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一級建築士が教える! 選んではいけない「1人暮らしの間取り、物件」と注意点

  • 2023.1.1

春から念願のひとり暮らしをスタートさせる予定のみなさん、そして親御さん、準備はいかがですか? 積極的に進めたいものの物件探しや間取り図の見方など、わからないことだらけですよね。一級建築士のリクドウさんが、絶対に選んではいけない「ひとり暮らしの間取り、物件」と注意点をお伝えします。

一級建築士が絶対に選ばない! 「1人暮らしの間取り」

リクドウさん 春から初めてのひとり暮らしを予定している方は、期待と不安が入り混じった心境でしょうか。親御さんに至っては不安のほうが大きいかもしれません。1月頃から準備に動き出す方が多いと思いますが、ベースとなるのが「住まい」ですよね。とはいえ何もかもが初めてづくしですし、親御さんの時代と今ではいろいろなことが変わっています。ですから、親子で何から手をつけていいのかわからない、そんな状況に陥っている方々も多いと察します。

一級建築士から見たおすすめの物件というのはコレ! と断言したいところですが、それは残念ながらできません。なぜなら人それぞれ優先すべきことが違うから。例えばですよ、日当たり良し、築浅で駅近の1R物件があったとします。これって一般的に、良いお部屋、というイメージがあると思いますが、家賃が10万超だったらどうですか? 学生さんや新卒の方には、おすすめできませんよね。

もしくは、居室が北向き、という物件。こちらは一般的には、あまり良くない部屋、というイメージですよね。正直、激推し! とは言いにくい。でも、大きな窓が備えてあれば、陽光は差し込まないけれど、淡い穏やかな自然光で暮らせるんです。それを求めている人からしたら、良い物件、と言えます。そういうことなんです。

が、コレだけは避けるべき! という間取りや物件はお伝えできますのでご紹介しましょう。今のご時世に合わせた、「安さと居心地の良さ」を最優先事項としたうえでご説明します。

※東京都内ほか近郊都市に住む場合を想定しています。

その1. 換気が悪い

換気は、空気の対流を作ることが肝です。

暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へ流れますよね。ですから、理論上は上下に開口部があるといいんです。といっても、窓の多くは縦に長さがあるので、普通に開ければ高低の問題は簡単にクリアできます。とはいえ、開口部はある程度の面積も必要です。でも、女性のひとり暮らしで窓をガーッと大きく開けるのは抵抗がありますよね。その場合は、換気口を2か所作るといいですよ。居室側に1か所、角部屋だったらもう1か所くらい窓のあるところが多いですから、どちらも少し開ければOKです。

窓が1か所しかない物件も、換気扇があれば問題ありません。窓と換気扇、どちらも備えてあり、かつ換気扇はしっかり機能しているかに注意して物件をチェックしましょう。

その2. 居室とキッチンが一緒

いわゆる、1Rですね。動線が短くて済むというメリットもありますが、キッチンが同じ空間にあると食べ物のにおいが部屋中に広がってしまうので、お気に入りのワンピが昨日作ったニラレバ炒めくさい、自炊しなくてもスーパーで買ってきた餃子のにおいがニットに染みついてる、なんてことがざらに起きてしまいます。ですから、1Rはおすすめできません。

その3. 洗濯機置き場、冷蔵庫置き場がない

都内で賃料が6、7万円以内の物件ですと、洗濯機、冷蔵庫置き場がない部屋もあります。これは当たり前ですが非常に生活しづらい。洗濯機置き場がない場合は、共有の洗濯機があることも多いのですが、まぁ誰が使っているのか、何を洗っているのかわからないですからね、避けたほうがベターでしょう。そして、置き場を確認できたら、位置も重要です。特に冷蔵庫って、意外と音がするんですよ(静音タイプもあるがやや高め)。ですから、寝る場所から離れた位置にあるのがなおいいでしょうね。

©miko/Getty Images

※ 2022年2月26日配信。

意外と知られていない「間取り図の注意点」4つ

最低限、選んではいけない間取りや物件のポイントを押さえたら、続いては間取り図を見る時の注意点をお伝えしましょう。よく間取り図だけで決めた、という話を聞きますが、一見わかりやすく描かれているようで、意外な落とし穴があるんですよ。かなり基本的な注意点をお伝えしますね。

注意点その1. 帖数を鵜呑みにしない

例えば1Rの間取り図で、6帖と書いてあったとします。よくあるのは、玄関から入ると左右にキッチン、トイレ・バスと、短い廊下があり、それを経て居室になる間取り。みなさん、6帖は居室部分のみを指すと思っていませんか。実は、トイレ・バスを除いた空間すべての場合があるのです。いや、もしかしたらそのケースがほとんどかもしれません。

注意点その2. 窓の大きさは間取り図ではわからない

窓の印は決まっていますが、サイズは間取り図に記載されていません。ですから、ベランダと窓があって、あ、これは掃き出し窓だな、と思っていたら、実際には床上数十cmもの位置にある小さめの窓だった、とうこともあり得るのです。窓に関して言えば、間取り図は位置だけを確認するもの、とわきまえておきましょう。

注意点その3. ロフト付き=天井が高い、と思ってはいけない

ロフト付きの物件は空間の有効活用としておすすめはしたいですが、ロフトがあるからといって、天井が高いのかな、居心地よさそうだな、と判断はできません。ロフトの床から天井までは1.4m以下と定められていますが、天井高が〇m以上の空間に設置しなければいけない、という決まりはないからです。

注意点その4. バス・トイレ同じ、を毛嫌いしない

バス・トイレ同じ=狭い、という先入観は捨ててもいいかもしれません。いまはユニットバスがどんどん進化しており、同室でも空間にゆとりがあるものもあるんです。築浅物件ではなおさら検討の余地ありと思ってよさそうです。

©studio marble/Getty Images

※2022年2月26日配信。

一級建築士が教える! 「地震に強い賃貸物件」の特徴

間取りについていろいろお伝えしてきましたが、次は、地震大国日本において命を守るために知っておいて損はないことをお話します。大きなポイントは、建物の構造と築年数、耐震工法、そして立地。それぞれの基本的な説明をしていきますね。

建物構造:火災にも強いRC造がおすすめ!

建物構造はおもに次の4種類に分けられます。

  • 鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)
  • 鉄筋コンクリート(RC造)
  • 鉄骨造(S造)
  • 木造

地震に強い構造はどれだと思いますか? 正解は、後に説明する耐震基準をもとに設計されていれば、どれも差はなく、構造にこだわることはありません。ただSRC造は、高層ビルなど大規模な建物に多く、単身者向けの賃貸物件ではほとんど見られませんので、ここでは例外と考えると、地震による二次災害に多い火災にも強いという点で、RC造がおすすめと言えます。

築年数:2000年以降に建てられた築22年以内のものがベスト!

なぜこの数字を出したかというと、1995年に起きた阪神淡路大震災を教訓に、2000年に建築基準法が改正されたからです(2000年基準と呼ばれます)。地盤に合った基礎工事の徹底、接合部や耐震壁の配置バランスの強化などが追加されました。

え、じゃあ築23年以上はアウトなのかと言ったら、そうではありません。耐震基準法の歴史は、大きく3つに分けられまして、2000年基準が最新なんですね。その前は、1981年に改正されており、これは新耐震基準、それ以前は旧耐震基準と呼ばれています。このうち2000年基準と新耐震基準で建てられたものは、次の内容を満たしていると言えますが、旧耐震基準で建てられたものは保証されていません。

「震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6強から7に達する程度の大規模地震でも倒壊は免れる」(1981年に改正された建築基準法の新耐震基準より)

ですので、新耐震基準で建てられた築41年以内のものがまぁ安心、より手堅くと考えるなら2000年基準で建てられた築22年以内のものが望ましいと言えます。

耐震工法:一番は免震だが、集合住宅はほとんどない!

建物の倒壊や破損などを防ぎ、地震に耐えるための工法を言います。種類と地震の強い順番は次の通り。

  • 免震
  • 制震
  • 耐震

詳しい話は複雑になるので割愛しますが、使われている漢字を見てもらえればおおよその見当がつくと思います。耐震は揺れに耐えられる(でもがっつり揺れます)、制震は揺れを制する(それでも揺れは感じます)、免震は揺れから免れる(ゼロではないがそこまで感じません)、ですね。建物の倒壊は3つとも防げるには変わりありませんが、室内の破損を防げるのは免震と思ってください。免震は病院や公共施設などに多く、一般の集合住宅ではあまり見られません。

立地:関東在住ならば武蔵野台地がいいとは限らない

最後は立地ですね。職場から〇分以内とか駅近とか細かい条件は人それぞれあると思いますが、もっと視野を広げて地盤を見ることもけっこう重要だったりします。関東在住であれば、武蔵野台地が比較的しっかりしていると言われています。ですが、最新情報によると武蔵野台地すべてが強いというわけではなく、地盤が弱い場所も存在することがわかりました。

また、昔沼だったり川だったりした場所は基本地盤が弱いと考えられますので避けてもいいでしょう。一概には言えませんが、住所に「沢」や「谷」など水辺を連想させる地名がついているところもちょっと意識してもいいかもしれません。国交省のサイトなどを参考に調べることをおすすめします(※)。

※国土地盤情報検索サイト”KuniJiban”

©Lesia_G/Getty Images

※2022年3月5日配信

一級建築士がおすすめしない! 1人暮らしの部屋

命を守る建物の基準をお伝えしました。次は、物件に戻ります。ひとり暮らしの賃貸で人気のものといえば、コンクリ打ちっぱなしですよね。確かにスタイリッシュな部屋づくりができておしゃれです。ですが、けっこうタチが悪いコンクリ壁もあるんです。その特徴をお話します。

いくつかあるデメリットのなかでも、最大なのは断熱性の低さ。外気にかなり左右されやすいんですよね。ですから、冬は寒く夏は暑い。しかも、コンクリは一度熱を持つとなかなか冷えないという特性があり、夏は灼熱地獄に近い状態になり得ます。

冬は、ヒーターでようやく部屋が暖まったとしても、外気との差で結露が発生しやすく、つまるところカビが好む環境になりやすいです。カビは多くの人にとって不快極まりないイヤな存在ですよね。健康を害する恐れも出てきます。

つまるところ、光熱費はかかるし、快適性もかなり低い。これらが、タチの悪いコンクリ壁に限って言えるデメリットです。が、ある条件をクリアしているものであれば、話は別なんですよ。

それはですね、断熱施工の有無にかかっているんです。しっかり施工してあるものは、先述したデメリットを心配する必要はありません。しかも、コンクリには防音性が高いというメリットがあるんです。集合住宅の悩みのひとつに、騒音がありますよね。それも難なくクリアです。但し、コンクリ壁の断熱施工はおもに外壁側で行うことが多いですが、見た目ではわかりにくい。ですから、必ず不動産屋さんに聞いて、絶対にきちんとした回答をもらってください。

また、外断熱は年月が経つと効果も低くなるので、メンテナンスの確認もしましょう。それが面倒なら、築浅物件がベターでしょう。まとめますとズバリ、

「コンクリ壁の部屋でも、外断熱されていないものは絶対におすすめできません!」

©Carlina Teteris/Getty Images

※2022年3月5日配信

一級建築士が絶対に選ばない! 「1人暮らしの賃貸物件」基本のき

最後は、誰もが気になる「音」の問題について。音漏れする部屋の基本的な見分け方をお伝えします。

キーとなるのは遮音(音を遮る)、吸音(音を吸収する)という防音性が高いかどうか。隙間の有無などを指す気密性、壁や床材の密度、防音材が使われているかなどで変わってきます。

窓やドア、壁などに隙間がなく(=気密性が高い)、壁や床そのものの密度が高いと、話し声やテレビなど空気によって伝わる音は防ぐことができます。ですが、人の足音や椅子を引く音など床や壁を振動させて伝わる音に対しては、壁の厚みくらいで防ぎにくいんです。これはもう致し方ないとご理解をしていただいて話を進めますね。

まず、賃貸向け集合住宅の建物構造はおもに、木造、鉄骨造、RC造(鉄筋コンクリート造)の3種類。コンクリートは遮音性が高く、RC造は柱梁床がRC、壁もRCで造られていることがほとんど。つまり、RC造を選べば音漏れしにくい可能性が高い、ということですね。ただ、なかには、木造や鉄骨造と同じように壁がRCで仕切られていないRC造の物件もあるので絶対とは言えず、注意が必要です。

木造と鉄骨造の比較ですが、違いがでやすいのは床です。鉄骨造はコンクリートスラブで造られている物件もあります。その場合は木造よりも防音性が高いと言えます。

簡単に見分ける方法もあります。まずやっていただきたいのが、何か所も壁と床を叩くこと。密度の高い壁や床ですと、叩いてみると音が振動せず詰まった感じで短く終わります。逆に中が空洞でスカスカだったりすると、軽くて音が少し響く感じがするんですよ。文字にするとイマイチピンとこないかもしれませんが、実際に何か所か叩くと、その違いがはっきりとわかると思います。

壁を叩くのに加えてやっていただきたいことが、その建物の住人の方々が在宅していることが多い時間帯に内見しに行くことです。部屋に入ったら生活音が聞こえるか、大きな音を立てる人はいないかじっと耳を澄ませましょう。

また、平日と休日とでは、周囲の環境に変化がある場合もありますから、音が気になる方は、日にちや時間帯を変えて複数回の内見をしてみましょう。また、不動産屋さんに騒音についての苦情の有無も確認したほうがいいですね。

住んでみてからでは遅いのです。内見や事前調査に時間を割いて、防音に対する仕上げ方を必ず確認しましょう。

以上、選んではいけない「1人暮らしの間取り、物件」と注意点をお伝えしました。みなさんが満足のいくひとり暮らしを始められますように。入念な準備が功を奏しますよ。

教えてくれた人
リクドウさん 一級建築士。設計事務所の管理建築士。普段の仕事は、公共、商業施設の設計がメイン。住まいに対するモットーは「自分らしくいられる、憩いの空間であるべき」。

©Lesia_G/Getty Images

※2022年3月13日配信。

まとめ構成・伊藤順子

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