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家入レオさん、「幸福低迷期の20代」で感じた違和感を曲に

  • 2023.1.12

10代でデビューを飾って10年、28歳となった家入さん。キャリアについて、そして女性として大事にしたいことについて悩んだ日々を、率直に語ってくれました。10年間にどんな変化が起きたのでしょう? 1月スタートのWOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』のオープニングテーマを手掛けるのをはじめ、2月にはアルバム『Naked』のリリースを控え、2023年も精力的な活動が期待されています。

人生では、悩み抜く期間も大事

――家入さんは現在、28歳。10年のアーティスト生活の中で、トンネルの中を迷いながら歩んだこともあったようですね。

家入レオさん(以下、家入): ありましたね。20代後半に経験しがちな「幸福の低迷期」を指す造語で「クォーターライフ・クライシス」という言葉があります。大学卒業後に新入社員として会社に入って、最初は環境に慣れるのが精一杯。でも入社4〜5年経つと自分の中に余裕が出てきて「本当にこの道でいいんだろうか」などと今後の人生に迷い、悩む。

私は仕事をし始めたのが同世代よりちょっと早かったので、「クォーターライフ・クライシス」が20代前半に来たんですね。地元・福岡で、音楽が好きという気持ち一つで歌っていた女の子が、東京に出てきていろんな環境で自分を磨き上げている方たちと出会う。少しずつ、少しずつ自信がなくなっていきました。

今ではその時期のことを「音楽を好きな気持ちを、きちんと疑えたよい時間」だと思っているんですけど。しっかり悩み抜く期間って、後の自分の力につながっていくと思うので、人生の中でも大事な気がします。

朝日新聞telling,(テリング)

――そこから抜け出すきっかけは、どんなところから得たのですか?

家入: その頃、音楽以外にも心が向くようになりました。コロナ前の2019年頃だったかな。「子どもたちと触れ合ってみたいな」と思い、保育士さんのお手伝いをさせていただいたり、それ以外にも、この時期は海外に行ってみたりもしましたね。とりあえず自分から動いてみて、音楽の仕事を続けることについて、できるだけ広い視点から見ようとしていたんだと思います。

その後、コロナの自粛期間が来てライブなどが出来なくなり、家で楽曲と向き合ううちに、「やっぱり私は音楽が好きで、もっと音楽を極めていきたい」と思い直せた。そして、「腹を決めて、音楽をとことんやっていく」という私の気持ちをスタッフの皆さんと共有できたんですね。だから23年は昨年よりもさらに楽曲を作って、もっとライブをしていこうと、私は自分自身と約束しました。

朝日新聞telling,(テリング)

新曲に込めた30歳手前の違和感

――20代後半から30代の女性はtelling,のコア読者とも重なりますが、キャリアの問題と結婚、出産をどうするのかという「29歳問題」がしばしば話題にあがります。30代を目前にして、結婚、出産についてはどんな風に考えていますか?

家入: 30歳手前の女性が感じる違和感を歌った曲が、2月15日にリリースするアルバム『Naked』にも収録されるんです。『I don’t like you』という曲で。この曲は20代後半の女性が「今、彼氏いるの?」「結婚してる?」と聞かれることをきっかけにして作りました。

そうやって聞かれて「いや、結婚してないです」とか「今、彼氏いない」と答えると、ものすごく申し訳なさそうな顔をされる。それが私、本当に意味がわからなくて(笑)。恋愛至上主義の人が多いのかなというか。

もちろん恋愛をしている時のハッピーな気持ちは最高だし、それを人生の中で大切にしている人がいるのもわかる。でも「同じぐらい打ち込める何かがあるのも、最高じゃん?」って思う。恋愛にしろ、打ち込めるものにしろ、大事なのは自分の意思で選んでいるかどうかじゃないかなって。自分の幸せを社会に選ばせられるんじゃなくて、自分で選んでいきたい。その意思が人間の芯の強さに繋がってくると、私は思っているんですよね。

朝日新聞telling,(テリング)

――家入さんの周囲はいかがですか? お友だちの婚姻届の保証人になっているとも伺いました。

家入: そうなんですよ。その夫婦宅に遊びに行くと、結婚も素敵だなって思います。「バリキャリ、最高!」と思っているわけでもなくて。好きな人と出会って子どもを授かって、その子のご飯を作って、毎日家事や育児をすることも、人生ではものすごく大切なことですよね。でも、今の私にはまだできないことだなと思います。私自身は自分の周囲でも、結婚して子どもを持っても働きやすい環境を作りたいなと思うんです。「家入はスタッフさん含めいい感じで仕事をしているね」と言われたいです。

――この先、年齢を重ねるにあたって、大切にしていきたいことは何でしょう?

家入: 流されない。自分でちゃんと決める、ということ。それは誰の言うことも聞かないというわけではなくて。周囲の意見を聞いたうえで、最終的に自分で決める。そうでないと、上手くいかなかった時に周りの方のせいにしてしまうと思うんです。

■横山 由希路のプロフィール
横浜生まれ、町田育ちのライター。エンタメ雑誌の編集者を経て、フリーランスに。好きなものは、演劇と音楽とプロ野球。横浜と台湾の古民家との二拠点生活を10年続けており、コロナが明けた世界を心待ちにしている。

■品田裕美のプロフィール
1983年生まれ。出版社勤務を経て、2008年 フリーランスフォトグラファーに。「温度が伝わる写真」を目指し、主に雑誌・書籍・web媒体での撮影を行う。

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