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「食べられても産めばいい」クレイジーすぎる「人類」の歴史がわかる図鑑

  • 2023.2.5

人類がチンパンジーでなくなってから、私たちホモ・サピエンスが現れるまで。
知られざる約700万年間の歴史がわかる!

2022年12月22日に発売された児童向け図鑑『おどろきの700万年 人類の進化大百科』(偕成社)は、タイトルの通り、人類が生まれてからの約700万年の歴史を紐解いている。

人類がホモ・サピエンス1種類なのは、当たり前ではない!

いま人類はこの地球上に、私たちホモ・サピエンスのたった1種類しかいない。この事実は、現代の私たちにとっては当たり前のこと。だがそれは、人類史的なスケールで考えれば当然ではない。

イヌの仲間にオオカミやジャッカルなどがいるのと同じように、かつて人類にもホモ・サピエンスではない、しかし仲間といえるほかの人類が存在した。現在のようにホモ・サピエンスだけになったのは、ほんの数万年前から。それまではネアンデルタール人やホモ・フローレシエンシスなど、他の種の人類もいっしょに地球上に生きていたという。

では、それらの人類はどのように生まれ、どうやって生き、どうして消えていったのか? 本書は、「人類」の歴史を徹底的に掘り下げることで、そんな疑問に答えてくれる。

初期の人類には「土踏まず」がなかった

たとえば、440万年前ごろの人類「アルディピテクス・ラミダス」について、体の特徴やどんな暮らしをしていたのかを解説。チンパンジーと人類を分ける大きな特徴は、「二足歩行」の可否。だが「アルディピテクス・ラミダス」にはまだ「土踏まず」がなく、上手には歩けなかったという。

420万年前ごろには有名な「アウストラロピテクス」が登場。ややショッキングな見出しが付けられているが、これは当時のリアルな生態。多く出産して個体数が増えることで、二足歩行で動きが遅くても、自然界で生きられるようになっていった。

このように、見開きごとに時代が進み、たくさんの人類が現れては消えていく。

また、過去の歴史というのは、遺跡などの物証・事実をもとにした、さまざまな仮説の上にとなえられている。そのためところどころに、「検証」のページがあり、「仮説を立てて予測をし、事実と照らし合わせてよい仮説をとる」という流れが解説されている。歴史を紐解くというのがどういうことなのかも、一緒に学ぶことができるようになっている。

生きていく上で脳は大きい方が有利、そのため脳の大きい種が生き残り、脳が大きくなるという進化をとげたと考えられるが、ではなぜ脳は大きくなったのか? ここでは2つの仮説を立てて検証・予測し、よい方の仮説を「よりよい仮説」としている。

「わかりやすさ」ピカイチの古生物学者が監修

本作を監修したのは、分子古生物学が専門の博士・更科功(さらしな・いさお)さん。東京大学教養学部基礎科学科を卒業後、民間企業での勤務を経て大学に戻り、東京大学大学院理学系研究科博士課程を修了した。

更科さんは、いま科学分野でもっとも注目されている書き手の一人で、その文章の「わかりやすさ」に定評がある。巧みな比喩や、噛んでふくめるような丁寧な説明で、読者がそれまでぼんやりとしか理解していなかったものを、クリアにしてくれる。

人類の進化の歴史は、いまだ分かっていないことも多い上、出てくる人類たちの名前も長く覚えにくかったり、系統が入り組んでいたりするので、一見しただけではなかなか難解。それを更科さんはみごとに打破し、人類の進化はこんなにおもしろい、と読者を感嘆させてきた。本作は、その更科さんがはじめて監修を手がけた児童書となっている。

読み切ったら、人類へ思いを馳せずにはいられない、読み応えたっぷりの1冊。ぜひ手にとって、長い長いわたしたちの歴史を楽しもう。

■更科功さんプロフィール
さらしな・いさお/1961 年、東京都生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒業。民間企業を経て大学に戻り、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。専門は分子古生物学。現在、武蔵野美術大学教授、東京大学非常勤講師。『化石の分子生物学――生命進化の謎を解く』で、第 29 回講談社科学出版賞を受賞。著書に『若い読者に贈る美しい生物学講義』、『ヒトはなぜ死ぬ運命にあるのか―生物の死 4つの仮説』、『理系の文章術』、『絶滅の人類史―なぜ「私たち」が生き延びたのか』など。

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