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セックスは「もっとも苦手なことの集合体」 発達障害の当事者が語る

  • 2023.1.17

最近では発達障害という言葉が広く認識され、理解も徐々に進んでいる。それに伴い、書店でも発達障害をテーマにしたエッセイやライフハック本、専門家による解説本が並ぶ。

しかし、まだまだ語られていないのは「発達障害のセックス」のこと。「空気が読めない」「他人が理解しにくいこだわりを持つ」といった特性があるが、性愛の面ではどのような場面で問題があるのだろう。

2023年1月13日『ひとつにならない:発達障害者がセックスについて語ること』(イースト・プレス)が発売された。

本書では、自身もASD・ADHDの当事者である著者が8名の語りを聞き書きする。

著者の横道誠さんは、40歳で発達障害の診断を受けた。過去のことを振り返るにつれて、自分の言動の謎が解けてきたという。恋愛に発展しそうな場面では「空気を読めない」し、性交渉の場面では「こだわり」を発揮してしまっていた。

「というのも、自閉スペクトラム症があると、標準的なコミュニケーションが困難になって、一般的には理解されにくい嗜好に左右されるからで、注意欠如・多動症があると、注意が拡散したり、衝動的に行動に出たり、過剰に動き過ぎてしまうからだ。」(横道さん)

横道さんは、性交渉の場面は「発達障害者にとって、もっとも苦手なことの集合体といえるかもしれない」と書いている。他者に生身の自分をさらけ出し、一緒に気持ちよくなるための「擦り合わせ」が必要になるからだ。さらに、当事者にはジェンダーやセクシュアリティの揺らぎを抱える人も多いので、状況が複雑になるという。

困りごとが多いのに、性についてはタブー視されがちだ。「仲間のみんなはどうしているのだろうか」という真剣な思い、そして「多少あった単純な好奇心」から本書の出版を企画したという。

本書の目次は以下の通り。

はじめに
序 章 横道誠のヰタ・セクスアリス
第一章 パンセクシャルの白髪葱さん
第二章 元プレイボーイの青さん
第三章 ノンバイナリーのしぇるどんさん
第四章 愛の当事者研究に励む鷹村了一さん
第五章 元セックス依存症者の唯さん
第六章 リスセクシャルのぷるもさん
第七章 シロウト童貞の数独さん
第八章 メンヘラな姫野桂さん
おわりに

実際に発達障害を持つ方の性交渉のエピソードが語られている。発達障害を一括りにできるわけではないが、今まさに悩んでいる方にとっては仲間を見つけたような気持ちになるのではないだろうか。自分と似ている体験をしている方もいるかもしれない。

■横道 誠さんプロフィール

よこみち・まこと/1979年、大阪市出身。京都府立大学准教授。文学博士(京都大学)。専門は文学・当事者研究。著書に、『みんな水の中――「発達障害」自助グループの文学研究者はどんな世界に棲んでいるか』(医学書院)、『唯が行く!――当事者研究とオープンダイアローグ奮闘記』(金剛出版)、『イスタンブールで青に溺れる――発達障害者の世界周航記』(文藝春秋)、『発達界隈通信――ぼくたちは障害と脳の多様性を生きてます』(教育評論社)、『ある大学教員の日常と非日常――障害者モード、コロナ禍、ウクライナ侵攻』(晶文社)がある

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