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「Jポップ」という言葉が生まれたのは1980年代末。ニッポンの音楽の歴史をたどってみると

  • 2023.1.1

1960年代の終わりから現在までの日本のポピュラー・ミュージックの流れをまとめた、評論家の佐々木敦さんの著作が、増補されて文庫化した。『増補・決定版 ニッポンの音楽』(扶桑社)だ。

はっぴいえんど、YMO、小室哲哉、中田ヤスタカなど、各時代の音楽シーンを代表するアーティストたちを中心に、音楽の歴史をひとつながりの「物語」ととらえて語っている。第一章は、こんな一文から始まる。

最初の物語は一九六九年、四人の若者たちによって、あるバンドが結成されたところから始まります。

現在すっかり定着している「Jポップ」という言葉は、佐々木さんによると、1980年代末に生まれたという。言葉自体が生まれる以前に、のちの「Jポップ」につながる音楽が生まれたのが、1960年代末だと論じている。

本書は、1970~80年代を「第一部 Jポップ以前」、1990~2010年代を「第二部 Jポップ以後」と大きく二分して、各年代を10年ごとに章立てて扱っている。

佐々木さんは本書を通して、「ニッポンの音楽」にとっての2つの「外部」の存在を重要視している。「洋楽(海外)」と「音楽以外の文化的/社会的事象」だ。たとえば、本書で「物語」の始まりとされるバンド・はっぴいえんどが結成された1969年は、日米安全保障条約の調印に反対する政治運動と、アメリカ文化への憧れが同居する時代だった。アメリカへの複雑な感情が渦巻く時代から、どのように今の「Jポップ」のもとになる音楽が生まれたのだろうか。

私たちが聴いているポピュラー・ミュージックは、どのような歴史をたどって今のかたちになったのか。その「物語」を俯瞰するのに最適な一冊だ。

【目次】
第一部 Jポップ以前
第一章 はっぴいえんどの物語
第二章 YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)の物語
幕間の物語 「Jポップ」の誕生
第二部 Jポップ以後
第三章 渋谷系と小室系の物語
第四章 中田ヤスタカの物語
ボーナストラック Jポップ「再生」の物語

■佐々木敦さんプロフィール
ささき・あつし/1964年、愛知県生まれ。批評家。音楽レーベルHEADZ主宰。広範な範囲で批評活動を行う。著書に、『ニッポンの思想』『ニッポンの音楽』『ニッポンの文学』(講談社現代新書)、『あなたは今、この文章を読んでいる。』(慶應義塾大学出版会)、『シチュエーションズ』(文藝春秋)、『未知との遭遇』(筑摩書房)、『これは小説ではない』(新潮社)、『批評王――終わりなき思考のレッスン』(工作舎)、『絶体絶命文芸時評』(書肆侃侃房)など多数。2020年、「批評家卒業」を宣言。同年3月、初の小説「半睡」を発表した。

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