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語る音楽家、語られる音楽家:坂東祐大→鶴田錦史

  • 2022.12.30
竹田嘉文が描く鶴田錦史のイラスト

坂東祐大が語る音楽家、鶴田錦史

昨年のアニメシリーズ『平家物語』、今年は映画『犬王』や大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に、琵琶法師が登場することから、琵琶という楽器に注目が集まっているようです。ノンフィクション本『さわり:天才琵琶師「鶴田錦史」その数奇な人生』は琵琶についての興味深い歴史を知る一冊でした。

まず鶴田錦史といえば、武満徹「ノヴェンバー・ステップス」の初演者ということで有名。ニューヨークフィルハーモニックの125周年を記念し、武満が委嘱作品として作曲。世界的に評価された楽曲です。

そもそも武満と鶴田の出会いは1965年頃。武満が映画『怪談』の劇伴に伝統とは異なる琵琶の音を入れたいと思い、鶴田と共演することになったそうです。同時期、武満は鶴田の琵琶と、尺八による二重奏曲「エクリプス」も作曲していることから、武満が琵琶の音に感化されていることがわかります。

『さわり』には、それ以前の鶴田のバックストーリーが描かれていました。まず、鶴田は昭和初期に天才女流琵琶師として、アイドル的な売り出し方をされていたこと。結婚するも、夫の浮気がもとで離婚。子供を弟子夫婦や夫に預け、クラブ経営などをする実業家に転身。戦後から男装で生活し、さらに奥さんまでいたそうで……。武満との出会い、実業家から琵琶奏者へのカムバックなど。当時のことが詳細に書かれていますが、今の時代では考えられない、すごい世界でした。武満や小澤征爾など錚々たる顔ぶれも登場しますし、ドラマ化したら面白いんじゃないかな。
それを踏まえ「ノヴェンバー・ステップス」を聴くと、尺八奏者の横山勝也と鶴田の間に間合いなど、ひとしお緊張感と才能に溢れていると再認識しました。

石若 駿が選ぶ3枚

「ノヴェンバー・ステップス」
「ノヴェンバー・ステップス」。ニューヨーク・フィルの音楽監督だったレナード・バーンスタインへ、小澤征爾が武満徹作「エクリプス」を聴かせたところ絶賛。委嘱として武満へ作曲を依頼し、演奏を鶴田へ依頼。武満の代表曲。「『ノヴェンバー〜』が気に入ったら、山根明季子さん作曲、西原鶴真さんが琵琶を演奏する動画『ハラキリ乙女 琵琶とオーケストラのための』も必聴!」と坂東さん。
『鶴田錦糸の芸術』
『鶴田錦糸の芸術』はフランスなど、世界中で発売されたアルバム。

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坂東祐大

ばんどう・ゆうた/作曲家。東京藝術大学音楽学部卒業。10月16日に個展『耳と、目と、毒を使って』が開催された。

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鶴田錦史

つるた・きんし/1911年北海道生まれ。幼少期から錦心流薩摩琵琶を学び、10代からプロとして活動。36年頃、実業家に転身。55年に琵琶演奏家として再デビューし、世界中で公演する。1995年没。

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