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もはや日本の“国民的スター”!コナン・グレイが示した洋楽の明るい未来【ライブレポ】

  • 2023.2.28

コナン・グレイが初となるジャパン・ツアーを開催。コナンの“国民的スター”としてのポテンシャルをこれでもかと感じることとなった、2月16日にパシフィコ横浜・国立大ホールで開催された横浜公演をレポート。(フロントロウ編集部)

コナン・グレイが初のジャパン・ツアーを開催

コナン・グレイの初となるジャパン・ツアーがついに実現した。ジャパン・ツアーの直前には、幼少期を過ごした広島県三次市の観光大使に就任したことも話題になったが、アイルランド人の父親と日本人の母親との間に生まれたコナンは、2023年のワールドツアーを2月14日に大阪公演からスタートさせた。

画像: コナン・グレイが初のジャパン・ツアーを開催

今年のツアーの出発地として日本を選んだという事実からも、いかにコナンが日本というルーツに愛を持っているかが伝わってきたが、それはコナンに対する日本のファンの愛情も同じ。2月16日に行なわれた横浜公演を取材するためにフロントロウ編集部が会場であるパシフィコ横浜を訪れると、『スーパーエイク』のアートワークに描かれているバラを表現するために、何かしらの赤いアイテムを身につけたファンをたくさん見かけた。今回のツアーで初めて公演という形で日本のステージに立ったコナンだが、約5,000人を収容するコナンのパシフィコ横浜・国立大ホールをいっぱいにしていたこともそうだし、コナンの世界観に心から共感するファンベースが、ここ日本にも既にしっかりと根付いているということが伝わってきた。

定刻の19時を10分ほど過ぎた頃、ステージのバックに映し出されていたバラのイメージが燃えてなくなり、「Disaster」のイントロが流れると、大歓声と共にコナンが横浜のオーディエンスの前に登場した。

自己紹介では『名探偵コナン』のセリフを引用

コナンのこの日の衣装は、黒のスキニーパンツに、ゴールドのスパンコールがついた煌びやかな黒のベスト。キラキラした衣装をチョイスしたのが、ジェンダーレスなファッションを好むコナンらしかった。途中、観客にマイクを向ける場面もあったのだが、1曲目から会場はシンガロングの大合唱に包まれることとなった。

画像: 自己紹介では『名探偵コナン』のセリフを引用

「Disaster」を終えて、間髪入れずに披露した「Telepath」では、観客に投げキッスをする余裕も見せたコナン。ステージの上で飛び跳ねながらこの日の2曲目を歌い終えると、ここで、「横浜!こんにちは。僕の名前はコナンです」と観客に挨拶。日本語で「真実はいつも1つ」と続けて、自身の名前の由来でもある『名探偵コナン』のセリフを引用するという、来日公演ならではのMCも飛び出した。

「『スーパーエイク』ツアーの2日目の今夜、みんなと一緒にいられて嬉しいよ」と観客を改めて歓迎したコナンは、続けてファーストアルバム『Kid Krow(キッド・クロウ)』より「Fight or Flight」をパフォーマンス。コロナ下にブレイクした新人アーティストの例に漏れず、コナンもなかなか来日公演が実現しなかった1人だが、待ち望まれていた初来日公演が今回こうして実現したことで、ようやく、デビューアルバムからの楽曲も日本のファンに直接届けられた。当然、この楽曲もシンガロングに迎えられた後で、『スーパーエイク』より「The Exit」を挟んだ後で、パフォーマンス中に客席で絶叫があがることとなった、『キッド・クロウ』の名曲「Wish You Were Sober」へと続いた。

そもそも日本では言語の壁もある洋楽だが、パンデミック中に懸念されたのは、直接ライブを観る機会が制限されることで、日本のファンと洋楽アーティストとの間に必然的に距離が空いてしまうのではないかという不安。でも、コナンの横浜公演を観ていて感じたのは、洋楽アーティストとの間に物理的以外の距離はなく、そんな心配は無用だったということ。そして、むしろ本場のアメリカよりも、ファンとコナンの距離は日本のほうが近いかもしれないということ。当然のようにシンガロングに迎えられることとなった、ギターを手に披露された「Astronomy」の後でコナンが語った言葉を聞いて、その思いは確信へと変わった。

「ありがとう。みんな、素晴らしいシンガーだね。すごく素敵に、一緒に歌ってくれる。アメリカではこうはならないよ」

曲紹介だけで歓声があがる!コナンのシンガーソングライターとしての強み

ここで、「横浜のみんなに質問があるんだ。今夜ここに(日本語で)“お友だち”と一緒に来た人は?」「その“お友だち”にハグしてあげて!」と語りかけたコナンが、「今夜ここにお友だちと来ていない人は、自分がベストフレンドになってあげる」と優しさをみせた後で披露したのは、『スーパーエイク』より文字通りの「Best Friend」。パフォーマンス中には、「ベストフレンド」という歌詞のところで腕をあげてみせたり、2階席や3階席のほうにも手を振ってみせたりするなど、オーディエンス全員との友情を祝福しているかのようだった。

画像1: 曲紹介だけで歓声があがる!コナンのシンガーソングライターとしての強み

そして、続けてパフォーマンスされたのは、恋愛未経験であることを公にしているコナンを象徴する楽曲の1つとも言える、「いつか僕も何の前触れもなく恋に落ちるだろう/でも今はこうして人間観察しているだけ」と歌う「People Watching」。この楽曲に続いた、こちらも実体験を基にした「The Story」もそうだが、リスナーが共感できる切ない歌詞を、美しいポップソングへと昇華できるのが、“サッド・プリンス”の異名をとるシンガーソングライターとしてのコナンのすごいところ。

バンド紹介を経て「Footnote」が披露される前には、「次の曲は、密かに親友のことを好きになってしまったことについての曲だよ」という曲紹介がされたのだが、その時点でファンはどの曲のことか分かったようで、ここで歓声があがる。いかにコナンの楽曲がファンの共感を呼んでいて、ファンがいかに歌詞を聴き込んでいるかを証明していた光景だった。

画像2: 曲紹介だけで歓声があがる!コナンのシンガーソングライターとしての強み

ここまで10曲を披露してきたコナンだが、楽しそうにファンと交流しながら、全力でパフォーマンスしてきたコナンの勢いは決して落ちることがない。『スーパーエイク』のオープニングトラック「Movies」を披露したコナンはここでまたアクセルを踏んで、シングル「Overdrive」を皮切りに、「Checkmate」から「Jigsaw」と、立て続けに3曲を披露。力強いアンセムたちを矢継ぎ早に歌い上げたこのセクションは、この日のハイライトの1つだった。

「Maniac」では1曲丸ごとシンガロングが生まれることに

アンセム3連発の後で披露された「Family Line」は、家族への複雑な思いを綴った1曲。母親の母国である日本でのパフォーマンスということで、いつも以上に特別な意味を持つこの曲をパフォーマンスするにあたって、「この曲は『スーパーエイク』のなかでもお気に入り」と紹介した上で、「辛い幼少期を過ごしたんだ」とコナン。「こうして横浜に集まってくれたみんなが、過去は自分を定義しないんだということを証明してくれた」と噛み締めるように語ると、観客に次のように呼びかけた。

「この曲はみんなへのリマインダーとして書いたんだ。出身地も、過去に起きたことも、どれだけ傷ついたかも関係ない。君はなりたい自分になれるんだ。いいかい? みんな約束してくれる? 過去は君を定義しないし、家族だって君を定義しないよ」

「Family Line」は最後は観客との大合唱でフィナーレを迎えることとなり、会場には美しいサウンドスケープが広がった。

画像: 「Maniac」では1曲丸ごとシンガロングが生まれることに

ショーはここからクライマックスへ。「高校で出会った女の子についての曲だよ」という曲紹介の段階でこれまた観客が大きく沸いた、歌詞がTikTokを中心にZ世代の共感を呼んでコナンの初期を代表するヒット曲となった「Heather」では、歌詞を大切にするコナンらしく、スクリーンに歌詞が映し出され、もちろんこの曲でも大合唱が生まれた。

「今夜は横浜のみんなと楽しい時間を過ごせたよ。悪くなかったね」とジョークを飛ばして、「残念なお知らせがある。これが最後の曲なんだ」とお知らせしたコナン。「悲しくない? 自分も同じ気持ちだよ。これがステージに立つ最後だから、みんな全力を出してほしい!」と伝えた後で本編の最後に披露したのは、『キッド・クロウ』からのポップアンセム「Maniac」だった。

オーディエンスもコナンからのリクエストに応えて、最初の歌詞から大合唱が生まれることに。この曲では、ほとんど全編を通してシンガロングが起きていたのが印象的だった。

最後はオーディエンス全員でコナンにサプライズ!

そして、最高の瞬間は、本編を終えてコナンが一度ステージからはけた後に訪れた。実はこの日、開演に先立ってファンが、赤いマスキングテープが貼られた「サプライズ企画」と書かれたメモを観客全員に配っていたのだが、そこには、「裏面に貼ってあるマスキングテープをスマホのライト部分に貼り、『Memories』が流れたらライトをつけて会場を照らしてください。会場を真っ赤に染めて最高のMemoriesを作りましょう」と書かれていた。

そして、いよいよアンコールで「Memories」が披露されることとなり、会場全員が赤いライトでステージを照らしながら、コナンが帰ってくるのを待っていた。

バンドに続いてステージに帰ってきたコナン。すぐに歌い出そうとしていたコナンだったが、観客が一斉にスマホを取り出してステージを照らしていた光景を目の当たりにして、思わず歌いながら照れて嬉しそうに笑っていた。「かわいい!」「ありがとう」と、ファンからの粋な計らいに日本語で応えたコナン。この日の最後の楽曲としてパフォーマンスされた「Memories」も、もちろん大音量のシンガロングと共に締め括られた。

画像: 最後はオーディエンス全員でコナンにサプライズ!

初のジャパン・ツアーながら、横浜に約5000人の観客を集めてみせたコナンの人気ぶりもすごかったが、驚くべきは、今回が初の来日公演となったにもかかわらず、ファンがコナンのライブにおける勝手を知り尽くしていたということ。ファンはコナンが書く等身大の歌詞に心から共感していて、そのレベルは、コナンがいかなる楽曲のいかなるパートで客席にマイクを向けても、当然のように大合唱が起きたほどだ。ましてや「Maniac」や「Memories」のパフォーマンスでは、ほとんど1曲を通してシンガロングが起きていた。

途中、コナンがここ日本を「ホーム・カントリー」と呼ぶ場面もあったのだが、ライブを通じてずっと起きていたシンガロングを「アメリカではこうはならない」と語っていたように、コナンとファンが一心同体となってステージを作り上げていくその様子は、まさに日本の国民的スターのライブを観ているかのようだった。

初めてのジャパン・ツアーからこれほどの観客を集めたコナンだったが、次の来日公演はきっと、もっと大きな会場をいっぱいにできるだろうし、そこではさらに大きなシンガロングを聴けるはず。日本のファンを心から共感させ、熱狂させていたコナンのライブは、日本における今後の洋楽シーンの明るい輝かしい未来すら感じさせるものだった。(フロントロウ編集部)

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