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エミン・ユルマズ「まもなく日本株に絶好の買いチャンスが訪れる」と予測する私が、今お勧めする投資法とは

  • 2023.1.1
約30年間続いたデフレ傾向が、今、インフレに

日本で1990年代半ば以降約30年間続いたデフレ傾向が、今、インフレに転じています。これまでの先進国におけるデフレ要因の1つ目は「グローバル化」でした。30年前に東西冷戦が終結し、イデオロギーの対立がなくなり、市場が開放されて一気にグローバル化が進みました。

複眼経済塾株式会社取締役・塾頭 エミン・ユルマズさん
複眼経済塾株式会社取締役・塾頭 エミン・ユルマズさん

先進国で生産していたモノを新興国に委託すれば、生産コストを抑えられます。代表例は中国です。中国は、「人類最大のデフレ輸出マシン」といわれるくらい世界中に「デフレを輸出」していました。中国に生産拠点が移ることで、先進国では中間層以下の人々は国内で高い賃金を得られず、可処分所得が減ってお金を使わなくなり、さらにデフレが加速。新興国は逆にグローバル化の恩恵を受けてGDP(国内総生産)を大きく伸ばし成長しました。

しかし今、米中を軸にした新しい冷戦が始まっています。その象徴的な出来事がロシアによるウクライナ侵攻です。新冷戦は「アンチグローバル化」を加速し、世界を分断するため、政治コスト、製造コスト、輸送コストなどが増え、物価を押し上げています。

2つ目のインフレ要因は、いわゆる「グリーンフレーション」です。脱炭素化やESGの観点で企業活動を行うことも、コストを上げることにつながります。

そして、3つ目が、先進国を中心とする労働力人口の減少。働き手が減ることでアメリカなどでは賃金が上昇しています。労働者の賃金の上昇は、構造的なインフレ要因です。

アンチグローバル化も脱炭素化も人口減も、これからさらに進むため、今後も構造的なインフレは続くと予想されます。

時間がない人は指数やETFを積み立てで買う

日本人は時代が変わったことに気づいて、これまでの「デフレ脳」から「インフレ脳」へ切り替える必要があります。これまでのデフレ脳では、買いたいモノの価格は下がっていくので、急いで買う必要はなく、現金を持っていれば相対的な価値が上がっていました。さらに、給料が上がらず景気がよくないため、将来に備えて貯蓄をするマインドが強かったのです。しかし、これからは欲しいモノは値上がりする前に買ったほうがいいし、目減りする現金より実物資産やリスク資産を持ったほうがいい。さらに、将来に備えるには貯蓄よりも自己投資です。

エミン・ユルマズさん

実物資産とは、不動産、香水、宝石、高級時計、アンティークコインなど。不動産は金額が大きくて流動性が低く株より専門性が高いので、投資のために買うのはあまりおすすめしません。宝石は買った価格以上で売ることは難しいので、きちんと国際相場があってグラムいくらで売り買いできる金がおすすめです。私が育ったトルコはハイパーインフレが起こりやすい国なので、トルコの女性は少しお金があると金のブレスレットなどを買います。お金を目減りさせないための知恵ですね。

リスク資産の代表は株です。忙しくて株の勉強をする時間がない人は、単純に積み立てをすればいいんです。具体的には、インデックスファンドや株価指数に連動するETFを積み立てます。株価指数は、日経平均株価やTOPIXでもいいし、米国株のインデックスファンドも投資しやすいと思います。また、新冷戦の恩恵を受けるインド、ベトナムなどのETFに分散する手もあります。

個別株は、自分が好きなサービスや商品を提供している企業を評価して応援するために投資するのが基本です。女性は、生活するうえでいろいろな変化に気づくのも早いから、気づいた変化に関連する企業を調べて投資してみるとよいでしょう。

今までの「デフレ脳」から「インフレ脳」への切り替えを!
絶好の買い場に備えて投資の練習をスタート

インフレの時代は、人も動くしお金も動くため、世の中は荒れてきます。しかし、私は今後はインフレに伴って景気が緩やかに活発化すると考えており、そういう意味では投資をスタートするにはいい時期です。

ただし、アメリカの利上げのサイクルが落ち着くまで、目先では米国株が調整局面に入るでしょう。日本株も下がる可能性がありますが、米国株の調整が終わって再び上昇サイクルに入れば、日本株に有利な時代になります。初心者なら、来たるべき絶好の買い場に備えて、売買の練習をしてみましょう。投資を勉強するのなら、投資の基礎を教えてくれる人の動画を見たり、本を読んだりするところから始めてください。

お金は猫みたいなものです。追いかけると逃げるが、ほうっておくと向こうからすり寄ってきます。お金を稼ぐことを目的にせず、正しい判断を続けていけば、いつの間にか資産は増えていくものです。


お金を守るための3カ条
1. 現金より実物資産かリスク資産を 2. 忙しい人はインデックス投信の積み立て 3. 投資の勉強をして、練習を始める

構成=生島典子 撮影=国府田利光

エミン・ユルマズ(えみん・ゆるまず)
エコノミスト
トルコ・イスタンブール出身。2004年に東京大学工学部を卒業。2006年に同大学新領域創成科学研究科修士課程を修了し、生命科学修士を取得。2006年野村證券に入社。2016年に複眼経済塾の取締役・塾頭に就任。著書に『新キャッシュレス時代 日本経済が再び世界をリードする 世界はグロースからクオリティへ』(コスミック出版)、『コロナ後の世界経済 米中新冷戦と日本経済の復活!』(集英社)『米中新冷戦のはざまで日本経済は必ず浮上する 令和時代に日経平均は30万円になる!』(かや書房)、『それでも強い日本経済!』(ビジネス社)、『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)などがある。

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