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あなたよりスタイルのある人は?栗野宏文、杉山恒太郎らの「センスのいい友」

  • 2023.2.23
〈ユナイテッドアローズ〉クリエイティブディレクション担当 上級顧問・栗野宏文、デザイナー・小野塚秋良、へアスタイリスト・ピーター・スミス、〈ポスト オーバーオールズ〉代表・大淵毅

栗野宏文(〈ユナイテッドアローズ〉クリエイティブディレクション担当 上級顧問)

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

服を着るポリシーが芽生えたのが中学生の頃。当時、ビートルズが初来日しました。はじめは同じ服を着た彼らが、音楽的な成長につれてそれぞれ個性を出した格好をしだして…。歌うことと同じく服を着ることも自己表現なんだ、と学びました。後にデヴィッド・ボウイ、セックス・ピストルズが出てきて、時代を作っていきましたが、皆、今も語り継がれていますよね。

後にクラシックとして残るアバンギャルドこそ本物だと思うんです。伝統を重んじつつ、革新を受け入れることの繰り返し。常に前衛的なものを自分の中に取り込む余白を持つことが僕のメソッドかな。最近はエチオピアジャズとか、辺境音楽にハマっていて、結果、トラッドな装いにアフリカンバティック柄を取り入れたり。おそらく時間が経てば、これも自分のスタンダードに変わると思います。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

河毛(俊作)さん。伝統を重んじる自身のスタイルがあります。

〈ユナイテッドアローズ〉クリエイティブディレクション担当 上級顧問・栗野宏文
マリの伝統柄をプリントしたジャケットを着用。
パンクバンド関連の写真集『PUNK. Colegrave&Sullivan』,『david bowie is inside』
栗野さんのバイブルは、70年代のパンクバンド関連の写真集。『PUNK.:Colegrave&Sullivan』『david bowie is inside』など。

profile

栗野宏文(〈ユナイテッドアローズ〉クリエイティブディレクション担当 上級顧問)

くりの・ひろふみ/1953年生まれ。〈ビームス〉退社後、89年に〈ユナイテッドアローズ〉の立ち上げに参画。

河毛俊作(フジテレビ 編成製作局 エグゼクティブディレクター)

Q

栗野宏文さんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

栗野さんのように洗練されたファッションの伝道師のような方から推薦されるなんて、光栄の至り。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

私たちアイビー世代って、ある程度決まった服とその着方をまず覚えますから、それをどう変化させていくかにスタイルが出ます。私の場合は、フランス映画に影響を受けて、銀幕のスターの着こなしをどこかトレースしていた気がします。イヴ・モンタン、フランソワ・ペリエとかね。ブルージーンズを穿いてもトップスはエルメスを合わせて、それで土臭さを消してしまったり…。

フレンチアイビーは着方が自由でいい化学変化が起きるんですよね。ただアラン・ドロンだけは美形すぎて参考にならないけど(笑)。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

何度もお会いしたことはないんですが、印象的だったのが杉山(恒太郎)さん。日本のマッドメンのような人でね。彼の詩集にある「未来は懐かしくて、過去はいつだって新しい」という詩からも、そのスタイルが表れているようで惹かれます。

フジテレビ 編成製作局 エグゼクティブディレクター・河毛俊作
好きなものに囲まれた自宅の書斎にて。
〈カルティエ〉の「タンク」
フランス映画の名シーンで何度も見かけたという〈カルティエ〉の「タンク」。小ぶりな70年代ものを中心にアンティークを3本所有。

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河毛俊作(フジテレビ 編成製作局 エグゼクティブディレクター)

かわけ・しゅんさく/1952年東京都生まれ。76年にフジテレビ入社。トレンディドラマの代表作である『抱きしめたい!』ではディレクターを務め、以後、数々のドラマを担当。2005年、『星になった少年』で映画監督を務める。

杉山恒太郎(〈ライトパブリシティ〉代表取締役社長)

Q

河毛俊作さんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

光栄の極みです。どうしていいかわからなくなっちゃうな(笑)。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

(松尾)芭蕉が晩年に唱えた俳句の境地を“軽(かろ)み”って言うんだけれど、そうありたいと思うんです。ことファッションにおいては身に着けているものが、高価なものよりは、ボロとか、多少ドレスダウンしている方が好み。

あとは着こなす人自身の魅力ですよね。所作や立ち居振る舞い、語るコトバや選ぶコトバ。その人の醸し出す雰囲気がすべてスタイルとして映ると思います。例えば、食べ方がキレイとか、そういう方が大切かと。映画監督・詩人、ジャン・コクトーの有名な言葉“軽さのエレガンス”を持った方が一番です。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

小野塚(秋良)くんしか思いつかない。ファッションデザイナーだけど、ボロいジーンズとTシャツでいられる人ってなかなかいないよね。そのさりげなさがスタイルになっているし、そこに“軽さのエレガンス”を感じます。

〈ライトパブリシティ〉代表取締役社長・杉山恒太郎
ソファに腰かけるなり、笑いを交えながら始まる、杉山さんの軽快なトーク。
『第三半球物語』イナガキタルホ/著作、『夏の手紙』北園克衛/著
詩集のコレクションから。品のある表現がされている『第三半球物語』『夏の手紙』。どちらも初版本。

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杉山恒太郎(〈ライトパブリシティ〉代表取締役社長)

すぎやま・こうたろう/1948年生まれ。電通の常務執行役員を経て、ライトパブリシティに移籍。その後、現職に就任。あまたの広告賞を受賞し、カンヌ国際広告祭審査委員を務めた経験を持つ、世界的なクリエイティブディレクター。

小野塚秋良(デザイナー)

Q

杉山恒太郎さんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

いやいや、僕の軽さは出来の悪さですよ(笑)。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

三宅一生さんのアシスタントでパリコレクションに行った時から感じていたんだけど、ラグジュアリーな服や場所は僕には合わないんだよ。まったく謙遜とかではなくね。だから名だたるブランドの綺麗なウィンドウディスプレイよりも、それを磨いている労働者の方がものすごく気になるし、美しく見えたわけ。汚れとかボロとかを気にしないで服を着る方が、リアリティがあるから。

頭で考えて服を着るということはないので、はっきりと「これが私のスタイルメソッド」とは言えないけど、無理なく見えるものを身に着けたいと思っています。スタイルが好みというわけではないけど、ヘミングウェイなんかはそのお手本になる人物ですね。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

色々な国に行ったけどイギリス人はかっこいい。生き方が型にはまらなくて粋な男って感じがするね。特に友人のピーター(・スミス)はそんなザ・イングリッシュマンで、本当に素敵なんだよ。

デザイナー・小野塚秋良
小野塚さんが手がける〈HAKUI〉オフィスにて。
〈大島椿〉の椿油と『お洒落名人ヘミングウェイの流儀』今村楯夫、山口淳/著
〈大島椿〉の椿油の潔いデザインは最高と語る。文庫本『お洒落名人ヘミングウェイの流儀』は、彼が共通するセンスを感じる品。

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小野塚秋良(デザイナー)

おのづか・あきら/1950年新潟県生まれ。74年、三宅デザイン事務所に入社。88年、〈ウィット〉を設立し、翌年〈ズッカ〉を発表。現在は第一線を退き、3ツ星シェフも愛用するワークウェアブランド〈HAKUI〉をデザイン。

ピーター・スミス(へアスタイリスト)

Q

小野塚秋良さんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

とにかく驚いたよ。でも光栄に思っている、ありがたいね。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

年を重ねて、スーツをよく着るようにはなったね。冒険したくないわけではないけど、似合う服の幅は狭くなっているから、今はスーツがいちばんしっくりくる。ちなみに撮影で着たのは息子がアシスタントを務める〈ランバン〉のスーツ。彼がプレゼントしてくれたんだ。自分では普段選ばない、という意味ではこれも挑戦だね(笑)。

ただこれを読んだ若い世代には、年を重ねる前に色々な格好に挑戦してほしい。それこそ70〜80年代の東京は、ロンドンともほかの都市とも、まったく違ったスタイルを持っていて、とても刺激的だったから!あの時のように、今でも周りにいる人たちに刺激をもらってそれを受け入れたいとも思っている。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

すべての観点において独特かつ誠実な視点で物事を見ている小林(節正)さん。純粋でスピリチュアルともいえる彼の生き方、そしてあの素晴らしい微笑みに惹かれて推薦します。

へアスタイリスト・ピーター・スミス
リビングには、ピーターさんが影響を受けたアーティストの写真集がズラリ。
へアスタイリスト・ピーター・スミスの両親の写真
中央はご両親、左は息子のタロさんの幼き頃。「身近な人がいつも僕のインスピレーション源です」

profile

ピーター・スミス(へアスタイリスト)

1947年イギリス生まれ。70年代、名だたるロックバンドのへアメイクを担当。またモデルとしても〈エルメス〉〈コム デ ギャルソン〉のショーに出演。現在は半隠居しながら、〈ポール・スミス〉などのショーの編曲を手がける。

小林節正(〈.....リサーチ〉代表)

Q

ピーター・スミスさんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

ありがとうございます。知的で、自分が憧れるトラッドを愛するピーターさんに言われるのは、本当に嬉しい。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

60年代生まれの僕にとっては青春期に突然アイビーというスタイルが目の前に現れました。キラキラとした僕のファッションの原風景です。着こなしにおいても、服作りにおいても、僕の場合は、そのアイビーという軸に、ほかのものをミックスさせて良いバランスを探っていく作業です。

今日と、明日でちょっとした変化を加えても、類型学的な微々たる差で、言わなきゃ気がつかないほどの違い。そのミクスチャーは、洋服に対してフラットな目線を持った日本人だからできる強みのようにも感じています。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

カスタムバイクのビルダーのような感覚でもの作りする、大淵(毅)さんが面白い。パターンを引くところから型紙の裁断まで、すべて自分でこなし人に触らせない。その1cm単位を突き詰める作業は古着の個体差までよく知る彼ならでは。本当に尊敬します。

〈.....リサーチ〉代表・小林節正
ショールームで愛用のベンチに座って。
〈マウンテンリサーチ〉のボタンダウンシャツ、〈ジェネラルリサーチ〉時代のクリケットキャップ
類型学的な小林さんの感性が表れた〈マウンテンリサーチ〉のボタンダウンシャツと、〈ジェネラルリサーチ〉時代のクリケットキャップ。

profile

小林節正(〈.....リサーチ〉代表)

こばやし・せつまさ/1961年東京都生まれ。アウトドア、そして「山の暮らし」を背景とする〈マウンテンリサーチ〉を軸に〈.....リサーチ〉としての活動を2007年より展開。

大淵毅(〈ポスト オーバーオールズ〉代表)

Q

小林節正さんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

小林さんにはカスタムバイクのビルダーとよく言われますが、自分ではよくわからないんですよね。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

ワークウェアばかりを着てきて、昔はよく野暮ったいとか言われたんですが、それが最近は今っぽいと言われて…。変わったのは時代なんでしょうね。だから周りのことは気にせず、自分の好みを突き通しています。ワードローブはストレートの5ポケットパンツ、カバーオールやベスト、Tシャツばかり。

気分や気候で、素材と色が変わる程度です。あとワークウェアって自由にその人の色を付けやすいアイテムだと思うんです。例えば大きめで着ても突拍子なく見えないですし、アイテムの組み合わせでモダンに見せられます。東洋人でも“冗談”に見えないのがいいんです。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

(小田木)邦匡は何を着ていたのか印象に残らない人なんです。ダサかったり、気取っていたら、気づくはず。きっと自分に合った服を着ているから。もしメソッドがあればぜひ聞いてみたい。

〈ポスト オーバーオールズ〉代表・大淵毅
2016年秋冬コレクション展示会のため帰国中の一コマ。
デニムやコットンのウェア
最近はネイビーに傾倒。デニムやコットンのウェアを重ねて取り入れることが、大淵さんにとっては新鮮なこと。

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大淵毅(〈ポスト オーバーオールズ〉代表)

おおふち・たけし/1962年東京都生まれ。92年に〈ポスト オーバーオールズ〉をスタート。アメリカのワークウェアと、ヴィンテージに対する深い造詣をベースにコレクションを展開する。ニューヨークと東京を行き来する日々。

小田木邦匡(〈WP lavori〉デザイナー)

Q

大淵毅さんからスタイルのある人と言われていますが…。

A

会うたび、刺激を受ける大先輩に推薦していただけて嬉しいです。

Q

あなたのスタイルメソッドは?

A

着ている洋服のブランドがわかってしまうと、そのイメージから勝手にスタイルを描かれてしまう、と思うんです。だから古着や老舗ブランドの特定されにくい洋服を選ぶことが増えました。ベーシックを追求するあまり、度が過ぎて、タグやシグネチャーを取ったり、切ったりしてしまうこともあります。

例えば〈ニューバランス〉のスニーカーの“N”や、〈リーバイス®〉のデニムのバックポケットのアーチステッチ…。そんな無意識でやっていたことが結果として大淵さんが感じた“印象に残らない”という自分のスタイルになっていたんだと、これを機に気がつきました。

Q

あなたよりスタイルのある人は?

A

短い期間ですが、7、8年前に〈ネペンテス ニューヨーク〉で働いていて、その頃から鈴木大器さんに憧れています。服のディテールや生地について深い知識があって、さらに新しいものにもアンテナを張っている。それが服装にもよく表れている方です。

〈WP lavori〉デザイナー・小田木邦匡
反物が積み上げられた、NYのアトリエにて。
〈コム デ ギャルソン〉のウォレット、〈セイコー〉のアンティーク時計
〈コム デ ギャルソン〉のウォレットや、父親から譲り受けたという〈セイコー〉のアンティーク時計など、10年来の愛用品。

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小田木邦匡(〈WP lavori〉デザイナー)

おだぎ・くにまさ/1979年静岡県生まれ。19歳で渡米。アパレルメーカー〈WP lavori〉入社。マーク・マクナイリーのアシスタントを経て、老舗ミリタリーブランド〈スピーワック〉〈スピーワック ゴールデンフリース〉をデザイン。

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