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“化粧品を買う”ことがSDGsアクションに。コスメメーカーが取り組む“学び”の支援

  • 2023.2.3

【est】アジアの子どもたちへ。“探求”の機会創出に貢献

一人ひとりの無限の可能性を引き出すため、人間の多様な営みについて研究し、確かな真実だけを届けたいと、日々探求を続ける「est(エスト)」。「探求することこそ、未来を切り開くことに繋がる」という想いのもと、学ぶ・知ることを通して、自分の中にある可能性に出会い、豊かで美しい人生を送る社会実現のために、2022年6月より、教育支援活動「探求のあかりプロジェクト」を始動させた。

美容のミライ 学びの支援
教材で学習するバングラデシュの女の子 写真/花王提供

同プロジェクトでは、IT技術を駆使し、途上国における若者の教育格差の解決に取り組む認定NPO法人「e-Education」を通じて、さまざまな理由から探求の機会を奪われてしまっているバングラデシュ、フィリピン、ミャンマー、ネパールの農村部に暮らす若者たちの学びの機会創出に貢献。支援活動の一歩として、2022年6月に製品の売り上げの一部を寄付した。

今回支援した内容は、主に教師の不足や経済的事情などで大学・高校受験の勉強が難しいバングラデシュやフィリピンの農村部の学生に対し、映像教材を提供、また都市部の優秀な大学生を「オンライン教育教師」として雇用するほか、インターネット環境のない生徒も学べるタブレットやAI搭載の教育アプリを配布するなど、大学・高校受験へ向けた学習をサポート。今後も認定NPO法人「e-Education」と連携しながら、寄付活動のほか、より発展的な支援の形を模索し、さまざまな取り組みにチャレンジしていく予定だ。

【パルファム ジバンシイ】美術学校とパートナーシップを結び、若き才能を育む

「パルファム ジバンシイ」は、社会的包摂プロジェクトの一環として、若い世代の人たちに、新しい展望やキャリアパスを提供するプロジェクトを支援・推進。そのひとつに、かつてブランド創設者のユベール・ド・ジバンシィ自身も通っていたという、パリの名門美術学校、エコール・デ・ボザール(パリ国立高等美術学校)とのパートナーシップがある。2016年、フランス最高峰の国立高等美術学校に入学するためのヴィア・フェラータ(予備校)を開設し、多数の合格者を輩出。「パルファム ジバンシイ」は、この予備校に在籍する、さまざまな社会的、文化的背景を持つ学生たちの財政面を3年間にわたり支援している。

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ヴィア・フェラータの生徒たちのワークショップの様子 写真/パルファム ジバンシイ提供

エコール・デ・ボザール(パリ国立高等美術学校)と「パルファム ジバンシイ」とのパートナーシップにより生徒数は倍増。2021年からは、50名の学生が、個別サポートと質の高い機材へのアクセスにより、ハイレベルの芸術教育を受けている。また「パルファム ジバンシイ」は、支援だけでなく、生徒の募集や口頭試問にも携わり、年間を通じて学生たちと深く関わる機会を設けている。さらに学生たちは、「パルファム ジバンシイ」との提携による芸術制作プロジェクトに参加することもできるという。

【ノエビア】ヒマラヤの子どもたちと森林再生を支援

創業から40年以上、植物研究と皮膚科学を追求するスキンケアブランド「ノエビア」は、国内スキンケア対象商品の売り上げ1品につき1円、海外スキンケア商品の販売実績の一部を「ノエビア グリーン基金」として、アルピニスト野口健さんが支援する「ヒマラヤに学校をつくろうプロジェクト」「ヒマラヤに森をつくろうプロジェクト」への寄付を、12年間にわたり続けている。

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現地の子どもたちとアルピニスト野口健さん 写真/ノエビア提供

同プロジェクトの舞台は、ネパール・ヒマラヤ山脈にそびえる8000m峰のひとつ、マナスル。1956年に日本の登山隊が世界で初めて登頂に成功し、そのニュースは、戦後、復興に力を入れていた日本に希望をもたらし、人々に大きな感動を与えた。

野口さんは2006年、かつて日本人に勇気と希望を与えたマナスルへの恩返しとして、ふもとの町であるサマガオン(サマ村)の子どもたちのために、自身が代表を務める認定NPO法人「ピーク・エイド」を通じて、マナスル基金を設立。その後、「ヒマラヤに学校をつくろうプロジェクト」「ヒマラヤに森をつくろうプロジェクト」へと受け継がれた。

サマ村への道のりは、ネパールの首都カトマンズからおよそ10日間かかる。厳しい自然環境のもと、村人たちは自給自足の生活を行っている。この先、サマ村を支えていく子どもたちによい学びの機会を与えることが村の発展につながると考えた野口さんは、2008年に遠方から通う生徒のための学校寮の建設を村人とともにスタート。2010年に完成、2014年には食堂兼多目的ホールも併設させた。

これまでさまざまな国を訪れた野口さんは、「木を切る文化はあっても、植える文化を持つ国は少ない」と語る。森林伐採を繰り返すことで、土砂崩れがおき、ときには人の命をも奪いかねない。支援を行うサマ村もまた、村人が生活のために木を切り、森林が破壊された状態にある。50年後、100年後を想定し緻密な計画のもとにつくられた人工林「明治神宮の森」に思いを馳せる野口さんは、人は自然を破壊することも、自然をつくることもできることを実証するため、2016年から5年間にわたりサマ村に3万本の植樹を行った。現在は、さらなる目標として10万本の植樹を目指し活動を続けている。

【BI-SU】多様性を学ぶための絵本制作を支援

自然と生態系の保護を目的とし、役目を終えたツバメの巣から採取された成分を使ったスキン・ヘアケア用品を展開する「BI-SU(ビース)」。運営元であるエムスタイルジャパン株式会社は、未来を担う学生のために、積極的にインターンを行い、製品のことはもちろん、同社が昔から取り組んできたSDGsにおける概念を、学生らに伝え、ともに地球の未来について考える機会を設けている。

きみだけのいろ〜みんなちがうからみんないい〜
自分にしかない“自分だけのいろ”の大切さを伝える。学生が主体となり制作した絵本「きみだけのいろ〜みんなちがうからみんないい〜」 写真/ビース提供

その一環として、学生たちの「みんながそれぞれ違っても良いという」という観点から、多様性をテーマに扱った「マレーシアのアナツバメと日本のツバメとの違いを描いた絵本」の制作支援を行った。絵本のイラストや脚本はすべて学生たちの手によるもので、⼈との“違い”に対するイメージを“恐怖”から⾃分にしかない“良さ”に変えたいという想いが込められている。

また学生たちはクラウドファウンディングで集まった資金をもとに、学校、病院、幼稚園、保育園に絵本を寄贈。今後も「BI-SU」はSDGsやアナツバメの普及活動を続け、学生たちとともに、多くの人に多様性の素晴らしさを伝えるための活動を視野に入れている。

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「BI-SU」は、学びの支援以外にも、アフリカ・スーダンの子どもたちに、ツバメの巣の栄養がたっぷりと詰まったオリジナルのキャンディを作り、NPO法人ロシナンテスを通じて届けるなど、さまざまな支援活動を行っている

【クナイプ】海洋廃棄物をなくし、次世代の意識向上をうながす

ドイツ生まれのバスソルトでおなじみの「クナイプ」。創業以来130年以上にわたり、動物実験を行わず、資源を保護し、環境に配慮したモノづくりを行ってきた「クナイプ」は、インドネシアの地元漁師が拾い集めた、海中に漂流するプラスチックごみをリサイクルするプロジェクト「ReSea」の支援を行うことで、現地住民の雇用や収入の安定にも寄与。「ReSea」は、海洋保護について学ぶことを目的とした、地元の学校向け教育プログラムにも後援も行っている。自分の生まれ育った故郷の多様な自然に対する誇りを伝え合い、プラスチック汚染問題への学びを深め、海を守るためにどんな貢献ができるかを考えることを目的とした教育プロジェクトには、これまで5校から1660名の生徒が参加した。

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ReSea社との共同教育プロジェクトの様子 写真/クナイプ提供

2022年、エコバディス社によるプラチナ評価を獲得、また国際的組織「グリーンブランド」にも2012年以来、連続で5回選出されている「クナイプ」は、2025年までにパッケージをプラスチックフリーの代替品に切り替える取り組みを行っており、コルクや草から作られた紙や、再生可能な有機原料から作られた素材など、これまで包装材として使用されてこなかった素材を使用することで新しい分野を開拓している。

【ドクターブロナー】生徒、教師に向け、SDGsについて学ぶ勉強会を開催

カリフォルニア発の天然由来成分100%のオーガニックソープ「マジックソープ」が大人気の「ドクターブロナー」。本国であるアメリカを拠点に活動する「Boys & Girls Club」「YMCA」を通じて、サンディエゴの子どもたちのための放課後プログラムに投資を行う。またフェアトレード先であるガーナのパーム工場で働く人々の子どもたちのために、モンテッソーリ学校への出資も。その内容は、子どもたちが通う建物だけでなく、教師が住むための家の建設のほか、学校から約800m離れた場所にあるプロジェクトサイトの道路、排水、水、電源の開発など多岐にわたる。

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昨年夏に実施した学習会の様子。貧困をなくすには、フェアトレードの認証マークを取得した製品を選ぶこと、自分が変えたいと思っていることに寄与する製品を選ぶこと、企業をリサーチして具体的にどんな取り組みをしてるのか調べることの必要性など、“買い物”について改めて考える時間となった。 画像/ドクターブロナー提供

さらに日本での活動では、神奈川県内の公立中学校で、全校生徒と教職員に向けたSDGs学習会を開催。2022年7月に実施した学習会では、「エシカル消費について考える」をテーマに、「買い物は最も身近なSDGsアクション」「買い物は投票」であることなどを伝えながら、よりよい地球のために何ができるのかを考えるグループディスカッションなどを行った。

【EraL】独自の奨学金制度を設けて、美容師を目指す学生をサポート

植物が持つ力と科学の力を融合させ、日本人に合わせた頭皮と髪のエイジングケアに注力するヘアケアブランド「EraL(イーラル)」は、美容師を目指す美容学校の生徒を対象とした、独自の奨学金制度を設立。少子化や働き方改革による、美容師のなり手不足の課題解決を目指し、美容室の未来、そして美容を目指す学生のバックアップをすることで、美容業界への貢献を行う。

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イーラルの提携サロンでしか受けることのできない独自のメソッド「ヘッドキュア」。頭皮のコンディションを整えるプログラムで、頭皮トラブルの原因となる古い脂質や角質を除去するとともに、頭皮の水分量をコントロールし、柔軟で潤いのある頭皮環境へと導く。 写真/イーラル提供

少子高齢化により、美容室も人材不足が課題となっている昨今。美容師の志望者の減少、美容師を志望しても、さまざまな事情で断念せざるを得ない学生も少なくないという。

「EraL」は、提携するサロンでしか受けることのできない独自のメソッド「ヘッドキュア」の施術者を育成する「キュアリストアカデミー」を一部の美容学校で実施している。奨学金試験を受けるには、このアカデミーに合格し、かつ美容師国家試験に合格しているなどの諸条件をクリアした学生が対象となる。美容学校からの推薦、選考を経て、美容専門学校卒業後に、奨学金として24万円が給付される。対象の美容学校は随時募集している。

取材・文/大森奈奈

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