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自由奔放に独自の世界を追求し続けた、女性美術家の軌跡。

  • 2023.2.3

人類こそ絶滅危惧種かも?壮大で詩的なパワーズの傑作。

『惑う星』

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リチャード・パワーズ著木原善彦訳新潮社刊¥3,410

宇宙生物学者の父親は、母親を亡くして情緒不安定になった9歳の息子を山小屋に連れ出す。絶滅危惧種の動物たちに胸を痛める息子に、父親はいくつもの架空の星の話をする。挿話のように父と子の対話が詩的で美しい。危機に瀕した地球にあって、人類こそが絶滅危惧種かもしれない。私たちは子どもたちにどんな希望を示してやることができるだろう。前作『オーバーストーリー』でピュリッツアー賞を受賞したパワーズの傑作。

いま、日本で起きていること。難民問題を追ったルポルタージュ。

『ボーダー 移民と難民』

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佐々涼子著集英社インターナショナル刊¥1,980

ウィシュマさん死亡事件で一躍注目を集めることになった難民申請者の過酷な実態を丹念に取材したノンフィクション。欧米に比べて日本の難民認定率は異様に低いのだという。入管収容施設で目の当たりにした驚くべき人権侵害。技能実習生の名目で使い捨てされる人たち。排除も差別もいまの日本で起こっている現実。日本語教師として在留外国人と関わってきた著者は、鎌倉の難民センターで暮らしながら、彼らの苦境に寄り添う。

現代短歌の新しい旗手による、ポップで切ない第三歌集。

『オールアラウンドユー』

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木下龍也著ナナロク社刊¥1,980

『きみを嫌いな奴はクズだよ』以来、6年ぶりの第三歌集。「情熱大陸」が製作過程を密着取材したことでも話題を集めた。「ひとりだと選んでしまう道があるだろうお前の薄い胸にも」。繰り返される風や花びらといったモチーフの儚さ。生と死、出会いと別れ、絶望と希望もすべて紙一重のところにある。自ら短歌を詠む人も増えているらしい。三十一文字は今日一日今日一日と点滅するように、生きる感覚としっくりとなじむのかもしれない。

孤高の探求を続けた芸術家、合田佐和子の軌跡を辿る。

『合田佐和子 帰る途もつもりもない』

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高知県立美術館監修、三鷹市美術ギャラリー監修青幻舎刊¥2,970

男性画家が大多数を占める時代、自由奔放に独自の世界を追求し続けた合田佐和子。絵画のみならず、オブジェや写真などのメディアを横断した作品は、ファッション、音楽、演劇とも親和性が高かった。寺山修司や唐十郎のポスターや舞台美術を手がけるなど、退廃的なアングラ演劇の空気を体現した時代から色彩豊かな晩年のパステル画まで。ひとつのスタイルにとどまらなかった全軌跡を振り返る回顧展の開催とともに、待望の作品集が刊行。

*「フィガロジャポン」2023年3月号より抜粋

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