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内装に歴史を秘めたル・シラノは、気軽でおいしいビストロ。

  • 2023.1.26
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一見普通のビストロのような外観だが、店内で待つのはアールヌーヴォーのゴールドのモザイク。photos:Mariko Omura

クリッシー広場から徒歩5分の場所に位置する、ジャック・ガルシアが内装を手がけ2015年にオープンした5ツ星ホテル「Maison Souquet」は、ベルエポック時代は娼館だった。また広場から徒歩8分の場所にある18世紀の建築が壮麗なナイト・クラブの「Le Carmen」もかつての娼館。そしてここに紹介する広場から1分のビストロ「Le Cyrano(ル・シラノ)」も、20世紀前半はアンドレ・ブルトン、サルバドール・ダリといったシュルレアリストたちがたむろしたバーだったという歴史があるが、その前、1914年まで娼館だったのだ。レストランの壁に掛けられた大きな鏡の周囲にはゴールドのモザイクが施されて、といった広場の雑踏とは似合わないアールヌーヴォー調の内装がその名残である。娼館時代は小部屋が並ぶ上のフロアに続く階段が店の奥にあったそうだ。

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名作『シラノ・ド・ベルジュラック』からいくつかのシーンが壁の装飾に見られる。photos:@pierre Lucet Penato

おいしいワインとクオリティの高い素材を使った料理を愛する4名の仲間たちが、この場所を気に入って現在のオーナーとなった。若き女性シェフのシャルレインヌ・ヴァレは現代的なひねりを利かせたオーセンティックなビストロ料理で、食べる人たちに口福をもたらしている。パリ市内のいくつかの店ですでに経験のある彼女だが、料理は独学だそうだ。祖母のニータの料理がインスピレーション源という彼女のカラフルで創造性に富んだ味わい豊かな料理、そして選び抜かれた手頃な価格のワインを求め、客たちはこの店に通うことを喜びにしている。

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ある週のランチメニュー。左: ニシンとジャガイモというビストロの定番前菜をシェフは軽やかなビジュアルと味わいで提案。中: メイン。手前はビストロ定番料理のブッフ・ブルギニョン。肉の下にはサツマイモのローストが隠れ、肉の上に飾られたマスタードシードが食感と辛味を添えている。後方はリウ・ノワールのグラブラックスのタイ風にカボチャのピュレ添え。右: デザート。手前は黒ゴマのフラン、後方はチーズのフォンテーヌブローに柿のロースト添え。photos:Mariko Omura

ル・シラノは朝食、ランチ、おやつ、ディナーが楽しめるビストロ。朝食にはクロテッド・クリーム添えのスコーン、タルティーヌ……。バターもジャムも厳選の味だ。ランチは前菜とメインあるいはメインとデザートで18ユーロ(カウンター16.5ユーロ)、前菜とメインとデザートでも22ユーロ(カウンター20ユーロ)というが信じられない内容とおいしさで、満ち足りた気持ちが得られる。メイン一品でもOKで、テーブル席なら14ユーロ、カウンターなら12.50ユーロというお財布に優しい価格だ。ディナーは複数でシェアして味わう料理を用意し、食事とワインを楽しめる時間を約束。ランチもディナーも魚、肉、野菜料理のチョイスが用意されている。ゆっくりと食事をとる時間がない人には、サンドイッチがおすすめだ。ティエリー・ブルトンのパン屋のバンズにウフ・ミモザとジャンボン・ド・パリ、あるいは、スモークのリコッタチーズとシェフ特製のカポナータという2種(各8.5ユーロ)。イートインもできるし、テイクアウトもOKだ。食事時間に行くことができなければ、キャロットケーキなどのホームメイドのスイーツでのティータイムを目指してゆくのもよいだろう。どのタイミングで行っても、わざわざクリッシー広場まで足を運んだ甲斐あり!と、ル・シラノを後にする時に思えるはずだ。

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左・中: ノンストップ営業のル・シラノ。朝食やティータイム、サンドイッチのテイクアウト……おいしい店だから上手に活用したい。右: イートインもテイクアウトもできるティエリー・ブルトンのパンを使ったサンドイッチ( 8.50ユーロ)。photos:@pierre Lucet Penato

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左: 陶芸家Marie Moがシャルレインヌのカラフルな料理と場所に合ううつわを特製した。中: ワインバー的にふたり、あるいは大勢で。グラスワインは4.5ユーロ〜。右: シェフのシャルレインヌ・ヴァレ。photos:@pierre Lucet Penato

Le Cyrano3, rue Biot75017 Paris営)9:00〜翌2:00(月〜金)10:00〜翌2:00(土、日)※ ランチ12:00~14:30、ディナー19:00~23:30無休Instagram: @lecyranoparis

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