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藤崎忍さん、まさかのドムドム社長就任に椅子から転げ落ちそうになった

  • 2023.1.30

39歳で渋谷109のアパレルショップに人生初の就職をした藤崎忍さんは、居酒屋2店舗の経営などを経て、51歳でドムドムハンバーガーに入社。わずか9か月後に社長に就任しました。赤字だった同社を黒字に転換させた藤崎さんに、年齢にとらわれがちな“後輩”に向けたメッセージをいただきました。

“先”にあった会社員という選択

──居酒屋経営の後、2017年に51歳でドムドムハンバーガーにヘッドハンティングされました。

藤崎: 経営していた居酒屋の常連さんに、ドムドムハンバーガーの親会社の役員にあたる方がいらして。私の店の味を気に入ってくださり、「ドムドムハンバーガーの事業再生を試みるから、商品開発をお願いできないか」と声をかけていただきました。当初は顧問契約を結んでのお仕事でしたが、数か月後に正社員にならないかとお誘いを受けて。当時私は51歳でした。

49歳で夫を亡くし、つらさはありましたが介護を終え、息子が社会人になっていたこともあってチャレンジすることを決めました。

──2017年の入社後は店長を務め、翌年には16店舗を統括するスーパーバイザーの職に就かれます。

藤崎: スーパーバイザーになって初めての決算で、赤字額の大きさに驚いたのと同時に、会議で意見を言えるようなポジションにいないことが判明しました。「再生のため」に入社したはずなのに……と思い、ドムドムに誘ってくださった方に電話やメールで「私を役員にしてください」と直談判したんですよ。返事は、「無理無理。あなた、何の結果も出してないんだから」って。そりゃそうですよね(笑)。

でも、諦めませんでした。うまくいっていた居酒屋の経営を109時代の仲間に託して、この世界に飛び込んだときに、「新しい職場でがんばって」と何度も送別会を開いてもらいました。このままでは、居酒屋を委ねた人や快く送り出してくれたお客様に申し訳が立たない、絶対にやりきってみせると思いましたね。

朝日新聞telling,(テリング)

一転、社長への大抜擢

──藤崎さんの熱意が伝わったのでしょうか。入社9か月にして代表取締役社長になります。予想していましたか。

藤崎: 役員になりたいとは言っていましたが、まさか社長だとは思わず、びっくりして椅子から転げ落ちそうになりました(笑)。

私が当時、「役員にしてください」とお願いする中で、訴えていた内容は、いま思えば飲食業界においては当たり前のことで、稚拙だったと思います。新しいアイデアがあったわけでもありません。だから、何度も夢を語った熱意を買っていただけたのかなと思っています。

左から「お好み焼きバーガー」、「ビックドム」、「ザクザクかき揚げバーガー」

──社長就任後は、カニ一杯をそのまま大胆にバンズで挟んだ「丸ごと!!カニバーガー」を登場させたり、アパレルブランド「ビームス」とコラボしたグッズ販売だったりと積極的な戦略を取られています。独自のバーガーはインスタなどで「映える」といった声も。

藤崎: 「おいしくて楽しい」を目指して、社員と一緒に日々、取り組んでいます。映えても、おいしくなかったら信頼されませんし、人が想像もできないようなことをやってこそ楽しさをもたらします。味も見た目も、ドムドムらしさを追求しています。

──2021年には初の黒字化に成功されました。ここに至るまでに新商品が売れなかったらとか、業績が上向かなかったらといった不安はありませんでしたか。

藤崎: なかったんですよ。目の前のことを一生懸命やって、もし売れなかったらそれはそれとして次に行けばいいと。

私は「課題」とか「失敗」という捉え方をしていません。100個売りたかったものが80個しか売れなかったら失敗と捉える人もいるかもしれませんが、どうすれば120個売れたかについて考える方が前向きだと思っています。

達成できないことを課題だと捉え、その課題に対して行動を起こして結果が伴わなかった場合は、普通は失敗とされてしまう。ただ、それを失敗と定義し始めたら、社員はマイナスな思考になるじゃないですか。だから私は「課題も失敗もない」と公言しています。ただ、目標に対して実行するだけだと。

朝日新聞telling,(テリング)

悩みも、できないこともあっていい

──30歳を前に結婚やキャリアについて焦ることを「29歳問題」、仕事・結婚・育児など人生の選択において、最終的な岐路に立っているのではないかと焦ったり悩んだりすることは「39歳問題」と言われます。

藤崎: 年を重ねることへの恐怖心は、私も持っています。いま56歳で、いつまで走り続けられるだろうかと不安に思うこともあります。どの年代の人でも、みんな心の中で闘っているのではないでしょうか。悩むのは自然なことだと思いますし、悩んじゃいけないなんてことはない。

「岐路」に立っているということは、もうひとつの道が拓けるということでもあります。チャンスかもしれないですし、進んだ結果ダメであっても。また戻って再チャレンジすればいいんですよ。

──自分で決めたことを認める、ということ?

藤崎: 俯瞰して冷静に自分を見つめるのはいいことですが、「こういうところがよくない」と自身にダメ出しをして、可能性を遮断しないでほしいです。たとえば、好きな人ならダメなところがあっても目をつぶることがある。それと同じで自分のダメな点に対して甘くていい。

「嫌な顔を人に見せてしまっても、私の感情の一部だから許そう」とか「できないことがあったら、できることで一生懸命がんばろう」とか……。嫌いになることをやめて、自身を労りながら、自身を導いてあげたらいいと思います。

■長谷川佳織のプロフィール
編集・ライター。ヘルスケア、ライフスタイル、キャリア系媒体などを経て、ウェブ編集者歴は10数年。現在は、ビューティや女性の健康にまつわるテーマを中心に取材・執筆。「心も体もすこやかに」をモットーに、日々アンテナを張っています。

■岡田晃奈のプロフィール
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。

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