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「年利20%で貯蓄するのと同じ効果」お金のプロがiDeCoはすぐにでも始めたほうがいいと言い切る理由

  • 2023.1.28

iDeCoとNISAが同列で語られることが多い。経済コラムニストの大江英樹さんは「どちらが得なのかという質問をよく受けますが、まったく目的が異なる制度ですから、比較することはできません。ただ、iDeCoは投資の勉強をしていない人でも始められます。使わない手はありません」という――。

idecoとお金
※写真はイメージです
セミナーで寄せられる意外な質問

前回、2024年から始まる新しいNISAについてお話をしました。私は普段から各地でセミナーや講演をしているので、しばしば資産形成に対する質問をいただくこともあるのですが、最近よく受ける質問に「iDeCoとNISA、どちらが良いですか?」とか「どちらから始めるべきですか?」というのがあります。実を言うと、これはあまり意味のない質問なのです。そもそも全く目的の異なる制度ですから、一概に比較することはできません。

さらにひどいのになると「iDeCo、NISA、ふるさと納税、どれが一番お得ですか?」みたいな質問もあります。そういうことを聞きたくなる気持ちはわからないではないですが、さすがにそれはちょっとひどすぎる質問です(笑)。iDeCoは「老後のための資産作り」、NISAは「効率的な資産運用を支援する制度」、そしてふるさと納税は「地域応援のための寄付」ですから、いずれも比較の対象にはなりません。まあ、ふるさと納税と比べるのは論外だとしてもiDeCoとNISAについては、少し仕組みに対する誤解もあって、「どちらがお得?」みたいな質問は多いので、この違いと利用法についてお話をしてみたいと思います。

iDeCoは老後資産形成制度であって投資優遇制度ではない

まずiDeCoは正式名称を「個人型確定拠出年金」と言います。名前の示す通り、これは年金なのです。「年金」と言えば一般的には厚生年金や国民年金といった公的な年金制度が頭に浮かびます。それは最も基本となる年金ですから当然です。ただ国の年金制度の本質は保険であって、貯蓄や資産形成ではありません。これに対して私的年金制度である企業年金やiDeCoなどは、その目的が老後の生活を支えるためである点は公的年金と同じですが、仕組みは保険ではなく、貯蓄や投資を使った資産形成の方法です。

老後のために自助努力で資産形成をおこなうための制度ですから税制優遇が与えられているわけです。よくiDeCoは60歳まで引き出せないのがデメリットだという人もいますが、それは制度の本質をあまりよく理解していない人です。むしろ60歳まで引き出せないのは最大のメリットなのです。なぜならお金の使い途は色々で、人によって何に使うかは異なりますが、老後資金だけは誰にとっても必ず必要となります。歳を取らない人は1人もおらず、誰もがいずれは働けなくなります。その時に備えるための老後資金は必ず必要だからです。一般的に人は目の前にお金があるとどうしても使ってしまいます。60歳まではいかなる理由があっても引き出せない仕組みになっているからこそ、老後の資産形成ができると考えるべきでしょう。

年利20%で貯蓄するのと同じ効果

iDeCoの税制優遇は運用益非課税ということもありますが、それ以上に大きいのは掛金が全額所得控除になることです。したがって、仮に所得税の税率が10%、住民税の税率が10%だとすると合計掛金の20%が年末調整とか確定申告で戻ってきます。これは非常に大きなメリットです。

iDeCoは投資のための制度というだけではありません。投資がよくわからないとか不安だというのであれば、定期預金で運用しても良いのです。現在では定期預金の金利はほぼゼロに近いものの、所得控除で掛金の20%が戻ってくるのであれば、年利20%で貯蓄しているのと同じことになります。これも制度が年金だからこその優遇策で、この所得控除はNISAにはありません。

NISA口座開設説明書
※写真はイメージです
NISAは投資利益に対する税制優遇制度

したがって、iDeCoは必ずしも投資のための制度というわけではなく、あくまでも老後資金を作るための制度であるのに対して、NISAは全く目的が違います。NISAの正式名称が「少額投資非課税制度」ということからもわかるように、これは投資した結果得られた利益に対する税制優遇の制度ですから、iDeCoとは異なり、投資をしなければ適用されません。

投資の目的はさまざまで、もちろん老後資金作りのためでもあるでしょうが、それだけではなく人によって色んな目的があると思います。ただ、前回もお話しましたが、NISAという制度を作った大きな目的は中間所得層の資産形成を支援することにあります。だからこそ資産所得倍増プランにおいて、最も注力されたのがNISAの恒久化であり制度の大幅拡充であったわけです。

iDeCoと違ってNISAでは預金を利用することはできません。あくまでも投資信託や株式のみが対象となります(つみたてNISAでは株式は利用できません)。したがって、ある程度の知識を持っておく必要はあります。とにかくお得だから始めようとばかりに何も勉強せずに積立投資を始めるというのはあまり感心しません。最低限の知識は身に付けた上で始めるべきだと思います。

iDeCoはすぐにでも

では、それぞれの制度はどのように使い、どんな点に注意すべきかをまとめてみましょう。私は、iDeCoはできるだけ早い時期からすぐ始めるべきだと思います。資産形成というのは期間が長ければ長いほど有利になります。収益の変動が平準化されますし、複利効果は長期になるほど大きいからです。それに前述した通り、投資がよくわからないのであれば、まずは定期預金から始めても良いのです。

お金が増えていくグラフ
※写真はイメージです

本来は長期の資産運用であれば投資を活用する方が良いでしょうが、わからないまま投資をするというのはあまり良いことではありません。それでもまず始めるのであれば、定期預金からスタートし、積み立てていくうちに少しずつ投資の勉強もすれば良いと思います。定期預金でも所得控除で一定の利益を得ることはできます。だからこそすぐ始めるべきなのです。

ただ、注意すべき点があります。それは自分が利用できる限度額一杯やるかどうかは慎重に考えた方がいいということです。所得控除があるのだから、目一杯やった方が良いと思われるかもしれませんが、iDeCoは60歳まで引き出せません。これは資産形成にとっては大きなメリットではあるものの、積み立てたお金は途中でおろすことができないわけですから、自分の資産の大部分をiDeCoに注ぎ込むというのはしない方が良いと思います。余裕があれば限度額一杯やるのは良いでしょうが、そうでなければ、まずは最低限の月5000円からでも始めるのが良いでしょう。

来年から使い勝手がよくなるNISA

一方、NISAはあくまでも投資をして利益が出た場合にかかる税金が無くなるという制度ですから、投資をして積極的に資産形成した人であれば、出来る範囲でなるべく多く投資をした方が良いと思います。特に来年(2024年)からは従来に比べて枠も拡大しますし、使い勝手も良くなりますので、長期の資産形成を考えるのであれば、これは積極的に利用しない手はありません。

ただ、NISAにも注意しておくべき点があります。それは以下の2つです。

NISAの注意点2つ
1.株式などの短期売買には向かない

確かにNISAは利益が出ても税金がかからないというメリットは大きいのですが、逆に損をした場合はどうなるでしょう。通常、有価証券の売買損は他の有価証券の利益と相殺することができます。他に儲かっている株式等があれば、今回損をした分をその儲けから引くことができる、いわゆる「損益通算」という制度ですが、NISAの場合はそれができません。

短期で売買すると株価が下がった場合、早い時期に見切りをつけた方が良いこともしばしばありますが、その場合はまるまる損失として計上されますので、不利です。したがって株式等の短期売買には向かないと考えた方が良いでしょう。

2.少しでも勉強してから始めること

これも重要なことです。最近は「簡単、お気楽」とばかりに安易に投資を勧める風潮がありますが、投資は決して甘いものではありません。特に長期投資の場合、途中で何度も暴落を経験します。価格が上下するメカニズムや、例え投資信託であったとしても自分がどういう種類のものに投資しているのかをきちんと理解しておくことが欠かせません。

このようにiDeCoとNISAは似ている部分はあるものの、そもそも全く異なる制度ですから利用方法や留意点なども異なります。その辺を誤解し、混同しないようにすることが大切です。それぞれの資金の性格や目的に合った利用法をしていただきたいと思います。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。

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