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動物がテーマの展覧会をオルセー美術館と日本文化会館で。

  • 2022.12.28
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1. 動物を描き続けた19世紀の女性画家、ローザ・ボヌール

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左: ローザ・ボヌール作『森の王』(1878年)。244.4×175cmという巨大な作品は、森の中で大鹿にばったり遭遇したイメージで鑑賞! 右: 展覧会場の向かいに、アーチストのグロリア・フリードマンによるインスタレーションが。 photos Mariko Omura

19世紀に動物画家として活躍したローザ・ボヌールの生誕200周年を記念して、オルセー美術館で「ローザ・ボヌール(1822~1899)」展が開催されている。19世紀の男性優位の画壇にあって女性として活躍し、レジョンドヌール勲章を受賞した最初の女性芸術家である彼女の名前はフェミニズムに結びつくことから聞き覚えがあるだろう。

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左: Édouard-Louis Dubufe(1819〜83)によるローザ・ボヌールの肖像画。牛はローザの筆による。制作は1857年、彼女が35歳の時だ。© RMN-Grand Palais (Château de Versailles) / photo Gérard Blot.右: George Achille-Fould(1865〜1951)による『アトリエのローザ・ボヌール』(1893年)。亡くなる6年前、71歳の時。© Mairie de Bordeaux, musée des Beaux-Arts, photo L. Gauthier

23歳の時に参加したサロンで『Le Labourage(耕作)』(1845年)が第3位に選ばれて以降、評価されていた彼女らしくほかの画家による彼女の肖像画も複数点展示されているが、展覧会のメインはもちろん動物を描いた作品である。国際的知名度を得るきっかけとなった『Le Marché aux cheveaux(馬市)』(1855年)なども含まれている。犬、猫、ウサギ、カモシカ、ヤギ……1859年にフォンテーヌブローの森の一角に購入した城にアトリエを構え、彼女は敷地内でさまざまな種類の動物を飼育し、作品に残した。1880年代には彼女が野獣に興味を持ったことから、ここにライオンも加わるのだ。額に収められた多彩な動物たちのバイタリティあふれる姿やリアルな表情に心をとらえられ、大人も子どもも大満足の展覧会だ。

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左: 1849年のサロンで大成功を収めた『Labourage nivernais, dit aussi Le sombrage』(1849年)。©Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt 右: 会場で大勢を吸い寄せる木炭画は、スコットランドで描いた『Bœufs traversant un lac devant Ballachulish (Ecosse) ou Troupeau traversant une rivière』(1867、1873年)© DR

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展示は彼女を紹介する部屋に始まり、牛・馬、スコットランドやピレネー地方の旅、動物のアトリエ、野獣……と10室で展開する。 photos:©︎Musée d’Orsay Sophie Crépy

なお彼女のシャトーはパリから76kmのBy-Thoeryという土地にあり、美術館、サロン・ド・テ、そしてシャンブルドットも備わっている。19世紀という女性の価値が認められない時代に自由と成功を手にした彼女のエスプリを求めて、訪れてみては?

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左:『狩猟のあとのバルバラ』(1858年頃)右:『野生の猫』(1850年)photos:Mariko Omura

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左: 野獣の作品はテーマとしてひと部屋捧げられている。右: 未完で終わった『火事から逃げる野生の馬』(1899年)。photos:Mariko Omura

「ローザ・ボヌール(1822~1899)」展会期:開催中~2023年1月15日Musée d’OrsayEsplanade Valéry Giscard d’Estaing開)9:30~18:00(火、水、金〜日)9:30〜21:45(木)休)月料:16ユーロwww.musee-orsay.fr

2. 江戸時代の動物事情を、パリの日本館で知る

パリ日本文化会館で開催中の『いきもの:江戸東京 動物たちとの暮らし』展は東京の江戸東京博物館との共同開催によるもので、改修のため閉鎖中の博物館からの所蔵品で構成されている。展覧会は長く平和が続いた江戸時代(1603~1868年)の江戸(東京)における人と動物の関係にフォーカス。動物との暮らしを楽しみ庶民を描いた浮世絵などを介し、東京にあふれていた自然や動物の種類の豊富さにはパリっ子はもちろん日本人も驚かされる。

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左: 鎖国が終わり来日した外国人を驚かせたのは、日本における動物と人間の友好関係。フランス人画家ビゴーが描いた作品『Le bonheur』(1883年)に見られるように、追い払われることもなく、肉屋の前でおこぼれをいただけるのをおとなしく待っている犬の光景もそのひとつだった。右: 1634年頃に3代将軍家光のために描かれたといわれる「江戸図屏風」の中に、この時代の人々と動物の関係を見いだせる。動物で最も多く登場するのは軍馬だが、近づいてみると、板橋と書かれた土地には野生の鹿の姿も多数。photos:(左)collection du Edo-Tokyo Museum、(右)Mariko Omura

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左: 展覧会のポスターから。きれいに身繕いされ、見事な首輪をした猫。飼い主の若い娘から大切にされている様子が見てとれる。1888年。右: 江戸時代初期に描かれたウサギ。 collection du Edo-Tokyo Museum

外国人の視点がとらえた日本人といきものの関係から始まる展覧会では、江戸時代の初期の馬は軍事用が多かったけれど平和が続くと家畜としての馬が増えていったことや、大黒神の遣いとされるネズミが家に出ることは繁盛に繋がると喜ばれたことなどを学ぶ。また、ウズラの声を競う品評会が開催され、侍から町人まで身分を超えてその遊びを楽しんでいたことことにより、この時代の穏やかな日々を想像することができるのだ。1685年に5代将軍の徳川綱吉が出した「生類憐れみの令」についても紹介され、フランス人の関心を集めている。

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左: 江戸時代中頃の屏風。ウズラの歌声コンクールが描かれている。collection du Edo-Tokyo Museum右: ウズラのカゴも展示。photo:Mariko Omura

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左: 象、虎、ラクダなど海外からの動物は珍しさゆえに集客力のある見世物となった。Ryôko, 1863 collection du Edo-Tokyo Museum右: 明治時代以降には動物園、水族館が東京に開設された。小泉癸巳男が東京を描いた100点の中から、48番目の『春の動物園』(1934年)。 collection du Edo-Tokyo Museum

野生の動物のコーナーで紹介する鶴狩りが興味深い。この時代には江戸で将軍が狩った鶴を京都の天皇家に献上する慣わしがあったそうだ。したがって、江戸の町には鶴がいなければならず、そのために野生の自然をあえて残していた場所があり、それによって自然環境が保たれたという利点がもたらされ……たった一枚の絵を前にこうして来場者は意外な発見をするのである。なお当時野生動物として、狐、狸、絶滅した日本カワウソも東京に生息していたという。

さまざまな発見のある展覧会の締めくくりのコーナーはデザインの中のいきもの。日常の暮らしの必需品、おもちゃなどに動物がモチーフとされるのは、いまも昔も変わりないようだ。

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周延楊洲が描いた江戸城外の鶴狩り。1897年。collection du Edo-Tokyo Museum

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左: 猿を刺繍したタバコ入れ。中: 白鳥を刺繍したかい巻き布団(19世紀)。右: 猫の蚊取り線香焚き(1926〜1945年)photos:(左、右)Mariko Omura、(中)collection du Edo-Tokyo Muséum 

『Un bestiaire japonais」展会期:開催中~2023年1月21日Maison de la culture du Japon101bis, quai Jacques Chirac75015 paris開)11:00~19:00(火、水、金、土)11:00〜21:00(木)休)日、月料:5ユーロwww.mcjp.fr

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