1. トップ
  2. 羽田美智子さんが語る年齢との向き合い方。「今日を生きることにこだわり、流れに身を任せる」

羽田美智子さんが語る年齢との向き合い方。「今日を生きることにこだわり、流れに身を任せる」

  • 2023.1.7

ドラマや映画を中心に女優として活躍する傍ら、オンラインセレクトショップ「羽田甚商店」の店主としての顔も持つ羽田美智子さん。年齢とともに変化する自身の体や心との向き合い方などについて、羽田さんにお話を伺いました。

「もうあの場所には居られない」という焦り

――「年齢を重ねることを怖い」と感じる人は多いです。たとえば結婚やキャリアなどについて焦りを募らせる「29歳問題」や、人生の選択において最終的な岐路に立っているのではないかと悩む「39歳問題」などがあります。

羽田美智子さん(以下、羽田): 私自身も通ってきた道だから、焦ったり悩んだりするのはよくわかります。

29歳前後って、「若くないと価値がない」という眼差しを、過剰に感じてしまうことがあるんですよね。社会人だったら、入社してしばらくは周りの人たちが可愛がってくれたり、色々と教えてくれたりする。それなのに数年経って、自分はまだまだ成長していないつもりなのに、急に「もうすぐ30でしょ」って一人前扱いされたら、放り出されたような気になりますよね。次の世代がどんどん入ってきて「もう、あのポジションには居られないんだ」と思ってしまうとか。

朝日新聞telling,(テリング)

「そうだ、京都になろう」と乗り越えた

――羽田さんにも「若くないと」と悩んだ経験がありますか。

羽田: あります、あります。20代前半の頃にいただいていた役が、他の女優さんのところに行くようになって「このまま私の価値はなくなってしまうのかな……」と怖かった。今思えば、「若くないと価値がない」なんて、思い込みですよね。だけど当時は、すごくモヤモヤしていました。

その頃に、京都に行ったんですよ。神社仏閣を巡っていたら、外国からの観光客が「日本の歴史ある建物は、本当に素晴らしい」と夢中で話していて。歴史に対してリスペクトを抱いているんですね。その様子を見ていたら、人間もこうあるべきだよなと思いました。
建物はどうしたって古くなるんですよ。人間も同じ。それを「私は中古物件だから価値がない」と思っていては損ですよね。積み重ねてきた時間の重みは、本来、人の心を掴むだけの力があるはずなんだから。

それなら自分の内面を充実させて、若い子にはない価値を自分が身につけていこうと。自分でキャッチコピーをつくったんですよ。「そうだ、京都になろう。」って(笑)。この言葉で「29歳問題」を乗り越えました。

「39歳問題」もそうですが、女性の身体はホルモンバランスの影響を受けるし、年齢を重ねると、どんどん体調は下り坂になっていきがち。今は「いつまでも若くしていないといけない」といったプレッシャーが強いですけど、そもそも、若くいようとしなくていいんじゃないかな。

朝日新聞telling,(テリング)

人生の“流れ”を受け止めていればいい

――「人生100年時代」と言われるようになって、ゴールが伸びたような感覚もあります。

羽田: そっか。確かに、ペース配分をどうしよう、って思ってしまいますよね。でも難しいのは、「人生100年時代だぞ」と思っていても、案外、それまでに終わりがくるかもしれない(笑)。こればっかりは、わからないんですよね。
あらゆることを想定して不安になると、むしろ体調を崩してしまいます。「今日を生きる」ことにこだわるほうが、きっといい。今日、おいしく食べて、楽しく生きる。そのことだけに集中する。そうすると、また新しい明日がやってくると思うから。

――昨年はどのような一年でしたか。

羽田: コロナ禍が少し落ち着いて、久しぶりにファンの方たちとの交流会を開催することができました。改めて「顔が見えるっていいな」「直接、声を届けられるって幸せだな」と感じましたね。一方、コロナの流行で、この数年間で社会がすごく変わったとも思います。コロナ禍以前のやり方では通用しない、自分も変わっていかないと。

それに昨年は、父が亡くなって母が一人になってしまったので、実家で過ごす時間が増えました。久しぶりに実家にいると「私、ここから出ていったんだな」と思います。なんだか随分、遠くまで来たつもりでいたけど、またこうして戻ってくることもある。人生には自分の意思とは関係なく、どうしようもなく流されてしまう瞬間もある。「流れを受け止めていればいい、身を任せていい」と達観するような気持ちにもなりました。

2023年も目の前のこと一つひとつに心を込めて、毎日を過ごしていけたらいいですね。

朝日新聞telling,(テリング)

――羽田さんは“流れを受け止めて”生活されているとのことですが、telling,読者の中には「やりたいことがあるけど、一歩踏み出せない」と悩んでいる人もいます。

羽田: 本当にやりたい夢って、どうやっても消えないと思うんですね。一度忘れてしまっても、何かのきっかけでふっと湧いてくる。ただ、実現するタイミングはそれぞれで、やれる時にしかやれないものなんです。
だから、あんまり焦らなくていいと思う。まずは自分が何に喜びを感じるか、知っておくだけでいい。「これが好きだな」「やってみたいな」って気持ちさえ持っていれば、できる時期が来たら実現する。そういうものなんじゃないかな。

■塚田智恵美のプロフィール
ライター・編集者。1988年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後ベネッセコーポレーションに入社し、編集者として勤務。2016年フリーランスに。雑誌やWEB、書籍で取材・執筆を手がける他に、子ども向けの教育コンテンツ企画・編集も行う。文京区在住。お酒と料理が好き。

■家老芳美のプロフィール
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。

元記事で読む
の記事をもっとみる