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『ラ・ラ・ランド』『バビロン』のデイミアン・チャゼルの音楽制作の裏側を取材

  • 2023.2.9
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ビジュアル・アートである映画を音楽スコアでリードするスタイルを持つデイミアン・チャゼル監督。ジャスティン・ハーウィッツとのコラボレーションの裏側をフロントロウ編集部に明かしてくれた。

デイミアン・チャゼルとジャスティン・ハーウィッツの手法とは

『ラ・ラ・ランド』で史上最年少にしてアカデミー賞監督賞を受賞したデイミアン・チャゼル監督は、ビジュアル・アートである映画を音楽スコアでリードするというスタイルを持つ監督。2月10日に公開される最新作『バビロン』でも、耳に届くを超えて体を突き上げるようなアグレッシブでエキサイティングな音楽が第80回ゴールデン・グローブ賞作曲賞を受賞。アカデミー賞でも作曲賞にノミネートされている。

画像1: 映画『バビロン』
映画『バビロン』

そんなチャゼル監督の映画音楽を作るのは、2009年のデビュー映画『Guy and Madeline on a Park Bench』から全監督作品でコラボレートしている、ハーバード大学時代のルームメイトであるジャスティン・ハーウィッツ。今回、そのコラボレーションの舞台裏をチャゼル監督自身がフロントロウ編集部に明かしてくれた。

画像: デイミアン・チャゼル(右)とジャスティン・ハーウィッツ(左)
デイミアン・チャゼル(右)とジャスティン・ハーウィッツ(左)

脚本家や監督のなかには、作品の構想段階にプレイリストを作って音楽を聴きながらインスピレーションを得るという人が多くいるが、チャゼル監督もそのひとりだそうで、「アイディアが湧きだすためには音楽が必要な性分なので、まずは音楽のプレイリストを作ります。映画には絶対に使わないと分かっている曲ばかりですが、私の気持ちを向かいたい方向へと導いてくれる音楽です」と話す。

その後、脚本の原案が仕上がると真っ先にハーウィッツ氏に脚本を手渡すという。「その時に自分が聴いていたプレイリストを一緒に渡すこともあります。渡さないこともありますが、そのときもどのようなムードの音楽を想像しているかは伝えます。脚本にそれが書かれていることもありますね。ただ、言いすぎはしない。彼がどんなものを生み出すかが知りたいですから、全体的なフィーリングや音楽が作品で成す役割を伝えるに留めます」とチャゼル監督。

そうしてボールが動きだすのだが、そこからが、非常に長く大変な作業が繰り返される。チャゼル監督から脚本原案とコメントを受け取ったハーウィッツ氏がピアノデモを作るのだが、それですぐに“これだ!”というものになるわけではなく、「何度も何度も何度もデモを聴き、いくつものメロディを聴くという作業が数週間から長い時で数年」続くという。この時、チャゼル監督とハーウィッツ氏が探しているのは、作品スコアの核となるメロディ。「まずは核となるメロディをいくつか見つけて、それらのメロディを軸にスコアを作っていく、というのが彼と私の作業の仕方なのです。そこからいくつかの楽器で演奏してみて、モックアップを作り、どんなサウンドスケープになるのか、感覚をつかみます」。

『バビロン』のメロディを見つけるのに2年かかった

映画『バビロン』では1920年代のサイレント映画から1930年代のトーキー映画へと移ろうとするハリウッドを舞台に、豪華なファッション、ド派手なパーティー、熱狂的な音楽、美しさと欠点のあるキャラクターたちで、ハリウッドの光と闇を伝える。

画像2: 映画『バビロン』
映画『バビロン』

“夢と音楽のエンタテイメント”と称されている『バビロン』の核となるメロディを見つけるのに要した時間は、なんと、約2年! そして繰り返すが、この2年はあくまで“核となるメロディ”を見つけるのにかかった時間。前述のように、この後にスコアを作っていくことになるので実際に音楽が完成するまではまだまだ時間がかかるということ。

ただチャゼル監督は、そこまで時間をかける理由があると念押しする。

「そこまですることで、ストーリーボード(※絵コンテ)を作っているときに音楽が助けになり、ショットリスト(※ワンシーンで起こるすべてのことを、映画の中の各ショットの説明によってマッピングした文書のこと)を作っているときに音楽が助けになり、リハーサルや撮影中も音楽が助けになる。(『バビロンの』)エディターのトム・クロスが最初の編集作業をしているときも音楽が助けになるのです」

画像3: 映画『バビロン』
映画『バビロン』

ちなみに、『バビロン』では衣装、ヘアメイク、そして音楽でも、時代に忠実でありながら時代劇にはしないと誓っていたチャゼル監督。例えば『バビロン』のメインキャストに、20年代の作品では定番であるウェーブのかかったショートヘアの女性は登場しない。代わりに登場するのは、私たちが思う“20年代らしい”とは異なるが、実際には存在していたヘアスタイルをした女性たち。このように、音楽でも20年代の楽器で20年代とはギャップのある音楽を演奏する、というような“ハイブリッド音楽”を目指したという。

「モダンで古風で、異なる年代や文化の融合。時代に忠実ながらも、タイムレスでモダンでエキサイティングでアグレッシブで肉食的で映画を前へプッシュする力がある音楽」と監督が評する『バビロン』の音楽は、ジャズ、クラシック、ハウス・ミュージック、オペラ、ラテン、アフリカンなど、異文化の音楽のサーカスのような出来で、映画のトーンをしっかりと定めている。

画像4: 映画『バビロン』
映画『バビロン』

音楽のマジックを映画に吹き込むデイミアン・チャゼル監督の最新映画『バビロン』は2月10日より全国公開。(フロントロウ編集部)

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