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アカデミー主演女優賞の候補に「サプライズ選出された俳優」をめぐってひと波乱、“ルール違反”の有無を検証へ

  • 2023.1.30

第95回アカデミー賞の主演女優賞に『To Leslie(原題)』のアンドレア・ライズボローが“サプライズ選出”されたことを受けて、同アワードを主催する映画芸術科学アカデミーが売り込み活動の際にルール違反がなかったか検証することを発表した。(フロントロウ編集部)

アカデミー賞のサプライズ選出をめぐってルール違反がなかったか検証

先日、映画界で最も栄誉ある賞と言われるアカデミー賞のノミネーションが発表され、主演女優賞にケイト・ブランシェット(『TAR/ター』)、アナ・デ・アルマス(『ブロンド』)、ミシェル・ウィリアムズ(『フェイブルマンズ』)、ミシェル・ヨー(『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』)と並んで、『To Leslie(原題)』のアンドレア・ライズボローが“サプライズ選出”された。

画像: アカデミー賞のサプライズ選出をめぐってルール違反がなかったか検証

今、そのアンドレアの選出をめぐってひと波乱起きている。他の主要な映画アワードとアカデミー賞のノミネーションは必ずしも一致するわけではないが、5人のなかでアンドレアだけがアカデミー賞の前哨戦と言われるゴールデン・グローブ賞や英国アカデミー賞(BAFTA)にノミネートされていないことから、多くの人にとって彼女がオスカー候補になったことは“予想外”であった。

じつは、アンドレアがサプライズ選出された背景には、俳優仲間を巻き込んだ巧妙な“口コミ”キャンペーンがあった。VarietyやThe Hollywood Reporterといったアメリカの大手メディアによると、アンドレアと『To Leslie』のマイケル・モリス監督らはアカデミー賞にノミネートされるために、投票期間中にスタジオの後ろ盾なしにキャンペーン(売り込み活動)を行ない、その結果、グウィネス・パルトロウやケイト・ウィンスレット、エドワード・ノートン、シャーリーズ・セロン、ジェニファー・アニストン、さらに彼女と一緒にアカデミー主演女優賞にノミネートされたケイト・ブランシェットといった著名人がSNSなどを通じて彼女の演技をこぞって称賛し、宣伝にひと役買ったという。

画像: 左からグウィネス・パルトロウ、ケイト・ウィンスレット、ケイト・ブランシェット。
左からグウィネス・パルトロウ、ケイト・ウィンスレット、ケイト・ブランシェット。

投票権を持つアカデミー会員に映画の良さをアピールをして見てもらうのは悪いことではないが、アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは、選考対象となる映画を宣伝するために、規則の範囲外の方法でアカデミー会員に直接連絡することを原則禁止している。『To Leslie』に対しては、アカデミー会員に映画を見るよう何度も電話やメールを送るといった「アグレッシブな戦術」を用いたという声もあることから、映画芸術科学アカデミーは、売り込み活動にルール違反がなかったか検証することを明らかにした。

以下、映画芸術科学アカデミーの声明の全訳。

「賞のコンペティションが公正かつ倫理的な方法で行われるようにすることがアカデミーの目標であり、私たちは包括的な賞のプロセスを確保することに尽力しています。今年の候補者をめぐるキャンペーンの手順を見直し、ガイドラインに違反していないことを確認すると同時に、ソーシャルメディアやデジタルコミュニケーションの新時代に、ガイドラインの変更が必要であるかどうか判断するために、検証を進めているところです。私たちは、ノミネーションと投票手続きの完全性に信頼を置き、優れたパフォーマンスを実現するための真の草の根キャンペーンを支援します」

アンドレアのノミネートが「取り消し」になる可能性は?

ちなみに、もしアンドレアが行なった草の根活動が、投票のためのロビー活動を禁じる既存のルールに違反していると判断された場合、ノミネートが「取り消し」になることはあるのだろうか?

ルール違反で映画やアーティストが失格になったのは、アカデミー賞の95年間の歴史でたった9回。たとえば2014年、当時アカデミー音楽部門の執行委員だったブルース・ブロートンは、『Alone Yet Not Alone(原題)』の挿入歌「Alone, Yet Not Alone」でアカデミー歌曲賞にノミネートされたが、自身の立場を利用して投票を働きかけていたことが発覚しノミネートが取り消された。

画像: アンドレアのノミネートが「取り消し」になる可能性は?

問題は、アンドレアの俳優仲間たちのサポートが、アカデミーが禁止しているロビー活動にあたるかどうかだが、今のところアンドレアが規則に違反したという決定的な証拠はないことから、Varietyはノミネートが取り消される可能性はゼロではないが極めて低いとの見解を示している。

ただし、Varietyはアンドレアたちが“抜け道”を利用したことは否めないとも指摘しており、「アカデミー会員9,579人のうち218人の票を獲得すればノミネートを確保することができる」という事実に着目したのではないかと推測。もし何もしなければ、次の授賞式シーズンには、多くの著名なスタジオや戦略家が同じ戦術を実行することが考えられるため、主催者が“抜け道”をふさぐために、今後、独自のルールをいくつか明確化することもあるかもしれないと予想している。

アンドレアの処遇についてアカデミー賞の主催団体が新たに声明を発表

現地時間1月31日に行われたアカデミー理事会の結果、アンドレアは主演女優賞のノミネートを維持し、キャンペーン戦術については今後対応することが決定された。

以下、アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーのCEOビル・クレイマー氏のコメントの全訳。

「先週、『To Leslie』の売り込み活動に関する懸念が表面化したため、アカデミーは本作のキャンペーン戦術について検討を開始しました。アカデミーは、問題の活動は、この映画のノミネーションを取り消すべきレベルには達していないと判断しています。しかし、ソーシャルメディアやアウトリーチ活動において、懸念されるやり方も見つかりました。これらの戦術は責任者に直接対処しています。アカデミーのキャンペーン規定の目的は、公正で倫理的な授賞プロセスを確保することであり、これらはアカデミーの中核的価値観です。今回の見直しにより、尊重し合い、包括的で公平なキャンペーンを行うためのより良い枠組みを作るために、規定の構成要素を明確にする必要があることが明らかになりました。これらの変更は、今回の受賞サイクルのあとに行われ、会員の皆様と共有される予定です。 アカデミーは、対象となる映画や業績の芸術的・技術的な長所のみに基づいて投票が行われるような環境を作ることに努めています」

(フロントロウ編集部)

※この記事は2023年1月30日に公開された記事に加筆して再掲載したものです。

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