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「ジョン スメドレー京都店」で陶芸家・岩崎龍二展開催。釉薬の色の海を泳ぐ

  • 2023.2.24
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2023年2月23日(木)から3月13日(月)まで、「ジョン スメドレー京都店」で陶芸家・岩崎龍二の作品展が開かれる。ニットウェアとうつわのコラボレーションを楽しみたい。

はっとするような青が揺らめいている。岩崎龍二のうつわがまとうのは、豊かな色彩の世界だ。カラーパレットにはひとつひとつ名前がついていて、そんなところは〈ジョン スメドレー〉のニットと同じ。

国を超えて伝統的な手工芸に共感を示すニットブランド〈ジョン スメドレー〉。京都の店舗での定番となった展覧会で、今回は陶芸家の岩崎龍二を迎える。

伝統工芸界の重鎮に師事し、登り窯などの各種焼成技術をマスター。ろくろの上で自在に形をつくる土の世界にのめり込んでいったという作家だ。しっかりとした技が作るフォルムは、「洗練」の一言。無駄を削ぎ落としたオーソドックスなかたちだからこそ、釉薬による色の小宇宙が映える。

釉薬は、配合はもちろん吹きかけ方や焼成温度、冷まし具合などさまざまな要因で色の出方を変える。無限に広がる色彩のなか、岩崎は独自手法によって狙いの色を生み出していく。半磁器土を成形した素地に、まずはチタン入りの白い釉薬をかける。そこにさらに色を出す釉薬をスプレーガンで吹き付ける、というものだ。これによって、焼き上がったあとの色の濃淡が強調されるのだそう。

焼成後、表面の釉薬はゆっくりと垂れ落ち、固まり、ガラス質のきらきらとした輝きを帯びる。宝石を溶かして土にかけたような、魅惑的な色合いだ。もっとも、宝石も地質やさまざまな化学変化の偶然によって驚きの色を出すものだ。偶然という魔法を使うところは、釉薬とそもそも似ているのかもしれない。

「椿」と名付けられた色は、椿の木の灰を用いてつくられた。儚げなピンクに、ブルーグレーがそっと寄り添う。研究に研究を重ねてたどり着いたグラデーション。

暖色系では、椿のほか、赤みが強い「煌赫」というオリジナルカラーも。

海の中にいるような、青と碧の重なりが魅力。「アイスグリーン+」「ブルーグレー+」という名の釉薬が掛け合わされている。

岩崎の作品が美しいのは、技術によって自然の偶然性にぎりぎりまで肉薄しているからだろう。大地が生み出す素材に、人の手によって初めて生まれる形、そしてそこに合わさる色合いの妙。たとえば、窯に入れる前に土の表面をスポンジでなぞり、釉薬が流れるリズムを意図的に作る。結果、皿いっぱいに広がった色は、ところどころに濃淡と質感の差を生み出し、その不規則性が美につながる。オリジナル技法の「環流し」もそうだ。素地にわざとつけられた輪型の溝に釉薬が溜まり、流れて、うつわ表面を彩る。

けれど、そんな芸術性とは裏腹に、うつわはあくまでうつわであるというスタンスが見えるのも岩崎らしい。「使えるアート」として、うつわは生活に入り込む。なんてことない毎日を飾り、食べ物を乗せ、洗われ、ときに欠け、いずれ土に還る。

大阪府富田林市に工房を構える。陶作工程でもっとも楽しみなのは「窯を開ける瞬間」だという。

今回の展覧会は、鎌倉市にあるギャラリー「うつわ祥見KAMAKURA」との協働により開催される。

世にも美しい色彩とユーティリティ哲学との絶妙なバランス。そしてそれを支えるのは伝統的な知識と技術。そんなところも〈ジョン スメドレー〉という老舗と共鳴するのだろう。展覧会「-岩崎龍二 FORM/COLOUR VOL.2-」では、生活を豊かに彩るうつわとニットウェアが競演する。

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