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夫婦の心を解放する、 離婚約という新しい形。

  • 2023.1.1

同性愛、離婚約、不倫愛……多様性が謡われる時代だからこそ、愛への考え方やパートナーとの在り方も人それぞれ。8組のさまざまな愛の物語を聞きました。今回はエッセイ『離婚約、してみました。〜別れてもヨリを戻しても幸せになるために』(光文社刊)を出版したエッセイストカップルのお話をお届けします。

のらりくらら〈エッセイスト・40歳〉& A〈商社勤務・48歳〉

20年前に結婚し、1児に恵まれた、のらりくららさん。20代後半から子育てと仕事の両立に奮闘してきたが、娘が高校を卒業するという節目を目前に控え、連れ添った夫Aと別々の道を歩むことを決意したという。

「Aのことは、父親としてとても尊敬しています。でも、夫として、男性としての役割は期待してはいけないのかなと思って。これまでは、子育てというミッションを遂行するためのパートナーとして共同生活をしてきた感覚です。子どもの自立を目前にしたいま、娘が巣立った後に夫婦ふたりきりで生活を続けることはどうしても考えられず、よく話し合って、お互いに解散しようという結論にいたりました」 派手な喧嘩をしたわけでも、裏切りがあったわけでもない。あくまで理性的に話し合ったうえで、のらりくららさん夫婦は、婚約ならぬ“離婚約”という新しいパートナーシップの進め方に行き着いた。

Aは20歳年上の商社マンで、クールなタイプ。仕事で異例の昇進をしても決してひけらかすことなく、のらりくららさんいわく「何よりも女性の無駄話を嫌うような人」。とはいえ、出会った当時、学生だった彼女に複数回アタックしてきたのはAのほうだ。そこから2年の交際期間を経て、結婚。しかし娘を出産後、セックスレスになった。のらりくららさんが理由を問うと、もともと性生活に淡白だったから「もう必要ないよね」という答えが返ってきたという。「ショックだったし、女性としての自信をなくしました。でもその頃は、仕事場と保育園の往復でいっぱいいっぱいの生活。Aとは子育てに関する考え方が一致していたし、父親として私にできない役割を果たしてくれている と感じていたので、自分の不満や女性としての感情は飲み込むことにしました。いまとなっては、それが夫婦関係の隔たりを決定的なものにしたと反省していますが、 当時はそれが家庭内でスムーズに日々の業務をこなしていくための処世術だったんです」

周囲から「大嫌いでないなら、離婚しなくてもよいのでは 」「経済的なことを考えると、コロナ禍に別離を考えなくても」と言われ、離婚の話をこのまま進めてよいのか揺れる時期もあった。しかし定期的に話し合いを続 ける中で、Aがのらりくららさんのことを「お金の価値観が合わない」と捉えていることが判明。「私はフリーランスでファッション関連の仕事もしていて、多くの服を扱っています。もちろん好きなものだけど、仕事で手に入れているというのも事実。でも『服だらけのこの家で、俺が満足していると思う?』とAに言われてしまって。彼に私の仕事や業界の性質を理解してもらうのは難しい現実や、Aにとって私のものはただのガラクタにしか見えていないということを悟りました」

それはもはや、のらりくららさんがものを減らせば解決するという次元の話ではなく、ふたりの生き方のスタンスの違いを体現していたようだ。  現在、離婚後の生活のため、自身のキャリアやお金のあり方について前向きに考え直している最中。「“離婚約” しました」と言うと、「ウチも!」という夫婦や「それ、いいかも」という人が意外と多かったそう。「夫婦関係は十人十色で、本当にさまざまな話を聞きますが、多様なケースを知る弁護士からも“離婚約”は 興味深い形だと言われました。不満を募らせ感情的に爆発して離婚するよりも、今後の生き方についてしっかり話し合いを重ね、考えながら計画的に行動できる。このやり方を選択して良かったと思っています」 

結婚も離婚も、互いの思いやりや努力が何より大切だ。 「離婚は単なる結婚の終わりではなく、その人たちにとっての人生の新たなスタート。それを疲弊しきった状態で始めてしまうときっと大変だし、せっかくの時間がもったいない。だから私は“離婚約”をポジティブな選択肢のひとつと捉えたいし、ほかの悩める多くの女性に とってもそうあってほしいと心から考えています」

*「フィガロジャポン」2022年3月号より抜粋

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