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北村匠海と中川大志が、映画『スクロール』に込めた実感。「絶望」と対峙した先に二人が見つけたものとは?

  • 2023.2.2
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映画『スクロール』は、うまくいかない現実から逃げるように生きていた若者たちが、それぞれの「絶望」に触れ、人生に改めて向き合っていく姿を描く物語です。友だち同士の役を演じてW主演を務めたのは、北村匠海さんと中川大志さん。旧知の仲でありながら、本格的な共演は初めて。今作を通して考えたことや、20代半ばの今感じている思いについて話を聞きました。

──今作は、社会に出て間もない若者たちが、仕事や人間関係を通して、生きることや愛することに対峙していく物語です。お二人と同世代のキャラクターを映し出す、この作品に参加して感じたことを教えてください。

北村 社会の描き方がいいなと思いました。4人の登場人物がいることで、世の中を多面的に捉えている。お話をいただいた当時は、僕も彼らと同じように、いろいろ考えていて……。でもこの脚本を読んで、「人間誰しもそうした思いを抱えながら、それぞれ一人の世界を生きているんだ」と感じることができたし、今の自分だからやりたいという気持ちが湧きました。

中川 自分が生きる場所を探す話だな、と感じましたね。たとえば、僕が演じたユウスケは職場でもプライベートでもたくさんの人に囲まれて、一見明るい性格に見えるけど、実は一歩踏み込んだ人間関係を怖いと感じていて。僕自身は役者という仕事をしているので、同世代の人たちが普段どんなふうに闘いながら仕事をしているかは、正直わからない部分もあるけど、今はこういう思いを内側に抱えている人が多いんじゃないかなと。

北村 うん、すごく今っぽいよね。

共通の友人の死をきっかけに再会した〈僕〉(北村匠海)とユウスケ(中川大志)。

〈僕〉は就職したものの、上司との関係に悩み、その思いを日々SNSに書き込んでいる。

ユウスケはテレビ局に就職。毎日が楽しければそれでいいと刹那的に生きてきた。

〈僕〉は、彼の書き込みに共鳴した〈私〉(古川琴音)との距離を縮めていく。

ユウスケはある日、結婚が絶対の幸せだと信じる菜穂(松岡茉優)と出会う。

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──北村さんが演じた〈僕〉は、職場の上司から日々存在を否定され、鬱屈したその思いをSNSにアップすることで、なんとか自分を保っています。言葉数が少なく、感情がなかなか表に出ない人物ですが、どのように役作りをしましたか?

北村 セリフが少ないとはいえ、SNSに落とし込んでいた本当の言葉が、少しずつ現実にも露呈していって、ついには溢れ出す瞬間がやってくる。そういう意味では、実は劇中で一番光に向かっていくキャラクターなんですよね。どんどん人生が変わっていくので、事前の役作りというよりは、現場でいろんな感情をキャッチできるようにと意識していました。

──中川さんが演じたテレビ局員のユウスケは、毎日が楽しければそれでいいと刹那的に生きています。この役を中川さんが演じることになった背景には、「中川さんのまた違う顔が見たい」という製作陣の強い思いがあったそうですね。

中川 ユウスケは、実は頭の中でいつも「あのとき、もっと何かできたんじゃないか」と自問自答していて。後悔を抱えながら、生き方や人との関わり方に向き合い直していくキャラクターです。僕自身にとって「つい自問自答してしまうこと」ってなんなのか、自分の中にあるネガティブな感情に触れながら演じました。

──ユウスケの抱える後悔の一つが、〈僕〉と共通の友人の死でした。その出来事を機に、大学時代に親友同士だった二人は再会します。北村さんと中川さんは、子役時代から親交がありながら、本格的な共演は初めてとのこと。お互いの芝居をじっくりと目の当たりにし、どんなふうに感じましたか?

北村 大志の芝居は、言葉に芯があるなと常々思っていて。「つえーな!」と感じました。僕はかなりぼんやりしてるほうだから(笑)。考えていることも、炎が燃える熱量も同じだけど、炎の色が違うというか。役者としてのタイプは本当に別なんだなと改めて感じました。小学生のときから仲がいいのに、全然共演の機会が少なくて、むしろ同じ役を取り合うことが多かったんですけど(笑)。なんとなくその理由がわかりました。

中川 僕は、匠海は映画に愛されてるなと感じました。〈僕〉は抽象的で掴みどころのない役なんだけど、匠海は微粒子レベルのものを放ってそれを表現できるし、映画という媒体もまたそれを捉えることができる。隣に並んで芝居してて気づかなかったことも、映画館のスクリーンって拾うんだなと、完成した作品を観て感じました。

北村 言われたことある(笑)。

中川 (笑)。嬉しかったですね。やっと、20代半ばになって二人でW主演をやれたというのが。

北村 僕たちもう20代半ばなのか……。

中川 今年26歳でしょ?

北村 うん。

──青春の出口を迎え、悩みもがく若者たちの心の奥に迫った今作。お二人は子どもの頃から役者の仕事をしていますが、大人になったと実感した瞬間はありますか?

北村 『君の膵臓をたべたい』(17)が公開されたとき、僕は19歳だったんですけど、それまでは将来のことも考えてなくて、ただ芝居が好きだから続けていたんです。でも、20歳を迎え、多面的に社会を捉えられるようになり、初めて気づいたことがたくさんありました。

──視野が広くなったことで、以前はなかった疑問が生まれるようになったと。

北村 そうですね。この仕事を続けることが正解なのか不正解なのか、一旦立ち止まっちゃったんです。今も模索してるし、答えは出ていないけど、自分が心の底からワクワクできることを選んでいく。その積み重ねが「北村匠海を生きること」なのかなと思っています。

──中川さんは、年齢を重ねて見えてきたことはありますか?

中川 子どもの頃から仕事をしていると、それこそ周りが大人ばっかりで。

北村 今でも年上の人のこと、「大人」って言っちゃわない?(笑)

中川 俺らも大人なんだけどね(笑)。

北村 そう。でも「大人」って言っちゃう。それが自分でも嫌なんだよなー。

中川 前は、自分が考えてることなんて、大人たちは10歩も20歩も前に考えついてることなんだって思ってたけど、その大人たちの考えに追いついてきたんだな、と感じる瞬間があって……。

北村 親を超えるとき、みたいなことだよね。

中川 うん。そういうときに、ちょっと悩んだりしました(笑)。でも、それも経験を重ねてきたからこそだと思うし、周りの人たちにいつまでもおんぶに抱っこではいけない。これからはもっと自分の意志で行動しないといけないなと感じています。

──より責任が出てくるということでしょうか?

中川 はい。現場でも同い年とか、もっと言えば下の世代のスタッフさんも増えてきていて、転換期だなと感じるんです。だから、これまで当たり前にやってきた慣習についても、一つ一つ考えながら仕事をしていくことが大事だと思ってます。考えなくなることが、一番怖いなって。

北村 そういう話は前にも大志としたことあったけど、日本のエンタテインメントが今後どうしたらよりよくなるのか、考えたりします。それは先輩からもらったバトンだと思うし、下の世代に受け継ぐために、僕らが考えるべきことなんだろうなと。今は、そのバトンを持って走っている感覚です。

『スクロール』

学生時代に友だちだった〈僕〉とユウスケのもとに、友人の森が自殺したという報せが届く。就職はしたものの上司からすべてを否定され、「この社会で夢など見てはいけない」とSNSに思いをアップすることでなんとか自分を保っていた〈僕〉と、毎日が楽しければそれでいいと刹那的に生きてきたユウスケ。森の死をきっかけに“生きること・愛すること”を見つめ直す二人に、〈僕〉の書き込みに共鳴し特別な自分になりたいと願う〈私〉と、ユウスケとの結婚がからっぽな心を満たしてくれると信じる菜穂の時間が交錯していく。⻘春の出口に立った4人が見つけた、きらめく明日への入口とは──?

監督・脚本・編集: 清水康彦
脚本: 金沢知樹、木乃江祐希
原作: 橋爪駿輝『スクロール』(講談社文庫)
出演: 北村匠海、中川大志、松岡茉優、古川琴音、水橋研二、莉子、三河悠冴、MEGUMI、金子ノブアキ、忍成修吾、相田翔子
配給: ショウゲート

2月3日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
©橋爪駿輝/講談社 ©2023映画『スクロール』製作委員会

公式サイトはこちら

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