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伝説の投資家・澤上篤人が語る「終わらないインフレと最大級バブル崩壊を前にした、私の資産防衛法3つ」

  • 2023.1.2
バブル崩壊でも物価は上昇。もう預金は安全ではない

米国の景気、海外と日本の金利差、円安、株価など、気になる経済ニュースは途切れることがない。

さわかみホールディングス代表取締役 澤上篤人さん
さわかみホールディングス代表取締役 澤上篤人さん

1980年代から、世界では、金利を下げて資金を大量供給すれば経済は成長し、国民の所得も増える、という考え方が広がった。供給された資金は金融市場に流れ込み、株価は高騰。しかし実体経済は思うように成長せず、多くの日本人は豊かになったとの実感を持てずにいる。

リーマンショックやコロナ禍でも大規模な金融緩和が続き、金融緩和バブルの様相だが、投資家たちはかなりの楽観ぶりである。

50年以上、投資を続けてきた経験から言えば、カネ余りによる株価の高騰が永遠に続くわけがない。何かのニュースをきっかけに警戒感が芽生え、株価が一気に急落することは十分考えられる。

危機が起きれば国のバラマキによって企業も人も助けられてきたが、それも限界。国や企業を頼らず、自身の力で生きていかねばならない。

生きていくためには働く必要がある。あなたが働く会社は、バブル崩壊後も生き残れるだろうか。

強いのは、人々の生活に必要な会社、バブルとは無縁の会社である。

物価が上がっても、人々は米やパンを買い、身支度をする。そうした人々の営みを支えている会社は生き残ることはできる。ただし、バブルに踊っていたら話は別だ。我々の調査では、80年代後半から90年代初頭のバブル期、多くの企業が投機目的で土地を取得するなどしており、東証1部(当時)上場の約1200社のうち、バブルに乗っていない会社は170社程度だった。バブルに踊っていると株価急落で経営が悪化しかねない。ゼロ金利で借り入れを増やしてきた企業も要注意だ。

澤上篤人さん

今こそお金にも働いてもらおう。

バブルが崩壊するなら投資は控えるべきと考えがちだが、そのような常識はもう通用しない。リーマンショックなどの危機とは異なり、今度はバブルが崩壊しても物価が上がる。現金の実質的な価値は目減りし、預金ではインフレに負けてしまうのだ。

安全なのは長期の株式だと思う。

条件は、会社をしっかり選ぶこと。働く会社と同様、人々の生活に必要な会社で、かつバブルに踊っていない会社を選ぶ。

100円のモノが120円になっても、生活に必要なら買わざるを得ない。だから世の中に必要な会社は業績が著しく悪化することはない。派手さがないから、カネ余りバブル下でも株価は過剰に上がっておらず、その分、下落も小さい。そして、業績が堅調な会社として投資家に注目され、早期の株価回復が期待できる。

下がったところで買うのが望ましく、そのためには、いつでも買えるよう、証券会社にお金を入れておくといい。預けたお金は証券会社の資産とは別に管理されるので、証券会社が破綻しても資金は守られる。

すでに株式投資をしている人は、それが人々が必要とする会社か、バブル崩壊に強いか、点検して欲しい。

大きく儲ける必要はない。まずまずの増え方で十分

投資とは企業を応援すること、だ。

応援する人が少ないと株価が下がるので、応援の買いを入れる。応援する人が増えて株価が上がったら、その人たちに任せて利益を確定させる。そして、次に応援する人が減った時に再び応援買いをする。それをリズムよく繰り返すのが、本格的な長期投資である。

自身で株式投資をするなら、そんなリズムを意識しよう。多くはないが、そうした本格的な長期投資を行う投資信託を使う方法もある。リズミカルな売買は投信に任せ、それを積み立て購入し、長期保有する。

実のところ、地味な会社は株価が爆発的に上がることはない。それではつまらない? いや、それで十分。長期投資とは地味な会社を泥臭く応援していくもので、そんなに儲かるものではないし、そもそもそんなに儲ける必要はないのだ。

長期投資はリズム良く行う
考えて欲しいことがある。それは、お金をどう使うか

本業にコツコツ打ち込んでいる会社は、ドカンと儲かったり、爆発的に株価が上がったりはしない。でも、預金より2%、3%程度高い利回りで回っていけば、それで十分。

年間10%、20%上がるものもあるが、それらは、同じだけ下がることもある。長期の投資成果は、地味に運用していたものとほとんど変わらない。大きく下がってハラハラし、怖くなって売ってしまえば損を確定させることになる。それより、上げも小さいが下げも小さい運用をして、長期的にはまずまずのリターンが出ている、という方が、続けやすい。

そして、もう1つ、聡明な女性たちに考えて欲しいことがある。それは、お金をどう使うか、である。

我々は成熟した経済を生きている。モノが充足すると消費が伸びず、経済は成長しにくい。そんな中、欧米では経済的に余裕がある人を中心に、お金を使わなければいけない、という意識が芽生えた。NPOに寄付をする動きも広がり、米国では雇用の数%をNPOが生み出している。社会的課題解決のために出せる人がお金を出し、それが雇用を生み出し、経済が回る、というわけだ。

日本には984兆円の預貯金がある。その1%が消費や寄付に回れば1.8%、3%が使われれば5.2%、経済成長を押し上げる。あなたの使ったお金で誰かが潤い、誰かが学び、文化が育つ。あなたの心も豊かになり、給料も上がるだろう。

モノを超えて、文化に触れる、旅をする、趣味を持つなど、心の満足につながるコト消費にお金を使い、経済を回す。そのリターンを受け取る。余裕がある人、稼ぐ力がある人、考えられる人、そういう人からはじめればいい。日本でも、お金を使う文化を醸成し、国や企業に頼らず、自分たちで経済を回していこう。


お金を守るための3カ条
1. 生活に不可欠な企業に投資する 2. 勤務先は人々に必要とされるか否かを考える 3. お金を抱えず、使うか寄付する

構成=高橋晴美 撮影=国府田利光

澤上 篤人(さわかみ・あつと)
さわかみホールディングス代表取締役
さわかみ投信創業者。1971年から外資系運用会社などでの勤務を経て、99年に長期保有型の「さわかみファンド」を設定。日本における長期投資のパイオニア。2つの公益財団法人も創設。

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