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第80回ゴールデン・グローブ賞で「60年続いた伝統」が終わった背景に見えるハリウッド事情

  • 2023.1.11
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2023年で第80回という節目の年を迎えるゴールデン・グローブ賞で、59年間続く伝統が異例の“実施無し”となった。その背景には、ハリウッドで不穏な注目を集める2つの問題があった。(フロントロウ編集部)

1960年代から続く伝統が初めて途切れる

第80回ゴールデン・グローブ賞は、ゴールデン・グローブ・アンバサダーが不在のまま開催された。ゴールデン・グローブ・アンバサダーとは、式典でトロフィーの贈呈や受賞者の案内をサポートする人のこと。式典前のパーティーでゲストをもてなすといった役割もある。

画像: 2018年のゴールデン・グローブ・アンバサダーを務めた、ドウェイン・ジョンソンの娘。
2018年のゴールデン・グローブ・アンバサダーを務めた、ドウェイン・ジョンソンの娘。

ゴールデン・グローブ・アンバサダーは1963年に始まった制度で、1971年からはセレブリティの娘や息子が担当することが伝統となった。ローラ・ダーンやフレディ・プリンゼ・Jr.なども元アンバサダーで、メラニー・グリフィスとダコタ・ジョンソンは2世代連続でブレイク前にアンバサダーを務めた。ちなみに以前は、女性の場合はミス・ゴールデン・グローブ、男性の場合はミスター・ゴールデン・グローブと呼ばれていたが、よりインクリーシヴな名称にするために、2018年からはゴールデン・グローブ・アンバサダーと呼ばれている。

画像: メラニー・グリフィスと娘のダコタ・ファニングは親子2代でゴールデン・グローブ・アンバサダーに。
メラニー・グリフィスと娘のダコタ・ファニングは親子2代でゴールデン・グローブ・アンバサダーに。
画像: 2014年にはケヴィン・ベーコンとキーラ・セジウィックがゴールデン・グローブ・アンバサダーを務めた。
2014年にはケヴィン・ベーコンとキーラ・セジウィックがゴールデン・グローブ・アンバサダーを務めた。

1963年にアンバサダー制度が始まってから、式典そのものの通常開催がなかった2008年と2022年を除いて毎年続いていた伝統は、なぜ開催80年という節目の年になくなってしまったのか?

じつは、アンバサダー役を承諾してくれる2世セレブがいなかった可能性がある。

HFPAは“ボイコット上がり”でリスクが大きい時期

画像: 2016年にゴールデン・グローブ・アンバサダーを務めたのは、ジェイミー・フォックスの娘。
2016年にゴールデン・グローブ・アンバサダーを務めたのは、ジェイミー・フォックスの娘。

HFPAは2021年のLA Timesの暴露記事で、受賞者を選ぶ会員に黒人がひとりもいないことが発覚して大炎上。さらには、作品側から接待を受けてノミネートを不正に決めていたという疑惑も出た。これを受けて、ワーナー、Amazon、NetflixといったスタジオがHFPAに抜本的な改革を求め、HFPAが変わらなければ“一緒に仕事はしない”とボイコットを宣言した。

セレブ界からの風当たりも強く、ゴールデン・グローブ3冠の俳優トム・クルーズは抗議の意味を込めてすべてのトロフィーをHFPA側に返却。2022年の式典はテレビ局に放送してもらうことができず、さらにはセレブも出席拒否したことから、テレビ放送は見送られた。

事態を受けてHFPAは改革を約束し、2021年、約90名だった会員に新たに21名を追加。新会員の内訳は、女性52%、ラテン系19.5%、アジア系12%、黒人10%、中東系10%だと明かした。

2023年の式典には多くのセレブが出席するが、まだまだみんなHFPAの行方を見定めているところ。昨年はゴールデン・グローブ賞を完全スルーしたNetflixは、今年は"Celebration Toast(意味:お祝いの乾杯)"という関連イベントを開催したが、イベント名にゴールデン・グローブ賞の名前を出していないあたり、距離を取っていることが伺える。

その動きに世間から厳しい目が向けられている状態のゴールデン・グローブ賞にサポート役として関わるのは、プラスよりもリスクの方が大きい。流れ弾を受けないためにも、今はオファーを受けてもイエスという2世セレブは少ないだろう。

2世セレブを悩ませるネポベイビー問題

ハリウッドを巡っては、2022年にネポベイビー(nepo-baby)という言葉がトレンドした。これはネポティズム(身内びいき)とベイビーを掛け合わせた造語で、つまり、親のコネに助けられて人生を進展させている人のこと。

画像: 2017年にゴールデン・グローブ・アンバサダーを務めた、シルヴェスター・スタローンの3人の娘たち。
2017年にゴールデン・グローブ・アンバサダーを務めた、シルヴェスター・スタローンの3人の娘たち。

ハリウッドは2世が多く、もちろんなかには実力がある人もいるが、コネがない一般人だったらそこまでたどり着けていなかっただろうという人も多くいる。そして2022年、New York Magazineが『母親と同じ目をしているね。そしてエージェントも同じ。ハリウッドのネポベイビー・ブームを過剰分析』という特集を掲載。これがきっかけで、今は、以前からたびたび議論されていたハリウッドのネポベイビー問題の議論に再び火がついている状態。この世論のなか、2世セレブに独占的に与えられてきたアンバサダーの役を務めることはリスクしかない。

画像: New York Magazine ネポベイビー特集
New York Magazine ネポベイビー特集

議論がある程度落ち着いても、今後もアンバサダーにはどうしてもネポティズムのイメージがついてまわるため、前のように“名誉な役”という高い価値はなくなったと言っていいだろう。

ちなみに、ハリウッドのネポベイビー問題については、これまでにベン・スティラー、ケイト・ハドソン、ジェイミー・リー・カーティス、リリー・アレンが2世を擁護するコメントをしているが、全員が2世セレブのため、擁護したことで逆に批判が強まるという事態になっている。(フロントロウ編集部)

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