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『おによりつよい およめさん』【親子の読み聞かせに。今日の絵本だより 第346回】

  • 2023.1.31

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子の読み聞かせにこんな絵本はいかがですか。

『おによりつよい およめさん』 井上よう子/作 吉田尚令/絵 岩崎書店 1430円

もうすぐ、節分。 福豆や恵方巻のパッケージ、お店や町のあちこちに鬼の絵が表れる時季ですが、なかには「おに、こわい……」と不安がるお子さんもいるのではないでしょうか。 『おによりつよい およめさん』は、そんな恐怖がちょっとやわらぐ(かもしれない)物語です。

山奥の小屋にひとりで住んでいる大きなおには、とんでもない乱暴者。 気が向くとあちこちの村に降りては、畑の大根をひっこぬいたり、田んぼをけちらしたり、大暴れ。 ある晩、ひとり酒を飲みながら退屈していたおには、ひらめきました。 「そうだ、よめを もらうべ!」 およめさんをもらって、毎日の飯炊きをさせようという算段です。 そして、夜明けとともにふもとの村にかけおりて、 「よめを もらいに きたぞ。 むらいちばんの おなごを よこせ」 そうしないと村じゅう叩き壊すと息巻くおにに、青くなって相談する村人たち。 その中から 「そんなら、おらが よめに なる」 と前に出たのは、とらという体の大きな娘でした。

「むらいちばんの おなご」というにはいかつい風貌のとらに、おにが首をひねると、とらはすまして 「うでっぷしなら むらいちばん」 とうなずきます。 山の暮らしにはこれくらい頑丈なおなごでもいいかと、おにはとらを小屋に連れ帰り、早速あれこれ家の用事をいいつけると、とらは 「ちからしごとなら だれにも まけねえけど……。 めしたきは じぶんで やってくれ」。 かっと来たおにが、とらにつかみかかると……。

タイトル通り「おによりつよいおよめさん」の強さが炸裂する、痛快なお話。 でも、笑えてすっきりするだけではありません。 後からじんわりしみてくる温かさが、いつまでも心に、ほかほかと。 そして改めて、表紙のおにの表情の意味に気づきます。 ほほえましいラストも、とても今どき。 懐かしくて新しい創作民話です。

選書・文 原陽子さん はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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