【いまさら聞けない法令用語】「違法」「不法」「非合法」「脱法」はどう違うの？弁護士が解説

事件・事故に関する報道をはじめ、日常生活上でもよく耳にする法令関連用語の一つに「違法」があります。また、よく似た用語として「不法」や「非合法」、さらには「脱法」という言葉が使われることもあります。「法律に反する」という点では共通しているように見える4つですが、それぞれどんな意味と違いがあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

脱法は「法の網をすり抜ける行為」

Q.まず、「違法」という言葉の意味について教えてください。

佐藤さん「『違法』とは、法にそむくことです。同じ『違法』という言葉であっても、法的には、刑事上の『違法』と民事上の『違法』は区別して使われています。

『◯◯をすれば、××の刑に処する』と書かれている法律（刑事法）に違反すれば、それは何か特別な事情がない限り、違法です。特別な事情というのは、例えば、『正当防衛』が成立するようなケースです。『Xさんが、ナイフでYさんを刺し殺そうとしてきたので、Yさんが自分の身を守るために襲いかかってきたXさんを突くように押したら、Xさんが転倒し、頭を打って死んでしまった』というような場合です。Yさんは、Xさんを突き倒して死なせていますが、それは自分の身を守るために必要最小限の反撃を加えたものなので、違法性がなくなります。こういった例外的なケースでない限り、刑事法に違反すれば違法です。

一方、民事法の場合、全て、法に定められた通りにしなければならないものではなく、原則、市民同士の自由に委ねられています。そのため、『任意規定』（当事者の意思で変更することが認められている規定）に反したとしても違法にはならず、『強行規定』（当事者の意思で変更することが許されない規定）に違反した場合に違法となります。

故意に、または不注意で他人の権利を侵害し、損害を与えたようなケースでも、民事上の違法性が認められることがあります。例えば、保護者が住宅地の道路で幼児を遊ばせており、遊び声に苦しんでいた近隣住民が、『子どもの遊び声（騒音）によって損害を被った』として裁判を起こした場合、裁判所は、子どもの声の大きさや時間帯、場所の特徴といったさまざまなことを踏まえ、子どもの遊び声が、常識的に考えて我慢すべきレベルであるかどうかを判断します。仮に、我慢すべきレベルを超えていると判断されれば違法となり、保護者側は不法行為責任を負い、損害賠償金を支払うことになったり、違法な遊ばせ方をやめなければならなくなったりします」

Q.次に、「不法」という言葉の意味について教えてください。

佐藤さん「『不法』は、先述した『違法』とほぼ同じ意味を持つ言葉です。ただし、辞書の中には『法にそむくこと』以外に、『道徳（人の道）に外れること』を含むものもあり、一般的には、法に違反することの他、反社会的な行為も含めて使われることがあります」

Q.次に、「非合法」という言葉の意味とは。

佐藤さん「『非合法』についても、『違法』や『不法』とほぼ同じ意味です。辞書の中には、『法に違反すること』だけでなく、『法に違反して秘密に行うこと』を含めているものもあります。『非合法な手段』『非合法な政治活動』といった具合に、“こっそりと”というニュアンスを含めた使い方がされることが多いように思います」

Q.最後に、「脱法」という言葉の意味について教えてください。

佐藤さん「『脱法』とは、法に触れない方法で、法が禁止していることを行うことです。つまり、巧みに法の網をすり抜ける行為を指します。

例えば、『脱法ドラッグ』という言葉が有名です。脱法ドラッグとは、法律で明確に定義されていないものの、法律で禁じられている薬物と類似した化学物質が含まれており、摂取すると興奮したり、陶酔したりするなどとして販売されている薬物です。

罪刑法定主義（どのような行為が犯罪になるのか、どのくらいの刑罰を受けるのかは、必ず法律に定めなければならない原則）により、禁止する薬物についても一つ一つ、法律で指定する必要があるのですが、指定が追いつかず、新しい脱法ドラッグが生まれては規制する、規制してはまた新しい脱法ドラッグが生まれる…という、いたちごっこのような状況があります。

脱法ドラッグは『合法ドラッグ』などとして販売されていることがありますが、その実態は違法薬物と同じ非常に危険なものであり、法規制も強化されています。言葉にだまされず、決して手を出さないようにしましょう」

Q.つまり、「違法」「不法」「非合法」「脱法」の違いとは何でしょうか。

佐藤さん「『違法』『不法』『非合法』は多少のニュアンスの違いはあれ、いずれも、法にそむくことを意味します。『脱法』は、法の網をすり抜けることによって、実質的に法が禁止していることを行うことです」

オトナンサー編集部