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【映画】鈴木亮平と宮沢氷魚が描く 愛と赦(ゆる)しの物語 映画「エゴイスト」

  • 2023.1.21

2023年2月10日より一般公開される映画「エゴイスト」。原作は数々の名コラムを世に送り出してきた高山真の自伝的小説『エゴイスト』です。『トイレのピエタ』『ハナレイ・ベイ』など人の心の澱を深く抉る作品で知られる松永大司監督が、ドキュメンタリータッチの映像で、登場人物たちの間に流れる親密な温度感や、愛ゆえに生まれる葛藤を繊細に伝えます。 そんな話題作を早速観てきました。地域特派員・ゆかりおにぎりがお伝えいたします。

ストーリー
出典:リビングふくおか・北九州Web

(c) 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

14歳で母を失い、田舎町でゲイである自分を隠して鬱屈とした思春期を過ごした浩輔。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、自由な日々を送っている。そんな彼が出会ったのは、シングルマザーである母を支えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太。惹かれ合った2人は、時に龍太の母も交えながら満ち足りた時間を重ねていく。 亡き母への想いを抱えた浩輔にとって、母に寄り添う龍太をサポートし、愛し合う時間は幸せなものだった。しかし彼らの前に突然、あまりにも残酷な運命が押し寄せるー

主人公の浩輔を演じるのはストイックさと深い洞察力で数々のキャラクターに命を吹き込んできた鈴木亮平。本作では強さと脆さを同居させた生々しい演技で新たな境地を開拓しています。浩輔の恋人である龍太役には話題作への出演が続く宮沢氷魚。

出典:リビングふくおか・北九州Web

(c) 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

「エゴイスト」とは

映画のタイトルでもある「エゴイスト」。一般的に利己的な人、利己主義者、自己の利益を重要視する人のことを指します。ポスターに充てられているタイトルのひとつに「与えることで満たされていく、この愛は身勝手ですか?」とあります。もちろん、解釈は人それぞれ。 主人公・浩輔は鬱屈した子供時代からの脱却として、仕事で成功を収め、高価なものを身に着けたり所有することで自分を鼓舞させている部分があり、それを「鎧を纏う」と表現します。確かに視点を変えてみるとその「鎧」はきらびやかで美しく、ファッションが大好きな私自身も思わず高揚感を感じてしまうような豪華な洋服やバッグにインテリア、そして絵画です。ハイブランドとされるものの持つ意味、それを取り巻く優雅な暮らしも、またそこに持つ成功や富の象徴とともに「虚無」のようなものを大きく表現されているようにも見えます。

「エゴイスト」は男性同士のラブストーリーでありつつ、家族愛の物語でもあります。前述の「鎧」を纏って生きる浩輔(鈴木亮平)が、美しくはかない影を持つ龍太(宮沢氷魚)に出会い、恋に落ち、最初は戸惑いながらも龍太は浩輔から差し伸べられた救いの手を取り、母親である妙子(阿川佐和子)の病に共に向き合っていきます。浩輔もまた、龍太との出会いによって鎧を脱ぎ捨て、誰かを心から愛する喜びを知っていくこととなります。 やがて大切な人との関係を断たれたとき、浩輔はこの愛のかたちは自己満足なのではないか、彼らを追い詰めていたのではないかと、自問自答を始めることになります。愛とは何か?恋愛・家族愛・自己愛…映画を観ながらも考えさせられることが多くありますが、観終わったあとに、ふとした瞬間に考えてしまうようになりました。もちろんまだ、答えは出ていません。

監督が込めた想い

監督・松永大司氏はインタビューの中で、この映画「エゴイスト」がどのように届いたらいいなと思っていますか?という問いに対し、「映画はエンターテイメントとしての側面もすごく大事だと思っているので、観ている間は喜怒哀楽の感情も含め、楽しんでもらいたいと思っています。そして観終わった後、この映画が持つテーマについて誰かと話してもらえたり、考えてみてもらえたら嬉しいです。エゴイストという言葉についてでも、セクシュアリティについてでも、浩輔と妙子の関係についてでも何でもいいんです。この映画に込めているメッセージについて、誰かとディスカッションしてもらえたら幸いです。 この映画を観た後、エゴイストという言葉の持つ響きに変化があるような気がします。 そういう意味で最後にもう1回、『エゴイスト』というタイトルを出しているんですよね。エゴイストって一見ネガティブな言葉だけど、もしかするとそうじゃない面もあるかもしれない。そういう風に感じてくれる人がいてもいいかな、と思っています。」と仰っています。

出典:リビングふくおか・北九州Web

(c) 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

監督の言葉どおり、観ている間で「エゴイスト」の意味合いがころころと変わっていくのは実感としてありました。そして演出部分で深く印象に残った部分としては、劇中での音楽があまりなく、それがかえって登場人物達の「静かなる心の動き」に寄り添うような感覚に近いものを感じました。(その点についても監督は語っています)そして選曲部分においても原作者の高山氏への敬意と愛を感じられるシーンがあります。劇場でお楽しみいただければと思います!

丁寧に作られた映画だからこそ、きちんと伝えたい想いがあり、自らのセクシュアリティを理由に思い悩むことのない世界を願う製作者たちのまっすぐな映画を観た、そんな映画「エゴイスト」でした。公開は2023年2月10日からです。

エゴイスト 出演:鈴木亮平/宮沢氷魚/中村優子/和田庵/ドリアン・ロロブリジーダ/柄本明/阿川佐和子 原作:高山真監督 ・脚本:松永大司 脚本:狗飼恭子 配給:東京テアトルR15+ ◆福岡県内の上映館 T・ジョイ博多 092-413-5333 TOHOシネマズららぽーと福岡 050-6868-5073 kino cinema 天神 092-406-7805 T・ジョイリバーウォーク北九州 093-573-1566 T・ジョイ久留米 0942-41-8250 TOHOシネマズ直方 050-6868-5033 セントラルシネマ大牟田 0944-41-0700 TOHOシネマズ福津 050-6868-5056

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