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欧米流「褒める」子育ては、子どもを忍耐力のない大人にしないのか

  • 2023.1.4
「褒める」ことで、忍耐力のない大人に?
「褒める」ことで、忍耐力のない大人に?

子どもの育て方では、「褒めて育てる」か「叱って育てる」かで悩む人も多いことと思いますが、最近は、欧米流の「褒める子育て」が主流のように見受けられます。一方で、こうした育て方が主流になると、「注意や叱責に耐えられない」「思い通りにならないと心が折れる」など、忍耐力が欠如した大人が増えるのではないかという指摘もあります。その真偽などについて、子育て心理アドバイザーの雨宮奈月さんに聞きました。

「褒める」と「甘やかす」は違う

Q.「褒める」子育てをすると忍耐力が欠如した大人になるのではないか、と懸念する人がいるそうです。実際、そうなると思われますか。

雨宮さん「褒める子育てが直接の原因で、忍耐力が欠如した大人になるとは思いません。成長の過程で、失敗や挫折の経験値が足りないと忍耐力が欠如するかもしれませんが、『叱られること』が失敗や挫折とは限りません。たくさん褒められても、あまり叱られなくても、たくさんの経験をして忍耐を学ぶことはできます。

ただ、注意していただきたいのは、『褒める』子育てと『甘やかす』子育ては根本的に違うということです。褒める部分と叱る(過ちを指摘する)部分を使い分けて褒めることで、よい行動を明確にしていくのが褒める子育てです。

子どもが何をしても、愛しているから『オールOK!』と何でも受け入れる甘やかす子育てでは、よい行動とダメな行動を理解するチャンスを得られないまま大きくなってしまいます。子どもの頃、誤った行動をしたとき、それを指摘されずに育ってしまうと、大人になってから他者の指摘に耐えられなくなるかもしれません。

ダメなことは、なぜダメだったのかを教えてきちんと叱り、その上で『ごめんなさいができたこと』『お話をきちんと聞けたこと』などの頑張りを褒めて、認めてあげるのが本当の褒める子育てです」

Q.欧米流の褒める子育ては度が過ぎる、と思う日本人もいるようです。子どもに悪影響はないのでしょうか。

雨宮さん「欧米流の褒める子育てについて日本で賛否両論が出る理由は、周囲の人間の価値観の違いにあるのだと思います。一つの絵本を例にご説明します。

世界中で半世紀にわたって、親から子へと親しまれてきた人気絵本に『おさるのジョージ』があります。知りたがりで探究心の強い子ザルの物語ですが、彼がどんな失敗やトラブルを起こしても、周りの人間は決して怒りません。

どんなことでも怒らないし、追いかけないし、大きな声を出さないどころか、探究心に感心し、『なるほど、そういう考えもあったか』と受け入れています。叱らずにかける言葉の数々に、私も見習いたいと思うことがあります。これは日本では、『度が過ぎた褒める子育て』と見ることもできるでしょう。

そもそも、舞台のアメリカと日本では子育ての価値観が違います。『子どもと親はセット』と考えられて責任は親にあるという日本に対し、生まれた瞬間から『一人の人間』として扱うのが欧米です。正しいポイントを褒め続けることは『甘やかして育てる』こととは違うので、成育者(子育てを主にする人)以外の大人の言葉も受け入れることができる素直さがあれば、褒める子育ての度が過ぎても問題ないでしょう」

Q.子どもを褒めるときや叱るときに、気を付けるべきことはありますか。

雨宮さん「もちろん、褒めるのにもポイントがあります。何でもかんでも褒めればよいというわけではありません。例えば、幼児に自分でお着替えができるようになったことを褒めたとします。一度できるようになったことをいつまでも褒められても、少しもうれしくありません。

腕をシャツに通せるようになったら、次はボタンが留められるようになって、おなかをしっかりとしまうことができるようになって…と行動のステップアップを一つずつ褒めてあげるのもよいです。ただ、その行動ができた“事実”だけではあまり心に響かなくなってくるので、一人で着替えようとしたことの頑張った心情の部分を褒めるとよいでしょう。

叱るときは『急な道路への飛び出しは危ないから駄目』『立ち止まらないで危ない行動をしたね』などと駄目だった行動そのものを叱るだけにとどめるとよいです。『なぜ、そんなことも分からないの』『だからあなたは駄目なんだ』など子どもの人間性を否定するような駄目出しは心が傷つくだけで、反省を促しにくくなってしまいます」

「褒める」「叱る」のバランスは?

Q.子育てにおいて、「褒める」ことと「叱る」ことはどのようにバランスを取ればよいのでしょうか。

雨宮さん「世の中のお父さん、お母さんはきっと、子どもはたくさん褒めてあげたいし、叱るのを極力減らしたいと考えているでしょう。ただ、毎日慌ただしく生活していると、叱ってしまうことがどうしても多くなってしまいます。『起きよう』『次はこれをしよう』という指示の言葉には『叱り要素』を含まないように、『これ以上なら叱る』というボーダーラインを決めておくとよいでしょう。

分かりやすいように3回注意しても直らないようなら叱ると回数で決めたり、言葉遣いが悪くなっても自分で決めたNGワードが出ない限りは叱らなかったり…などのマイルールです。そしてきちんと、褒めるポイントで気付いて声に出して褒めてあげること、つい小言が多くなってしまうときは、行動そのものだけを叱ることに留意して、気を付けていってほしいと思います。

『褒めるのは子どもの心情、叱るのは行動そのもの』です。子どもの年齢や性別(思春期が来るタイミングが異なる)、性格によっても常に進化していきますので、親の中のマイルールは常にアップデートして、バランスを取っていってください」

オトナンサー編集部

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