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【解説】M&M'Sのキャラが「無期限の活動休止」へ、その理由がイマドキのアメリカすぎた

  • 2023.1.24
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米企業マース インコーポレイテッドがM&M'Sのアイコニックなキャラクターであるスポークスキャンディの使用を無期限で停止することを発表。その背景には、カルチャー・ウォーというアメリカが抱える問題があった。経緯を解説。(フロントロウ編集部)

M&M'Sがスポークスキャンディの使用を無期限で休止することを発表

アメリカの大手食品会社であるマース インコーポレイテッドが現地時間1月23日、M&M'Sのアイコニックなキャラクターである「スポークスキャンディ」の使用を「無期限で休止」することを発表した。

画像1: @M&M'S/Twitter

「M&M'Sからのメッセージ」と銘打たれた声明のなかで、マース社は次のように綴っている。「アメリカ、話し合いましょう。昨年、私たちは愛すべきスポークスキャンディたちにいくつかの変化を加えました。私たちとしては、それに気づく人がいるか分かりませんでした。だからこそ、それがインターネットを壊すことになるなんて思ってもいなかったことは言うまでもありません。しかし、今は理解することができます。キャンディが履く靴ですら世論を二分しかねないということを。そしてそれは、人々を一つにすることだけを望んでいるM&M'Sとしては最も望んでいないことでした。従って、私たちはスポークスキャンディたちの活動を無期限に休止することを決めました」。

今回、キャンディたちに代わって新たにM&M'Sの宣伝を担当するスポークスパーソンも発表されており、米人気テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』への出演や映画『魔法にかけられて2』などで知られる俳優のマーヤ・ルドルフが、“Chief of Fun(チーフ・オブ・ファン/楽しさの責任者)”に就任することが併せて発表された。

画像2: @M&M'S/Twitter

マース社は「彼らのポジションに就任する、アメリカが同意してくれるであろうスポークスパーソンを誇りを持って紹介します。愛すべきマーヤ・ルドルフです。ミズ・ルドルフであれば、誰もが居場所を感じることのできる世界を創り出せる楽しい力を持っていると、私たちは自信を持っています」と声明に綴って、今後はマーヤがM&M'Sのスポークスパーソンを務めることを明らかにした。

女性キャンディの靴が世論を二分した経緯

今アメリカでは、2大政党である共和党(保守派)と民主党(進歩派)の支持者の溝が過去にないほど深まっており、なんでもカルチャー・ウォーに発展してしまっている。カルチャー・ウォーとは、保守主義と進歩主義の価値観がぶつかり合い争いが起こる文化戦争のこと。例えば最近では、健康被害を減らすためにガスストーブからIHヒーターに移行したらどうか、というテーマさえ保守と進歩派を二分するカルチャー・ウォーになってしまっている。

そして、そんなカルチャー・ウォーの真っただ中にいるのがマーズ社のM&M’sのキャラクターたち。

画像1: 女性キャンディの靴が世論を二分した経緯

元々は、1990年代に初めて登場したスポークスキャンディ。当時は、レッドとブルー、イエローという男性キャラクターと、グリーンという唯一の女性キャラクターというラインナップがあった。男性キャラが3種いるなか女性キャラが1人であることと、唯一の女性キャラが女性のステレオタイプを具現化したような性格とルックスだったことには、以前から変更を求める指摘があった。

その後、2012年になってラインナップにもう1人の女性キャラクターとなるブラウンが追加。さらに、昨年1月にはグリーンもそのデザインを見直されて、靴がヒールつきのロングブーツからスニーカーに変わったほか、ブラウンもハイヒールからローカットのヒールへと履く靴が変わった。

「靴が世論を二分」という文章が指しているのはこの時のこと。多様性を求める進歩派からはこの決断が歓迎された一方、グリーンやブラウンの靴が変わったことが保守派の怒りを買うことに。米保守派メディアのFOX Newsの人気司会者で、ワクチンに関する不誠実な情報を語り続けて強く批判を浴びているタッカー・カールソンは、「M&M'Sはすべてのカートゥーン・キャラクターが非常に魅力的ではなく、完全にアンドロジナス(※俗に言われる男らしさや女らしさに当てはまらない特徴のこと)であるまで満足しない」と激怒し、「完全に魅力を感じなくなったとき、私たちは(男女)平等を達成するのです」とコメント。カールソン氏は普段、差別や偏見に声を挙げる人に対して“snowflake(※過度に気分を害しやすいという意味のスラング。蔑称)”と呼んでいるが、この時はカールソン氏が「靴ごときに怒ってsnowflakeだな」と失笑を浴びた。

画像2: 女性キャンディの靴が世論を二分した経緯

さらに、2022年9月には、「受容と包括性をレプリゼンテーション」する新たな女性キャラクターとして、パープルもラインナップに追加。今年に入ってからは、3月8日の国際女性デーに向けて、グリーン、ブラウン、パープルという3人の女性キャラクターからなる、史上初の“女性キャラクターのみを起用したパッケージ”が販売されることも発表された。

これは、現状を打破しているあらゆる女性たちを祝福する目的で作られたもので、購入することで寄付することもできるという取り組み。この限定パッケージ商品は売上1個につき1ドル、合計50万ドル(約6,500万円)が、音楽界での女性の活躍を支援している団体She Is The MusicとWe Are Moving the Needleとの戦略的パートナーシップを通じて、女性支援に役立てられる予定だという。マース社ではそれに加え、総額30万ドル(約4,000万円)を、Female Founder CollectiveとGeena Davis Institute On Gender In Mediaと、現状を打破している女性たちに寄付するという。

M&M'Sを買うごとに社会貢献ができるという取り組みになっているのだが、保守派からはこの取り組みにも批判が。靴が変わった際に“セクシーなままがよかった”と批判したタッカー・カールソンは、国際女性デーに向けたパッケージについて「ウォーク」だと批判。。保守派のテレビ局FOXではコメンテーターをスタジオに呼び議論が繰り返され、『Gutfeld!』という番組ではグリーンを「ビッチ」と呼ぶ保守派コメンテーターも現れ、再び左派からの失笑を誘った。

スポークスキャンディの今後についても近日中に明らかになる

今回、マース社がM&M’sのキャラクターたちの活動を休止させることについては、“保守派の大騒ぎに折れる必要はない”として批判する声も強い。

ただ、マース社が米CNNなどにメールで寄せた声明によれば、新たにブランドのスポークスパーソンとしてマーヤ・ルドルフを起用するという計画は「しばらく前から取り組まれたもの」で、今回の決定については、「巷では様々なストーリーが囁かれていますが、この決定はリアクションではなく、私たちのM&M'Sというブランドをサポートするために成されたものだということを伝えさせてください」と説明している。

画像: M&M'Sのスポークスパーソンに就任することが発表されたマーヤ・ルドルフ。
M&M'Sのスポークスパーソンに就任することが発表されたマーヤ・ルドルフ。

一方で、スポークスキャンディたちの今後については、「他の情熱を探究するために新たな道を進むことになります」とコメント。「スポークスキャンディたちの新たな探求については今後の数週間のなかでお伝えさせていただくつもりです」とした。

今回の決断に関しては「間違っている」という声も強いので、今後再び決断を翻す可能性もあるかもしれない。そうなると、カルチャー・ウォーに翻弄され続けることになるマース社。

M&M'Sは、2023年2月13日に開催されるNFLのシーズン優勝決定戦、スーパーボウルでコマーシャルが放送されることが決定しており、マーヤはそこでスポークスパーソンとしてデビューする。スポークスキャンディの今後についてもその時に明らかになると見られている。(フロントロウ編集部)

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