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「なぜこんな簡単なことができないの」パワハラ手前の厄介な嫌がらせをしてくる"ネチネチ上司"の異常な心理

  • 2023.2.20
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ささいなミスをあげつらう、昔の失敗を蒸し返す……。「指導」の名の下に部下をネチネチと責める上司には、どう対応すればいいのか。産業医で精神科医の井上智介さんは「最近、暴力や大声で罵倒するなどのわかりやすいパワハラに代わって、ネチネチ型のハラスメントが増えている。しかし、こうした上司の“ネチネチ責め”に正面から反論するのはお勧めしない」という――。

上司に非難される部下
※写真はイメージです
「ネチネチ型」のハラスメントが増えている

最近のハラスメントは、「ネチネチ型」が増えています。もちろん、殴ったり蹴ったり、大声で罵倒したりといったハラスメントもゼロではありませんが、そんなことをしたら自分の社会人人生が終わってしまうことをわかっている人も多いので、減ってきているように思います。一方で、「指導」という大義名分の下、ネチネチと部下を攻撃する上司が増えているのです。

たとえばネチネチ上司は、こんな言い方で部下を責めます。

「なんでこんな簡単なこともできないのかな」
「あなたがミスすると、周りからは私の指導力が低いと思われるんだよね」
「君は今回だけじゃなく、このあいだも○○でミスをしたし、その前は○○を間違っていた。あの時にも似たようなことがあったし……」

ネチネチ上司は、「ページのフォントが合っていない」「段落がずれている」など、その場で直せば済むだけの細かいミスについても、「だいたい君はいつも詰めが甘い。こうした細かいところに気を配れないから仕事ができないんだ。先週も、あやうくお客様のアポの時間を間違えそうになったじゃないか……」など、ことあるごとに過去のミスを蒸し返したりします。

また、1つのミスから文脈をどんどん広げて、「仕事ができない」と決めつけて能力を否定したり、「そういう性格だからお客さんにかわいがられないんだよ」と人格を否定するなど、ネチネチと責め立てます。たくさんの人が出席する会議で、重箱の隅をつつくようなミスを指摘したり、答えられそうにない質問を繰り返してプレッシャーを与えたりすることもあります。

ただ、こういったネチネチ行為がパワハラに当たるかというと、難しいところです。グレーゾーンではありますが、指導の延長線上にあるため、なかなかパワハラとは判定されにくいのです。

「ネチネチ上司」が抱えるコンプレックス

部下をネチネチ責める上司の共通点は、劣等感やコンプレックスを抱えていることです。

だからこそ、部下など、社会的立場が下の人間が自分より上にくることは、絶対に許すことができないのです。このため、「お前は私より劣っている」「自分より下なんだ」ということを明らかにするために、細かいミスをあげつらって責め立て、攻撃します。そして、「自分よりも下なんだ。劣っているんだ」というレッテルを貼ることで、自分の自尊心をなんとか保っているのです。

反論するとネチネチがエスカレートするだけ

では、こういったネチネチ上司に、部下はどう対応すればいいのでしょうか。

まず大事なことは、結果を出すことです。細かいことはともかく、「結果は出しているんだから、誰が見ても文句は言えませんよね」という状態にしておかないと、ネチネチ上司を納得させることはできません。

ただ、上司の「ネチネチ責め」に反論することはあまりお勧めできません。ネチネチと陰湿な攻撃をするタイプの人は、少しでも反論すると「口答えをするのか」と、さらに攻撃がエスカレートする可能性があります。この後も上司・部下の関係が続くことを考えると、自分を守るためにも、反論するのはやめておいたほうがいいでしょう。

心の中では“上から目線”をキープする

ただ、言われたことをそのまま受け止めてしまうのはとてもつらいことです。自分の心を守るためには、心の中では“上から目線”をキープしてほしいと思います。

「こんなにどうでもいいことでも指摘して責めたてないと、自分を保てないほどコンプレックスを抱えているんだな」「こういう生き方しかできないなんて、かわいそうな人だな」「みんなに嫌われて気の毒だな」「こんな人の言うことは、まともに受け止めない方がいいな」と、視線をすっと上に上げておきましょう。心の中に哀れむ気持ちを持っておいた方が、こちらの気持ちは楽になります。相手を変えることは難しいので、まずは自分の受け止め方をコントロールしてください。

また、こういった上司であれば、ほかにも被害に遭ってつらい思いをしている人が必ず身近にいるはずです。そういう人たちと連携をとって、いわゆる「被害者の会」的なつながりを持つようにしてください。直接、自分がネチネチの被害を受けていなくても、「隣の席の人がネチネチ言われていて、居心地が悪い」と感じている間接的な被害者もいるはずです。

そういった人たちと、つらい思いを吐き出し合うだけでもガス抜きになります。ネチネチと責められ続けていると、自尊心を傷付けられ、「実は私は上司が言う通り、本当に能力がない、ダメな人間なのではないか」という気持ちになってしまう可能性があります。でも、同じ被害に遭った人同士で話し、励まし合うことで、「いや、そんなことはない。やっぱりあの上司の方がおかしいんだ」と、気持ちを保ちやすくなるはずです。

ストレスを持つ女性
※写真はイメージです
ネチネチ上司の上司に相談を

真の解決を望むなら、ネチネチ上司の上司に相談に行くことを検討しましょう。

冒頭でも指摘した通り、こうしたネチネチ型のハラスメントは、そう簡単にパワハラと認定されません。身体的な暴力はなく、上司本人は「助言、指導である」と言い張るでしょう。

「能力や人格を否定するような言葉で、理不尽なほどにしつこく責めてくる」ことを、自分1人だけでなく、複数の人から伝える必要があるのです。上司としての指導力やマネジメント能力に問題があることを、上司の上司に理解してもらえるように、被害者の仲間と協力して作戦を練って進めてください。

「やりすごす」のも一つの手

とはいえ、上司の上司に訴えるのは、簡単なことではありません。ほかの被害者とうまく協力関係を築けるとも限りません。上司と、その上司の上司の関係性が密接で、訴えてもうまくいきそうにないというケースもあるでしょう。その場合は、うまく距離を取ることで「やりすごす」のも一つの手です。

会社にもよりますが、もし在宅勤務が可能であれば、会社でその上司と顔を合わせることをできるだけ避け、物理的に距離を取るようにしましょう。それが難しい場合は、なるべく日常的なやりとりはメールやチャットを利用し、対面のやり取りをしないようにします。もし、メールやチャットでもネチネチとからんできた場合は、文面を保存しておき、もし上司の上司に訴え出る機会ができたときの証拠として取っておくといいでしょう。物理的、心理的の両方で、距離を取り、接する時間を減らす工夫をすることは、自分を守ることにつながります。

割り切って「ゴマをする」

距離を取りつつ、仕方なく直接接する時間には「自分の身を守るためだ」と割り切って「ゴマをする」ことで被害を避けられる可能性もあります。もちろん心の中では“上から目線”をキープしつつ、口では「ご指摘ありがとうございます」「他の人は言ってくれませんでした」「○○さんのおかげです」とヨイショする。

ネチネチ上司は、劣等感やコンプレックスを抱えていることが多いので、部下との上下関係をはっきりさせると、とたんに機嫌が良くなる傾向があります。ほかの人であれば、「思ってもいないことを言ってゴマをすってきているな」と気付くことでも、ゴマすりとは気付かず素直に受け取り喜ぶ可能性が高いのです。

ネチネチ上司は、機嫌が悪くなるとネチネチがエスカレートする可能性があるので、こうしたリスクを避けるためにも、ゴマをすったり、ヨイショしたりして、機嫌良く過ごしてもらう方が安全です。

それでももし、またネチネチ言ってきたら「また言ってるな、しょうがない。ほかの“被害者”に話すネタができた。仕方がないから“ヨシヨシして”(ゴマをすって)やるか……」と思って、真に受けずにヨイショしたりしながら受け流します。

繰り返しになりますが、ぜひ仕事でしっかり結果を出してください。そうすれば、上司の上司に訴えるときにも説得力が増しますし、何より、劣等感やコンプレックスを抱えるネチネチ上司にとっては、最強の一撃になるはずです。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医
産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。

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