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世界中で大ヒットの性格診断「16パーソナリティ」とは?

  • 2023.1.22
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ビジネスの世界から出会い系アプリまで、いたる所で性格診断の結果を見かけるようになった。しかし一体このテストで私たち自身のどんなことがわかるのだろう?フランスのマダム・フィガロの記事を紹介しよう。

私たちの本性が分かるというこのテストがなぜこれほど人気を集めるのか?photography : Getty Images

ISFJ、ENTP、ISFP……。世界の出会い系サイトを覗いてみると、会員プロフィールのページでこんな4文字の組み合わせを見かけるかもしれない。これはその人が卒業した学校の略称でもなければ、LOLのような新手のネットスラングでもない。これはマイヤーズ・ブリッグス・タイプ指標(MBTI)、通称16パーソナリティ性格診断テストの結果だ。

この性格診断が登場したのは1962年。小説家で統計学に傾倒していたイザベル・ブリッグス・マイヤーズ(1897-1980)と、その母親の理論家で心理学者のキャサリン・クック・ブリッグス(1875-1968)のふたりのアメリカ人が考案したもので、名称は彼女たちの名字から取られている。ふたりは1921年に発表されたスイス人精神科医カール・グスタフ・ユングの「心理学的類型」に関する業績をもとに独自の研究を発展させ、88項目からなる質問表を作成した。

以来、彼女たちが考案した手法は文字どおり爆発的にヒットした。世界中で毎年200万人が診断を受けている(1)ことがその成功ぶりを物語っている。

公式のMBTIはマイヤーズ=ブリッグス・カンパニーで研修を受けた専門家だけが発行できる。診断料にはテストに加えてサポート費も含まれるため、料金は担当する専門家によって違う。ネット上には無料のものも存在するが、公式のMBTIとまったく同じ質問である保証はなく、結果も同じになるとは限らない。

MBTIはビジネスの世界で活用されているが、いまやこの性格診断は広く認知され、自分を紹介したり、あるいは出会いアプリでデート相手を見つけるための一手段となっているようだ。しかし本当に4つの文字で人格を定義することはできるのだろうか?そして、自分自身のことがわかるというこのテストは、なぜこれほど人気を集めているのだろうか?

自分自身をよく知る。

MBTI診断テストの開発には、第二次世界大戦が重要な役割を果たしたと言われている。イザベル・マイヤーズは人々が互いによく理解し合っていれば、共同作業がより円滑に行われ、紛争が減るのではないかと考えたのだ。こうした立派な目的のもとに開発されたMBTI診断テストはいまでもビジネスの世界で活用されている。

「テストを利用するのは、自己認識や他者への寛容さを向上させるためです。他者とのコミュニケーションを複雑にする要因を理解するために、それぞれの人の心の働き方を知るという発想です」と、MBTI認定ビジネスコーチのローランス・イルベックは説明する。具体的には、自己啓発やチームの団結力を高めるため、また管理職研修のツールとして、企業だけでなく個人でもこのテストを利用することができる。ただし軽率に使うのは禁物だ。「MBTI診断テストを採用試験に利用するべきではありません」とイルベックは言う。「個人の能力や行動を評価するためのテストではないからです」

手法と枠組み

コーチによると、MBTI診断テストの回答から、ある人の「持って生まれた傾向」が明らかになるという。4つの文字は4つの基軸に対応しており、さらにそれらはそれぞれふたつの「対立する極」を包含している。

最初の文字が意味するのは「エネルギーの源」、つまり内向型(I)と外向型(E)のどちらに当てはまるかを表している。2番目は「情報を処理する」方法に関するもので、感情(S)か直感(N)のどちらが自然に働くかで決まる。その次は「決定を行う過程」。ものごとを決めるときに思考(T)とフィーリング(F)のどちらを優先するかによる。最後の指標は「世界に接するときの傾向」に関するもので、判断(J)あるいは知覚(P)のどちらに頼る傾向があるかを示している。

4つの文字の組み合わせが意味することをできるだけ深く理解するため、回答者には診断テストの終わりに必ず詳細なレポートが渡されるとイルベックは話す。「ただし、認可を受けた人から説明を受ける必要があります」と彼女は強調する。「自己理解という点で、何かを読み取り損ねてしまうかもしれないからです」

MBTI診断テストは厳密ではあるが、その人格定義は絶対的ではない。例えば「テスト結果で内向型と診断されても、その人に外向的な面が一切ない、あるいは外向的になることはできないという意味ではありません」とコーチは強調する。

その意味では、MBTI診断テストのパターン数は無限ではなく、たった16パターンしかない。80億人いるわれわれ地球人をカテゴリー分けするにはかなり少ないように見える。つまるところ、これらの文字は私たちを一定の数の枠のなかに押し込むものではないのだろうか?

「その通り。これは枠なのです」とイルベックは認める。「ですが、私たちはこうした枠にすぎないという意味ではありません。アイデンティティは4つの文字に還元されるものではありません」

安心を求める気持ち。

「人格とは遺伝的かつ文化的遺産、教育、そして世界との出会い方や経験などの結果です。こうしたすべてのことから作られる1個のアイデンティティとは非常に豊かなもので、どんなものであれひとつのテストに還元するのは不可能です」と哲学者で精神分析家のエルザ・ゴダール(2)は説明する。

思春期の頃に友人たちに「私って本当にそう?」とききながらやった雑誌の性格テストから、現在仕事のために受けるMBTI診断テストまで、私たちには自分が何者であるかを評価したい、そしてとくに、外部の何かによってその答えを与えてもらいたいという恒常的な欲求があるのは確かなようだ。

「それが間主観性と言われるものの特性です」と哲学者は説明する。「自分を定義するために、他者の視線が必要なのです。こうしたテストの問題は、まさにその外の視線がないことです。同時に、とても都合のよい方法でもあります。他者の判断は怖いものだからです。また別の限界として、こうしたテストはある時点での評価でしかないことも確かです。私たちは常に変化しているのに。しかし、私たちが恐れているのは、まさに、このアイデンティティの不確かさなのです。実は、テストによって自分を定義しようとするのは、自分を安心させ、他者を安心させるためなのです」

性格診断は選別手段ではない。

だからこそ、人はMBTI診断テストの結果をマッチングアプリのプロフィール欄に書き込むのかもしれない。「馬鹿げているとは言いませんが、特定のタイプの人との出会いを排除するためにテストを利用するのは見当違いでしょう」とビジネスコーチのイルベックは言う。恋愛関係に関する限り、MBTIの型で相性がいい、あるいは悪いという組み合わせはありません。これは他者を理解するためのツールであり、排除するためのツールではないのです」

性格テストをフィルターとして利用することは、素晴らしい出会いの可能性を逃すことに繋がるかもしれない。さらには自分自身と出会い損ねてしまう可能性さえある。「これらの定義に自分を閉じ込め、本来の自分を見誤ってしまう危険がある」と哲学者のゴダールは警告する。「進化することを避け、自分を幸せにするもの、あるいはしないものについて問うことを避けてしまう恐れがある。そして結局のところ、自分自身の探求を放棄することにもなりかねません」

(1)数字はマイヤーズ=ブリッグス・カンパニーのウェブサイトから引用。(2)エルザ・ゴダール:哲学者、精神分析家。ギュスタフ・エッフェル大学研究ディレクターを務める。著書に『En finir avec la culpabilisation sociale』(Albain Michel出版)がある。

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