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3月の手紙やメールで使いたい「季節の美しい日本語」

  • 2023.3.1

3月は日ごとに春めいてくる時季。日本には、その季節に合った美しいことばがたくさんあるので、手紙やメールに季節を感じることばを使うと、心が和みやさしい気持ちになれるでしょう。そこで、各月に使いたいことばを3つずつ、和文化研究家の三浦康子がご紹介します。3月は「朧」「お福分け」「花便り」です。

3月の美しい日本語~朧(おぼろ)

「朧」とはかすかではっきりしないという意味で、特に、春になると空気中のちりや水分が増して遠くの景色がかすむので、春の夜の情感を表すときに使われます。

「朧夜」といえば春の夜をさし、ほのかにかすんで見える春の月を「朧月」「月朧」、朧月の出ている夜を「朧月夜」といいます。

そのほかにも、朧夜に草原がかすんで見える光景をいう「草朧」、庭や海の場合は「庭朧」「海朧」、灯がおぼろげに見える様子は「灯朧(ひおぼろ)」などがあり、いずれも春の季語です。

また、同じ現象でも、夜が明けると「朧」と言わずに「霞(かすみ)」といいます。「春霞」のみならず、「朝霞」や「夕霞」、「薄霞」や「遠霞」など、時間帯や状態によって形容するのが日本語の風情あるところです。

<例文>

  • 朧夜にそぞろ歩きをするのも乙なものです。
  • ふと見上げたら朧月が浮かんでいました。
  • 朧月夜のやさしい光に包まれて、よい夢が見られますように。

3月の美しい日本語~お福分け(おふくわけ)

「お福分け」とは、人からもらったものを他の人に分けてあげることをいいます。

似た言葉に「お裾分け」がありますが、少しニュアンスが違います。「お裾分け」の裾は衣服の下端の部分なので、品物の一部を下位の者に分配することを「裾分け」と言うようになり、上下関係を問わず他の人に一部を分け与えることを「お裾分け」と言うようになりました。その語源から、目上の方に対しては使いにくい言葉です。

一方の「お福分け」は、おめでたい物をもらったり良いことがあった際に、その福を他の人にも分け与えたことに由来します。「お裾分け」と意味は同じですが、福を分けるというめでたさから、目上の方にも失礼にならずに使えます。

「お福分け」は、目上の方はもちろんのこと、友達にもおいしいものを分けてあげたい、福を分けてあげたいときに使うと、その気持ちまで伝わります。

<例>

  • 実家から名産の葡萄が届きました。少しですがお福分けいたしますので召し上がってください。
  • めったに手に入らない和菓子をいただいたので、お福分けです。
  • お福分けをありがとうございます。

3月の美しい日本語~花便り(はなだより)

「花便り」とは、花の開花や見ごろを知らせる便りのことで、「花信(かしん)」「花音(かいん)」ともいいます。「信」も「音」も便りを表す漢字です。

一般的に「花便り」の「花」は桜の花をさします。日本中が桜の開花に注目する時期には、ニュースでも日本各地の花便りが紹介されますよね。おなじみの「桜前線」は、日本各地の桜の開花日を線で結ぶと天気図の前線のようになることに由来します。

例年1月中に沖縄・奄美地方で緋寒桜が開花し、3月後半に西日本と東日本の太平洋側で染井吉野が開花して、4月上旬には日本海側も咲きだします。その後、桜前線は北上していき、4月下旬には東北地方北部でも開花。5月に入ると北海道でも染井吉野や蝦夷山桜、千島桜などが開花し、5月下旬に北海道東部でも開花して、桜前線も終わりとなります。

<例>

  • 花便りが届くと心が浮きたちます。
  • 先ほど桜の初花を見つけました。真っ先にあなたに花便りを届けたくてメールしました。
  • 桜前線が北上し、今日は福島から花便りが届きました。

年度末で慌ただしくなりますが、この時季ならではの情景に心癒されます。これからも「季節の美しい日本語」を日々の暮らしに役立てていってください。

[All Photos by shutterstock.com]

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