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「羽田甚商店」を開いた羽田美智子さん、入院中に気づいた「やり残したこと」

  • 2023.1.6

俳優として活躍する羽田美智子さん(54)は、2019年にオンラインのセレクトショップ「羽田甚商店」をオープンさせ、現在は店主としても奮闘中です。30代からの「いつかお店を開きたい」という夢を、50代で実現させた羽田さんに、開店の決断をした理由を聞きました。

保留にした夢。50代になり「今だ」

――始められたECセレクトショップ「羽田甚商店」の店名の“羽田甚”は、ご実家に代々伝わる屋号だそうですね。

羽田美智子さん(以下、羽田): そうなんです。もともと宮大工の高祖父が始め、理容器具店や文房具店などさまざまに形を変えてきた「羽田甚商店」なのですが、5代目の父が店を畳むことになりました。2015年のことです。

――畳んだ屋号を6代目として継承し、オンラインセレクトショップの形で蘇らそうと思ったのはなぜでしょう?

羽田: 30代に入る頃から、仕事でもプライベートでも、京都を訪れる機会が増えました。職人さんから話を聞きながら、後継者不足の問題を抱える企業や、世間への広め方に悩む方が多いことを知って。「いいものを届けるための架け橋に、私がなれたら」と考えるようになりました。そして漠然と「いつか京都でお店を開きたい」と夢見ていたものの、タイミングが合わず保留になりました。

昔から、人に何かをオススメするのが好きなんです。そんな自分の「特技を活かしたい」「実家の屋号を継承したい」「『いつか』と思っていたことに挑戦したい」といった想いが重なったタイミングが2019年。オープンから3年が経って、今では90種類くらいの商品を取り扱っています。

朝日新聞telling,(テリング)

つくり手の想いを語ることには「自信」

――羽田さんご自身が、商品を選んでいるんですか。

羽田: はい。「羽田甚商店」での私の役割は、本当にいいと思うものを見つけ、それがなぜいいのかを語り、どう届けていくかを考えること。実際にモノをつくっている工場を見学に行ったり、責任者の方にお話を聞いたりしています。背景にある“ドラマ”を聞くのが好きなんです。

たとえばそう、「羽田甚商店」の人気商品のひとつ、『okurumi soap』。このソープは、すごいんです。アトピーやアレルギーを持つ娘さんのために、あるお母さんが開発したもので、黒糖やハチミツなど主に食べられる素材でできているんですよ。

――取り扱う商品、一つひとつの“ドラマ”を語ることができるんですね。

羽田: 本当に大好きだから。私ね、自分のことにはなかなか自信が持てないんですけど、一生懸命モノをつくっている人の気持ちや、その製品に対する自信はすごく強くて。

朝日新聞telling,(テリング)

心配は山のようにあったが…

――最近は「サステナブル」といった言葉をよく聞くようになりましたが、この言葉についてはどう思いますか。

羽田: 「羽田甚商店」でお取引のある方たちの多くは、その言葉が生まれる前から、サステナブルを実践されていらっしゃいました。日本の生産者には、自分さえよければいいのではなく「周りあっての自分」といった考え方が根付いている場合が多いのではないでしょうか。

――30代の頃からお店を出したいと考えていたものの、その時は実現しなかったわけですね。

羽田: そうです。当時、女優業でスケジュールは真っ黒でしたし。二拠点生活といった考え方もまだあまりなくて、二足の草鞋を履ける気がしませんでした。

――それから女優としてのキャリアも積んで、名声も得ている。今になって新しい挑戦をすることを躊躇しませんでしたか。

羽田: リスキーではありますよね。実際、心配は山のようにありました。失敗したらどうしよう。赤字続きになったら。誰からも注目されなかったら、とか。

朝日新聞telling,(テリング)

――それでも羽田甚商店をオープンできたのは?

羽田: 私の37歳から39歳の間は“魔の中年期”。厄年に重なる時期で、これまで布団に入れば、こてっと眠れていたのに、急に眠ることができなくなるとか、ホルモンバランスを崩すこともあって。苦しい時期がありました。

そして40代になると2回、入院したんですね。1度目の入院では意識がなくなってしまい「あれ、私、死ぬのかも」なんて経験をしました。意識が遠のく中で「やり残したことはないかな」と考えていたら、ふと「やっぱりお店をやりたかった」と思ったんです。その後、回復したので、「これはやらなきゃな」と。

若い頃は、成功だけしたいですよね。だから、なかなか動けない。でもいつだったか、ある人に「成功」の反対は「失敗」ではなくて、「無難」なんだと教えてもらったんです。もし挑戦して失敗したとしても、失敗した人の痛みを知り、感謝の気持ちを抱くことができたら、それは「成功」なんですよね。

■塚田智恵美のプロフィール
ライター・編集者。1988年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後ベネッセコーポレーションに入社し、編集者として勤務。2016年フリーランスに。雑誌やWEB、書籍で取材・執筆を手がける他に、子ども向けの教育コンテンツ企画・編集も行う。文京区在住。お酒と料理が好き。

■家老芳美のプロフィール
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。

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