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すべての作り手たちへ。100歳の染色家・柚木沙弥郎さんからのメッセージ

  • 2023.1.1
女子美アートミュージアムで開催された『柚木沙弥郎の100年 創造の軌跡』の様子

布いっぱいに配された大胆な幾何学模様、カラフルな手と手のしわのモチーフ、繰り返される色と形。エネルギー溢れる色彩と、躍動感ある独創的な模様に彩られた染色布。〈女子美アートミュージアム〉で開催された『柚木沙弥郎の100年 創造の軌跡』展に、孫の丸山祐子さんと訪れた柚木沙弥郎さん。

注染布や型染布など初期作品から近作まで。ほかにアイデアスケッチのスクラップブックなど、柚木さんの創造の源に触れる展示や、長年携わった女子美工芸科の記録写真、ノートなど、取り上げられることが少ない指導者としての資料の展示も。

柚木さんは会場を見渡すと「夢中でやってきたんだね。こんなにたくさん、よく作ったもんだ」と語り、自身の足跡を振り返っていた。

染色家、アーティストの柚木沙弥郎
2022年秋、神奈川県相模原市の〈女子美アートミュージアム〉で『柚木沙弥郎の100年 創造の軌跡』が開催された(現在は終了)。

毎日、手で作る面白いと感じる

大きな窓から自然光が入るアトリエと居心地のよいリビングルーム。この秋、100歳を迎えた柚木さんは、お気に入りのモノに囲まれた空間で、日常にある“面白いと思うこと”を見つけながら、日々「作ること」と向き合っている。

20代で柳宗悦が提唱する「民藝」と出会い、工芸作家の芹沢銈介の型染カレンダーに魅せられて染色家を志した柚木さん。女子美術大学で教鞭を執りながら、「注染」や「型染」という表現を駆使し、75年にわたり独自の作品を作り続けてきた。その間、染色以外にも、柚木さんはさまざまな表現に挑戦。ポスターやロゴなどのデザインも数多く手がけ、70歳を過ぎてから絵本や版画の制作にも取り組んだ。

染色家、アーティストの柚木沙弥郎
2020年/旅に出かけることが難しくなっても、かつて旅した場所を思い出しながら絵を描くことが、新たな「旅の歓び」に。
染色家、アーティストの柚木沙弥郎
2021年/大好きなアトリエの大きなテーブルの上で、〈DEAN & DELUCA CAFE〉の壁面に飾る切り絵アートを制作。
染色家、アーティストの柚木沙弥郎
2022年/海外のアートブックフェアに出品するZINE作りに参加。思い浮かんだモチーフを画用紙にクレヨンで描いた。

「自由になったのは80歳を越えてから」と語り、97歳でパリでの展覧会も成功させた。柚木さんの周りには、国や世代を超えて、さまざまな人々が集まり、創作の場はさらに広がり続けている。

「いつでも、今やっていることを面白いって感じながらやることが大事。絵を描いたり、型を彫ったり、紙を切ったり、のりで貼ったり。うまくいかないこともあるけれど、そういうことも含めて手で作ることは面白い。こうして、今も好きなことを仕事にできているというのは、幸せなことだなと思うね」。そう言って、両手をパッと広げて見せてくれた。

染色家、アーティストの柚木沙弥郎
2022年10月17日、100歳の誕生日。

毎日がね、新しい今日なんだよ。
今日をね、いかに大切に思うか、
それによってその日の仕事ができるわけ。
それを積み重ねていけば一生涯の仕事なんだよ。
今日という、一番新しい自分の境地を生かす。
飛んでいかなきゃいけない。
飛び出せ、毎日ね。
そういうのを毎日毎日続けていけば
生涯っていうのはいい人生になると思うな。
僕は今そんな気持ちですね

柚木沙弥郎

女子美アートミュージアムで開催された『柚木沙弥郎の100年 創造の軌跡』の様子

Information

図録『柚木沙弥郎の100年 創造の軌跡』

展覧会図録『柚木沙弥郎の100年 創造の軌跡』(青幻舎)

柚木が生み出した表現と、女子美での創作・指導の過程のほか、1950年代から最新作まで、柚木作品を網羅した一冊。書店で一般発売中。

profile

柚木沙弥郎(染色家、アーティスト)

ゆのき・さみろう/1922年東京生まれ。工芸作家・芹沢銈介に師事。染色のほか、絵本、グラフィックなど幅広い分野で制作を手がける。著書に『柚木沙弥郎との時間』(グラフィック社)ほか。2023年1月13日から4月2日まで、東京の日本民藝館で『生誕100年 柚木沙弥郎展』が開催予定。

HP:https://www.samiro.net/index1.html

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