仏手柑という柑橘を刻んだものが添えられています。岩手からやってきた佐々木シェフが、佐賀の柑橘類の豊富さに驚き、これを酸味として使いたい! という思いから生まれたアイデアだそう。まるでハーブのようで、オリエンタルな風味を加えています。

辺境はいま最前線かもしれない

こうして、美食と旨い酒と端正な器と戯れた3時間あまり。一皿ごとに味わい、考え、尋ねてをくりかえして、おなかも頭もいっぱい! そして、このイベントの中に、いろいろなアイデアの種が隠れているような気がしてきました。

例えば、土地の特性に気づくこと。岩手からやってきた佐々木シェフは、「佐賀にやってきて、冬なのに食材が溢れていることに驚いた」と話し、見つけたものの一つである柑橘を、酸味として自分の料理に取り込みました。一方で梶原シェフは「ふだん新鮮な食材に恵まれているからこそ、佐々木シェフが本来保存のためだった発酵を、自身の料理の最大の特徴にしているところがすごい」と、その力を借りていました。

距離があるからこそ、互いの土地のいいところが見つかったのかもしれません。

また、足元の歴史を見直すこと。おいしい食材は他の地域でも見つかるかもしれませんが、豊かな陶磁器の文化はここ佐賀にしかない代えがたいものです。そこに敬意を払うことで「自分たちらしさ」を形作っているのだと感じました。

お客さんの顔から、どれだけエキサイティングな試みだったかが伝わります。

同時に、世界のトレンドにも敏感であること。2人のシェフは、食材に対してこれまでの単なる「贅沢」とは異なるスタンスをとっていました。生産者にこだわって作ってもらったものと一緒に庭で偶然見つけたものを使ったり、廃棄されるはずの骨やアラからぎゅぎゅっと旨味を引き出したり。軽やかさと同時に哲学を感じて、その場に参加していることがうれしくなるようなイベントでした。

こんなにおもしろいことが、いま佐賀では起きています。そして「USEUM SAGA」はまだまだ続きます。ぜひ次のチャンスには、五感をしっかり鍛えて、みなさんも参加してみてください。

USEUM SAGA

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