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仕事も酒肴も...言葉で紡がれる珠玉の世界に浸る4冊。

  • 2022.12.30

手練れの翻訳家が発掘した、今後注目の作家の短編集。

『アホウドリの迷信』

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岸本佐知子、柴田元幸編訳スイッチ・パブリッシング刊¥2,640

目利きの翻訳家が日本ではまだ知られていない作家の短編を持ち寄ったアンソロジー。ポール・オースターもミランダ・ジュライもこのふたりが訳さなければ、これほど日本で読まれることはなかったかも。チアに女装して自分のセクシャリティに目覚める「オール女子フットボールチーム」、古いミシンを改造した幻灯機が少女の孤独を映し出す「アガタの機械」などひとクセある10編が、小説を読む愉しさを広げてくれる。対談「翻訳余話」も収録。

切り捨てられた言葉から、激動の女性史が浮かび上がる。

『小さなことばたちの辞書』

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ピップ・ウィリアムズ著 最所篤子訳小学館刊¥3,300

母を亡くし、辞書編集者の父が勤める写字室を遊び場に育った少女エズメは、辞書に入れてもらえない言葉があることに気付く。「ボンドメイド(はしため)」「サフラジスト(女性参政権論者)」「シスターフッド(女性同士の連帯)」……女性たちは言葉を獲得することで世界を知り、切り開いてきた。イギリスの『オックスフォード英語大辞典』の編集室を舞台に激動の時代を描いたこの小説は、言葉の意味が空疎になりがちないま、深く心に響く。

中原中也賞を受賞した詩人が、日常の閉塞感に風穴を開ける。

『目をあけてごらん、離陸するから』

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大崎清夏著リトルモア刊¥1,650

日常が詩になる瞬間が確かにあって、記憶の中で鮮やかに蘇る。詩人というのはそのタイムラグがない人のことをいうのかもしれない。小説、エッセイ、旅の日記が一冊になったこの本の中で、たとえば『フラニーとズーイ』のワンシーンが目の前の風景と重なって見えてくる。私たちは読んだ本、見た映画、憧れの人と地続きで生きていて、時折向こう側に接続する。解像度が高い言葉で、心がふと離陸する瞬間を思い起こさせてくれる。

その日の句読点になる、オツな料理で酒を嗜む。

『愛しい小酌 12か月のささやかなお酒と肴』

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寿木けい著大和書房刊¥1,650

「小酌」とは、あるものでちょっと飲む一日の小休止のような酒と肴のこと。少人数で飲むことを指す言葉でもある。同書では月ごとに旬の食材を使った料理を紹介。サトイモとブルーチーズのグラタン、アサリの酒盗和えなど、さっと作れて、取り合わせの妙がものをいうオツな料理が並ぶ。小さじ何杯という表記はない。ひと皿を仕立てる手際と塩梅を記した抑制のある語り口にも、小酌の粋な味わい方が潜んでいる。食の歳時記として活用したい。

*「フィガロジャポン」2023年1月号より抜粋

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