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『みみたぶちゃん』【親子の読み聞かせに。今日の絵本だより 第354回】

  • 2023.3.28

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子の読み聞かせにこんな絵本はいかがですか。

『みみたぶちゃん』
山田花菜/作 WAVE出版 1540円

3月3日はひなまつりですが、3(み)と3(み)で「耳の日」でもあります。
耳の日にぜひご紹介したい絵本がこちら、『みみたぶちゃん』です。

のんちゃんには、好きなものがいっぱいあります。
お気に入りのぬいぐるみに、おままごと、それからアイスクリーム。
でも、何より一番好きなのは、ママのみみたぶ。
ちょぴりひんやりしていて、すごく柔らかくて、とっても気持ちいいんです。
だからのんちゃんは、いつもママのみみたぶを、むにむに。
お絵描きしているときも、だっこのときも、お昼寝のときも、
「ママ、おみみ おみみ」。
ママはいつも優しく
「はい、どうぞ」。
そうして、のんちゃんはむにむに、むにむに。
お風呂あがりも、ママの膝枕でごろんとしながら、むにむに、むにむに、むにむに、むにむに……。
すると、
「いたたたたた……」
「あ!」
ママのみみたぶから、血が出てしまいました。
さあ大変、のんちゃんは大急ぎで救急箱を持ってきます。
「のんちゃんが なおしてあげるからね。
いたいの いたいの とんでけ~」
のんちゃんは、ママのおみみにばんそうこうを貼ってあげました。
のんちゃんが片時も離れられないママのみみたぶ、すぐに治るかな?

のんちゃんのように、たとえば指しゃぶり、お気に入りのタオルに、毛布やタグ、お子さんがどうしても手放せないものってありますよね。
かわいいけれど大人はちょっと困っちゃう、そんなクセをこのお話は最初から最後まで、子ども目線から描いています。
ばんそうこうを貼ったそばから「ママ、なおった?」と聞いて、何度聞いても「まだ」の返事に、真っ赤な顔で怒って泣き出すのんちゃん。
それに対してのママの受け止めと寄り添いが、素晴らしいんですよねえ……。
「困ったクセがこんな風に治りました」なんていう展開ではなくて、最後までひたすらのんちゃんはママのみみたぶが大好きというお話なのですが、同じようなクセのあるお子さんのおうちは、きっと「うんうん!」「あるある!」となるでしょう。
絵本を開いて、「のんちゃんも〇〇ちゃんと同じだね」と、親子で一緒にくすぐったい思いを分かち合う。
解決方法ばかり模索するよりも、子どもの今の姿を否定せずにありのままに受け止めること、それも大切だったのかなと、子どものクセにやきもきしていたOBとしては思います。
(もちろん、あの保護者としての困った感も、忘れていませんよ……!)

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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