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山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第35回

  • 2023.1.21

乃木坂46を卒業し、ラジオパーソナリティ、タレント、そして、ひとりの大人として新たな一歩を踏み出した山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを自由に綴ります。

(photo : Chihiro Tagata styling : Chie Hosonuma hair&make : Chika Niiyama)

「相棒」

長年連れ添ったノートパソコンが、ついに動かなくなった。大学入学のタイミングで父に買ってもらって以来、さまざまな苦楽を共にしたパソコンだ。思い入れがある。

私の進学した学部は多種多様な授業が展開されていて、動画編集やCGなど授業によってはメモリをかなり消費する。入学当初は問題なかったとしても、在学年数を重ねるにつれて作業内容や課題が高度になるし、毎日のように使っていればパソコン本体も経年劣化するので、4年間買い換えずに使うなら、とお店の人から余裕を持ったスペックのものをおすすめされた。まだ何も分かっていない私にはもったいないくらい贅沢な買い物だったが、学割が利くという条件も後押しして、当時出ていた機種の中でも良いものを買ってもらった。

スペックが高い機種ほど、当然本体は重い。リュックに入れて朝から晩まで連れ回しているうちに肩凝りや腰痛と向き合うはめになったし、充電機の種類もそれ特有のもので、コンビニに売っているType-Cなどの汎用コードを使えないので、寝る前に充電するのを忘れて家を出てきた日は最悪だった。でも、少し背伸びしたスペックを積んでいるおかげでやろうと思ったことは大体何でも対応できたし、授業選択の幅が広がった。大袈裟かもしれないが、私は今までたくさんの試練を一緒に乗り越えてきたこのパソコンを、まるで人間の相棒のように大切に思ってきた。忙しい時期は家の玄関に座り込んでレポート課題に取り組んでいたけれど、照明をつけることさえ忘れて没頭していた私がスムーズに文字を打てたのは、「君」が自ずとバックライトを灯してくれていたおかげだった。慌ただしい日々の中でうっかり地面に落としてしまったことも多々あったけれど、修理に出すというような事態は一度もなく、機能をフル回転させながら私の大学生活を支えてくれた。

だが今回は、真っ黒な画面に2種類の謎のイラストを交互に映し出すだけ。そこから先に進みたいのに、キーボードやトラックパッドを触ってみても無反応。ウンともスンとも言わず。アプリやソフトも色々ダウンロードしているし、中に入っているデータが消えてしまうのも辛い。何よりパソコン本体に愛着がある。「君」にはどうにか長生きしてほしい。でもね、何がダメなのか教えてくれないと、いくら長い付き合いとはいえ私は「君」を理解できないし、どう救ってあげたら良いのか分からないのだよ。

年末年始の忙しい時期の急な出来事だったので、どうしようもないまま月日が経ってしまった。とはいえいつも部屋のど真ん中に置いているので、全く使っていなくても片時も忘れたことはない。怒涛の仕事ラッシュが一旦落ち着き、ようやく丸一日の休みが訪れた時、私はかつて父にノートパソコンを買ってもらったお店に、だんまりの「君」を連れて行ってみることにした。

クイズ・歴史・ラジオが好き。下町育ちで、知的好奇心の塊。『山崎怜奈の誰かに話したかったこと』(TOKYO FM 月〜木曜13時〜)、『春菜ザキさんのタダの通販じゃねーよ!』(テレビ朝日 日曜朝10時30分〜)などに出演中。著書『歴史のじかん』(幻冬舎)が現在発売中。公式インスタグラム instagram.com/rena_yamazaki.official

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