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Jリーグと対照的…韓国Kリーグのクラブが若手の欧州進出に“慎重”すぎる理由

  • 2023.1.10
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アジア勢がメジャーな国際大会で結果を残せば、自然に欧州クラブのスカウトが目を向けるようになる。

かつては優秀な選手が1~2人程度にとどまったとすれば、現在は韓国代表FWソン・フンミン(30、トッテナム)を筆頭に日本代表MF鎌田大地(26、フランクフルト)やイラン代表FWサルダル・アズムン(28、バイエル・レバークーゼン)など多くのアジア人選手が欧州ビッグリーグで成功したことで、後輩たちに対する見方が変わった。

アジア市場への関心が高いクラブは、競技力と商品性を兼ね備える選手を獲得しようと財布のひもを緩めている。

昨年のカタールW杯で12年ぶりのベスト16進出に成功した韓国サッカー界では、潜在力を持つ若手有望株たちの欧州進出に期待感を抱いている。

しかし、以前のように“サプライズ移籍”が主となる冬の移籍市場で欧州に直行するのか、はたまた夏の移籍市場まで待つのかをめぐり、選手とクラブ間で顔色を伺う争いが激しくなっている。

選手は早期進出望むも…クラブは夏まで残留を希望

 

韓国や日本のように自国リーグが「春秋制」を採用する国ではなおさらだ。

「秋春制」が大多数の欧州主要リーグは、冬の移籍市場では即戦力補強や来季を見据えた獲得に乗り出すことが多い。一方、「春秋制」のリーグはシーズン開幕前に主力が離脱することになるため、簡単に手放すことは難しい。

特定の欧州チームと早期に交渉を行い、所属チームと交感を交わした“特別な場合”でなければ移籍の手続きを踏むことが難しいのがチーム側の言い分だ。反面、選手側の立場は確固たるもので、欧州から“ラブコール”を受けたのであればその時に行かなければならない。

カタールW杯で予備エントリーとして韓国代表に帯同したFWオ・ヒョンギュ(21、水原三星ブルーウィングス)が代表的な例だ。

オ・ヒョンギュ

オ・ヒョンギュはW杯で出場こそなかったものの、大会後にスコットランドの名門セルティックのラブコールを受けた。移籍金は200万ユーロ(日本円=約2億8267万円)で完全移籍が条件だ。近年で20代前半のアジア人選手に200万ユーロ以上を支払うチームはそう多くない。

ただ、現所属チームの水原三星(スウォン・サムスン)はオ・ヒョンギュが最低でも6カ月は残り、夏に移籍してくれることを望んでいる。オ・ヒョンギュを中心に攻撃陣を構成できるだけでなく、Kリーグのローカルルール「U-22選手義務出場規定」で起用できるからだ。

水原三星とオ・ヒョンギュは最近だけで二度も会い、未来について対話を行ったが、明快な答えは得られなかった。

オ・ヒョンギュは昨季Kリーグ1(1部)で自身初の二桁得点(36試合13ゴール)を記録した。身長183cm、体重72kgと頑丈なフィジカルを誇る彼は、得点力だけでなく、空中戦やフィジカルコンタクトでも頭角を現した。また、すでに軍隊チームの金泉尚武(キムチョン・サンム)で兵役も終えている。

セルティックがオ・ヒョンギュに賭けたのは、潜在力だけでなく兵役問題も解決しており、選手の価値が高いと確信を抱いているためだ。

FWチョ・ギュソン(24、全北現代モータース)も似たような状況だ。

Kリーグ関係者の本音「欧州進出で失敗した選手が多い」

 

カタールW杯ガーナ戦で韓国人選手初の1試合2ゴールに成功したチョ・ギュソンは、昨季Kリーグ1得点王(17ゴール)、FAカップMVPと個人タイトルを席巻した。すでに欧州の多くのチームがラブコールを寄せているが、新シーズンのKリーグ1で王座奪還を目指す全北現代からは、キム・サンシク監督もフロントも「あと6カ月」と慰留した。

ただ最近、チョ・ギュソン獲得を望む欧州チームが300万ユーロ(日本円=約4億2366万円)以上の高額な移籍金を受け入れたことで、残留の名分がぼやけている状態だ。

チョ・ギュソン

Jリーグからは今冬の移籍市場でDF岩田智輝(25、横浜F・マリノス→セルティック)、DF小林友希(22、ヴィッセル神戸→セルティック)、MF三竿健斗(26、鹿島アントラーズ→サンタ・クララ)、MF原輝綺(24、清水エスパルス→グラスホッパー)らが欧州進出。MF相馬勇紀(25、名古屋グランパス)もポルトガルのカーザ・ピアACへのレンタル移籍が決定的とされている。

しかし対照的に、Kリーグでは現時点で欧州移籍が正式発表された選手はいない。

Kリーグの複数のクラブ関係者は、「若手の欧州ビッグリーグやビッグクラブへの直行は慎重にならなければならない」と口を揃える。

なかでも、とあるクラブの事務局長は2010年代の韓国サッカーをけん引した“ロンドン五輪ベスト4世代”に言及。

「(当時は)ビッグリーグに進出した選手が多くいたが、早すぎる年齢で挑戦したことで適応に失敗し、負傷など苦労した選手が多い。イ・ジェソン(30、マインツ)のようにKリーグで確実に実力を証明して欧州に進出した選手の成功確率が高かったように、(現在の若手も)賢く判断してほしい」と伝えていた。

(構成=ピッチコミュニケーションズ)

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