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これが始まったら警戒レベルを上げよ…疎遠な知人が持ち込む"危険なビジネス"に共通する勧誘ワード

  • 2023.2.8
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疎遠になっている知人から突然連絡があったら、注意したほうが良いかもしれない。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「疎遠な人から持ち込まれるビジネス案件は、ほぼすべてが怪しい。彼らには共通の勧誘ワードがあります」という――。

カフェで話したりリラックスしたりする中期の大人のカップル。
※写真はイメージです
怪しいビジネス案件をどう見抜くか

フリーのファイナンシャル・プランナー(FP)を長年やっていると、投資話だけでなく、ビジネス案件の勧誘を受けることも少なくありません。

ただ残念ながら、「こいつを上手く利用してやろう」との魂胆が見え透いているものや、「これはほぼ詐欺だろう」というものも少なくありません。それらを見抜けるようになったのは、これまでさまざまなビジネス案件に乗って、失敗してきたからに他なりません。

そんな経験から、怪しいビジネス案件の勧誘の際、彼らがよく使う言葉があることに気付きました。

先日、かつて仕事でお世話になった知人から、「久々に会わないか」との連絡があり、数年振りに再開しました。

プロテイン販売を、「一緒にやらないか?」

大きな紙袋を持って現れた彼は、近況報告もそこそこに、「新しいビジネスを始めたんだよ」と、その紙袋からおもむろに大きなボトルを取り出し、「このプロテインが、いいんだよ」と。私は内心、「おお、(やはり)そうきたか」と思いつつも、お世話になった人だし、プロテインは嫌いではないし、ご祝儀として、ちょっとくらいなら買ってあげてもいいかな、とは思いました。

しかし、彼が次に発した言葉は、「(プロテイン販売ビジネスを)一緒にやらないか?」でした。

そして矢継ぎ早に、コミッションだのボーナスだの、その報酬体系について滔々とうとうと語り、「お互いに、ウィンウィンの関係だよ」とのこと。ただ、この「一緒にやらないか」「ウィンウィンの関係」との言葉に、私のテンションはサーと下がり、そして、一気に警戒感を高めるのでした。

“上手く利用された” 記憶が蘇る

というのは、これらの言葉に、苦い記憶が蘇るからでした。

うつ病の女性は家で何かを考える
※写真はイメージです

かつて、私がFPとして独立したてのころ、若くて血気盛んだったこともあり、とにかく、いろいろな人と一緒に、さまざまなビジネスをしてきました。ただ、当時の私には何の実績も経験もなかったことから、相手が提案してきた企画に乗っかるケースがほとんどでした。

そして今思えば、「上手く利用されたなぁ(というか、騙された?)」と思うようなケースも少なくなかったのです。そのときに、提案してきた相手が必ずと言っていいほど使ってきた言葉が、「一緒にやろう」「ウィンウィンの関係」だったのです。

ちなみに、上手く利用されたなぁ、と思われるケースは、以下のとおり。

●セミナーを一緒にやりましょう

某カルチャーセンターからの提案で、マネーセミナーを共同実施。

ただ、「集客のため、セミナー参加者には、藤原さんの著書を1冊プレゼントしてあげてください」とのこと(著書は無償提供)。ただ、受講料2000円(私の取り分は1000円)の設定だったので、集客するほど私は赤字となった。

●協会を一緒に立ち上げよう

マネー知識の普及を目的とした某協会を立ち上げ、提案してきた相手は会長、私は事務局長の肩書を得るも、私は協会の電話番として終日、会長の事務所(兼協会事務所)に待機。

電話がかかってくるのは、(なぜか)ほとんどが会長の取引先のため、結果として、無給の事務スタッフと化す。

●お互い、人脈が増えるので、ウィンウィンですね

お互いの人脈を紹介し合おうと異業種交流会開催を提案されるも、提案してきた人が連れてきた人数はごくわずか。しかも、私の連れてきた人達には、交流そっちのけで、自らの商材を売り込むばかり。交流会に招待した知人・友人達からはブーイングの嵐。

今振り返れば、金銭的な損害よりも、時間・労力・人脈をいいように利用されてしまったケースが多かったように思えます。もちろん、それは私の自己責任ではありますが、そんなことから、この「一緒にやろう」「ウィンウィンの関係」といった言葉には、今でも、非常に敏感になっております。

ビジネス案件の多くは、ネットワークビジネス?

その後、FPとして経験を積んでいく中で、より多くの人と会うようになり、より本格的なビジネス案件の勧誘も受けるようになります。

ただ、そのほとんどは化粧品・健康食品などの代理店ビジネス、投資や自己啓発などの情報商材販売ビジネスといった「ネットワークビジネス」でした。「藤原さんの知識や人脈があれば、このビジネスで絶対に成功しますよ」「藤原さんにビジネスパートナーになっていただければ、お互いにメリットがありますよね」と、ネットワークビジネスの勧誘では、皆、やたらヨイショしながらも、「一緒にやろう」「ウィンウィンの関係」を迫ってくるのでした。

もちろん、ネットワークビジネス自体がダメとは言っておりません。

ただ、ネットワークビジネスには強引な勧誘が多く、また、怪しい案件が多いのも否定できません。実際、私が受けた勧誘も、そのようなものが少なくありませんでした。そして、そんなネットワークビジネスの勧誘ではとくに、「一緒にやろう」系の言葉を使う人が多かったのです。

怪しいビジネス案件の、共通点

さて、もうお気付きかと思いますが、この「一緒にやろう」系の言葉こそが、怪しい(もしくは魅力的ではない)ビジネス案件の勧誘の際、よく使われる言葉です。

もっとも、これは様々な勧誘において少なからず使われる言葉なので、この言葉が出てきたら絶対にアウトとは言いませんが、この言葉をやたらと強調してくる場合は要注意です。

勧めてくるビジネス(商品・サービス)の魅力が薄かったり、勧誘してくる人にのみ大きなメリットがあったり、場合によっては法律に触れるようなビジネスだったりと、他にもなにか後ろめたい、もしくは突っ込まれたくない事情がある場合、それらを覆い隠す、この「一緒にやろう」ほど、都合の良い言葉はありませんからね。勧誘を受ける側にとっても、耳障りの良い言葉ですから。

ちなみに、この「一緒にやろう」を多用してくるような、怪しい(もしくは魅力的ではない)ビジネス案件の共通点として、他にも以下のような特徴が挙げられます。

・商品やサービスの説明よりも、報酬体系の説明に力を入れてくる

商品販売時よりも、新たな会員(ビジネスパートナー)獲得時の報酬が大きい。

・勧誘してくる本人が、とくに成功しているわけではない

成功しているどころか、成績が低迷しているケースも少なくない(もちろん本人は、口には出さないが)。

勧誘してくる本人が、最近、そのビジネスを始めたばかりというケースも多い。

・勧誘の場に、先輩や上司を連れてきたり、セミナーに誘ってくる

成功している(ほんの一部の)人の体験談を聞かせてくる(勧誘してくる本人は成功していない)。

・勧誘してくる本人が、そもそも、そのビジネスのしくみがよく分かっていない

明らかに、何らかの「勧誘マニュアル」そのままの表現が見受けられたりもする。

・さも、楽して儲かる投資話のように、勧誘してくる

「契約料と商品で100万円かかりますが、すぐに回収できます」といった具合に、お金を出せば、確実に儲かるような言い回しをしてくる。

・さほど親しくない人、疎遠になっている人からの勧誘である

「○○さんからの紹介でご連絡差し上げました」のように、まったく面識のない人からの勧誘も少なくない。

ビジネス案件で失うのは「お金」だけではない

投資の失敗は基本的に「お金」だけで済みますが、怪しいビジネス案件に手を出しての失敗は、「お金」以外にも「信用」を失う可能性もあります。この場合、人生におけるダメージは計り知れません。実際、私の周りでもネットワークビジネスに手を出し、周りに迷惑を振り撒き、音信不通になっている人もいます。

それを思えば私の場合、若い頃に、致命的な傷を負わない程度に、「一緒にやろう」の洗礼(?)を受け、失敗経験を積めたことは良かったと思っています。もし、経験の浅い段階で、「一緒にやろう」との耳障りの良い言葉に乗せられ、質の悪いビジネス案件に手を出していれば、今では、(悪い意味で)別の人生を歩んでいたかもしれません――。

ちなみに現在、私のもとにやってくる、さほど親しくない(疎遠な)人からの一方的なビジネス案件に関しては、ほぼすべてが怪しい(もしくは魅力的ではない)案件と言っても過言ではありません。

もちろん、それらはすべて断っておりまして、前述のプロテインビジネスも丁重にお断りしました。

一方で、それなりに親しい(普段からよく会っている)人からのビジネス案件には、それなりに魅力的な話もあり、中にはご一緒しているものもあります(そして、それなりに成果は上げている)。

その意味では、普段から付き合う人をしっかり選ぶことも、怪しい案件に引っかからないための、大きな予防策にもなるわけですね。

もっとも、それも非常に難しいことではありますが。

藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)
ファイナンシャルプランナー
1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。

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