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【解説】ジャスティンの全曲「260億円」は高い?安い? 楽曲著作権の売却をしたワケ

  • 2023.1.26
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ジャスティン・ビーバーが2021年12月31日までにリリースした約290曲の著作権を2億ドルで売却したことが話題になっている。ミュージシャンたちが近年、積極的に著作権を売却している背景とは? ジャスティン以上に高額で著作権を売却したミュージシャンたちも。(フロントロウ編集部)

※記事中の日本円換算はすべて2023年1月26日時点の為替レートで計算しています。

ジャスティン・ビーバーが楽曲の著作権を約260億円で売却

ジャスティン・ビーバーが楽曲の著作権を2億ドル(約258億円)で売却したことが話題になっている。

画像: ジャスティン・ビーバーが楽曲の著作権を約260億円で売却

ジャスティンが売却したのは、デビューアルバム『マイ・ワールド』から最新アルバム『ジャスティス』までの6枚のスタジオアルバムを含む、2021年12月31日までにリリースされた全291曲で、米投資会社Blackstoneが出資する英Hipgnosis Songs Capitalがそれらの楽曲の音楽出版権や、原盤権から生じるロイヤリティ、著作隣接権を2億ドルで買収した。

28歳のジャスティンが、これまでのキャリアでリリースしてきた楽曲のほとんどの権利を売却したことを驚きを持って受け止めたファンは多いと思うが、実はアーティストが楽曲の著作権を売却するという動きは、ここ何年かで急速に増えてきている。

大物アーティストたちが楽曲の著作権を売却している

ジャスティンの楽曲につけられた約260億円という価格も極めて高額なものだが、近年、売却された他のアーティストの楽曲の著作権にはそれ以上に高額な値がつけられたものも。

画像1: 大物アーティストたちが楽曲の著作権を売却している

例えば、“ボス”という愛称で知られるアメリカの国民的シンガーであるブルース・スプリングスティーンが楽曲の著作権などを2021年に米ソニー・ミュージック・エンターテイメントに売却した際には、5億5,000ドル(約712億円)の値段で売却されたと報じられており、米New York Timesはこの取引について「1人のアーティストの作品をめぐる史上最大の取引かもしれない」と評している。

他にも、2020年にはボブ・ディランが600曲以上の楽曲の権利を米ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング・グループに3億ドル(約338億円)〜4億ドル(約518億円)の値で売却したほか、2021年にはサイモン&ガーファンクルのポール・サイモンが自身の全楽曲の権利を米ソニー・ミュージック・エンターテイメントに2億5,000万ドル(約323億円)で売却したと報じられた。より若い世代のアーティストたちについても、ジャスティン・ティンバーレイクが2022年5月にジャスティン・ビーバーと同じ英Hipgnosis Songs Capitalに1億ドル(約129億円)で、具体的な金額は定かでないもののシャキーラも2021年1月に同じく英Hipgnosis Songs Capitalに数億ドルで著作権を売却したと報じられた。

画像2: 大物アーティストたちが楽曲の著作権を売却している

楽曲の著作権を買収することで、企業は楽曲から生じるロイヤリティなどを得られるというメリットがあり、アーティストとしても、一度に大金が手に入るという分かりやすいメリットがあるが、アーティストたちが次々に著作権を売却している背景には、様々な理由が考えられる。

著作権を売却するアーティストが増えている背景

アーティストたちが最近になってこぞって著作権の売却を始めた背景には、とりわけアメリカにおいてはまず大きな理由の1つとして税対策という側面がある。米モルガン・スタンレーは次のように解説している。「楽曲の権利を売却することで得られる利益はキャピタル・ゲイン(資産などの売却で得られる収益)として扱われ、つまり、その収益に対して課せられる税率は最高で20%です。一方、ロイヤリティは経常利益として扱われるため、収入に応じて最高で37%の税率が課せられるのです」。

人気ミュージシャンの多くは高額所得者であるため、経常利益に最高の37%という税率が課される人たちばかり。要するに、楽曲が再生されたり利用されたりするたびにロイヤリティから37%を税金として納めるよりは、一度に売却して20%を税金として納めるほうが安く済むということ。ジャスティン・ビーバーのケースで考えれば、今回の2億ドルという売却で課される税金は20%の4,000万ドル(約51億円)だが、仮にロイヤリティとして2億ドルを稼いでいたとすれば、課される税金は37%の7,400万ドル(約95億円)。同じだけ稼ぐことを見込めば、一度に売却することで3,400万ドル(約44億円)の節税ができるという計算になる。

画像: 著作権を売却するアーティストが増えている背景

加えて、ここ数年はパンデミックによってツアーができないアーティストが多く、大きな収入源がなくなってしまったことも売却の背景にあるという。

また、比較的高齢に差し掛かっているアーティストにとっては、著作権を現金に換えることで、自分が亡くなった時に子どもや家族が相続しやすくなるという側面もあるという。ピンク・フロイドのドラマーであるニック・メイスンは米Loudwireに次のように語っている。「亡くなるということを考えれば、カタログを売ることで、多くの点で資産を扱いやすくなるという可能性があります。最終的には私も子どもたちにお金を残してあげたいと思っています。(お金にして残してあげたほうが)カタログの扱い方をめぐって20人が口論するよりも、はるかに簡単なのです」。

ジャスティン・ビーバーの291曲につけられた260億円という値段は高い?安い?

今回、ジャスティンの291曲の著作権につけられたのは2億ドルという値段。この値段が高いのか安いのか、すぐにはピンと来ないかもしれないが、この値段はまだ14年ほどしかキャリアのない現在28歳のアーティストの楽曲につけられる値段としては“破格”だと評価されている。

画像: ジャスティン・ビーバーの291曲につけられた260億円という値段は高い?安い?

今回ジャスティンの著作権を買収した英Hipgnosis Songs Capitalの創始者であるMerck Mercuriadis氏は声明で次のように述べている。「ジャスティン・ビーバーがこの14年間に世界のカルチャーに与えた影響は実に目を見張るものでした。音楽業界全体を活性化させ、世界中にいる忠実なファンと共に、10代での衝撃的な活躍を経て文化的にも重要なアーティストにまで上りつめた彼は、弱冠28歳にして、このストリーミング時代における数少ない絶対的なアーティストの1人となりました。今回の買収は、70歳以下のアーティストとなされた取引としては最も大きなものに数えられます。スポティファイだけで月間に8,200万人近いリスナーを持ち、300億回もストリーミングされているというのはとてつもない力です」。

今後、ジャスティンの楽曲の著作権を所有するのは英Hipgnosis Songs Capitalだが、これからも原盤権は米ユニバーサル・ミュージック・グループが所有し、管理まで担当する。もちろん、2021年までの楽曲の権利を売却したということでジャスティンが音楽の道から別れを告げたわけではなく、マネージャーのスクーター・ブラウンは今回の取引に際して「ジャスティンの偉大さはまだ始まったばかりです」とコメントしている。(フロントロウ編集部)

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