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江戸時代に大評判となった「吉宗 本店」の茶碗むしは、山海の幸が盛りだくさんの長崎名物

  • 2023.2.13
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長崎の名物料理といえば、いわずと知れた長崎ちゃんぽんと皿うどん、それにトルコライス、カステラ、ミルクセーキ……と枚挙にいとまがありません。あまりに盛りだくさんだからこそ、意外と知られていないのが丼仕立ての「吉宗(よっそう)」の茶碗むしです。 創業150年を超えて愛され、地元に親しまれるこの老舗の一杯は、トゥルンとなめらかなのど越しと、山海の幸から溶け出した滋味豊かなだしが絶品で、一度食べたら忘れられない味わいです。

江戸時代に大評判となった「吉宗 本店」の茶碗むしは、山海の幸が盛りだくさんの長崎名物
江戸時代に大評判となった「吉宗 本店」の茶碗むしは、山海の幸が盛りだくさんの長崎名物
赤い提灯が目印。慶応2年創業の茶碗むし専門店
江戸時代に大評判となった「吉宗 本店」の茶碗むしは、山海の幸が盛りだくさんの長崎名物
長崎市の繁華街、浜町にのれんを掲げる

長崎市浜町のベルナード観光通りから寺町方面にのびる、よろずや通り。その一角にあるのが、茶碗むしの名店「吉宗 本店」です。
創業は1866(慶応2)年。四国伊予藩士だった吉田宗吉信武(よしだそうきちのぶたけ)が、長崎の肥後藩邸に出入りするうちに、卵の風味が豊かでぷるんとのど越しがいい、この食べ物と出合ったのがきっかけだとか。あまりのおいしさに夢中になり、ついには自分で店を構えるに至ったのだといいます。

長崎長屋の意匠が随所に見られる歴史的建造物
江戸時代に大評判となった「吉宗 本店」の茶碗むしは、山海の幸が盛りだくさんの長崎名物
2012年の大改修のときに復活させた中庭を眺める1階フロア ※写真提供:吉宗

建物は老舗の風格が漂う1927(昭和2)年築の木造2階建て。
中小規模の雑居ビルが並ぶ路地裏でひときわ目を引く趣のある造りです。1階には長崎長屋の伝統意匠とされる端正な中庭を眺める囲炉裏席やカウンター、2階には座敷席の大広間と椅子席の中広間があります。

カンカ~ンと拍子木の音に促され2階席へ
江戸時代に大評判となった「吉宗 本店」の茶碗むしは、山海の幸が盛りだくさんの長崎名物
2階の接客係に来客を知らせる玄関係の店員さん ※写真提供:吉宗

「吉宗」の昭和風情を味わうなら、2階席がおすすめです。
木の格子戸をガラガラと開けると、法被姿の店員さんが迎えてくれ、カンカ~ンと威勢よく拍子木を鳴らしてくれるのです。これは2階に来客を知らせる合図。靴を脱いで赤絨毯が敷かれた階段を上れば接客係の店員さんが待ち受け、スムーズに席まで案内してくれます。

表通りから見える肘掛け欄干がある側は畳敷きの大広間。座布団に腰掛けて外を眺めていると、時代を遡ったようなノスタルジックな気分にひたれます。

直径約13cmの特注の丼に10種類の山海の幸がはいった、たっぷりの茶碗むし
江戸時代に大評判となった「吉宗 本店」の茶碗むしは、山海の幸が盛りだくさんの長崎名物
丼は吉宗の特注品。蓋を開けるとふわ~っとだしの香りが立ち上る ※写真提供:吉宗

「吉宗」の茶碗むしは、ひと目見てその丼のサイズにびっくりしますが、食べるとそれ以上のインパクトを感じます。

だしをたっぷり含んだ生地はかろうじて形を留めている状態で、レンゲですくって口に入れたとたんとろけ出し、うまみが口中を満たします。
具は身がほろりと崩れる穴子にプリプリの海老、キクラゲやタケノコなど全10種類。常連が言うには、これら食材のうまみをすべて吸い込んだお麩がとりわけおいしいとのこと。

トゥルントゥルンの茶碗むしとふんわり蒸し寿司
江戸時代に大評判となった「吉宗 本店」の茶碗むしは、山海の幸が盛りだくさんの長崎名物
夫婦蒸しに豚の角煮や小鉢、果物が付いた「吉宗定食」2530円

茶碗むしは単品でも頼めますが、ここを訪れたからには茶碗むしとともに創業時から受け継がれる蒸寿しとセットの「夫婦蒸し」をご賞味あれ。
ほとんどの人が対で注文するのが常のため、品書きには茶碗むしセットでもなく、夫婦蒸しでもなく、「御一人前」(1485円)の名で記されています。

穴子のそぼろ、魚のおぼろ、錦糸卵をのせて蒸し上げた蒸寿しは、加熱することで酸味を飛ばしたやさしい味わい。
茶碗むしも蒸寿しも、どちらもあっさりと食べられるので案外ペロリと完食できます。

長崎っ子のアイデンティティにもつながるソウルフード
江戸時代に大評判となった「吉宗 本店」の茶碗むしは、山海の幸が盛りだくさんの長崎名物
とくに週末やハイシーズンは行列ができる人気店

地元長崎では、このお店の茶碗むしをソウルフードと公言する人が少なくありません。
というのも、「吉宗」は昭和初期から出前も手掛けていて、自宅への来客時のほか、節句祭り、長寿祝い、法事など長崎の集まりごとのたびに利用する家庭が多いからだそう。
この地に住む人々のアイデンティティに大きく影響しているんですね。

ちなみに、坂本龍馬が長崎に亀山社中を開いたのが1865(慶応元)年で、「吉宗」の開業はその翌年。幕末ファンのなかには、「新しいもの好きの龍馬は、きっとこのお店の茶碗むしを食したに違いない」と想像をふくらませ、訪れる人もいるそうです。

長崎を訪れた際は、驚くほどに口溶けのいい名物の茶碗むしとともに、このまちにまつわる歴史と文化と情緒を味わいに、訪れてみてはいかがですか♪

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