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『ヨルとよる』【今日の絵本だより 第337回】

  • 2022.12.28

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『ヨルとよる』 あさのますみ/作 よしむらめぐ/絵 教育画劇 1540円

一年で一番夜の長い冬至が過ぎたとは言え、まだまだすぐに日が暮れるこの季節。 長い夜の親子時間に、こちらの絵本、『ヨルとよる』はいかがですか。

ヨルは、ミリちゃんのお家で暮らしている、黒猫の男の子。 「ヨルはね、よぞらみたいな いろだから ヨルって なまえなんだよ」 ヨルをひざにのせて、優しくなでながら教えてくれるミリちゃんですが、ヨルには何のことだかわかりません。 お家の中で暮らしているヨルは、外の世界に出たことがないのです。

ある日、ヨルはお家の外壁のすきまに、白いネズミがはさまっているのを見つけます。 「たいへん!」 手を伸ばして、ネズミをそこから出してあげたヨル。 助けてもらったネズミとヨルは、それからたくさんおしゃべりをしました。 ヨルが驚いたのは、ネズミが聞かせてくれた夜の町の話。 「よるって、まっくらで、しずかで、ねむるものでしょ?」 とヨルが言うと、 「よるって、まぶしくて、にぎやかで、おいしいもんだよ」 とネズミは答えます。 お互いの知っている夜は、同じ時間のはずなのに、全然違うものみたい。 その日の晩、ネズミの案内で、ヨルは生まれて初めて部屋の窓から抜け出し、夜の町を歩きます。 確かにそこにあったのは、まぶしい夜、にぎやかな夜、おいしい夜。 思わぬドキドキと、とびきりのおいしさも体験したヨルは、今度はネズミを、まっくらで、しずかで、ねむる夜に案内します。

読み終えた後は、幸せで温かな気持ちに満たされて、夜という時間が今までよりも素敵に思えてくる物語。 おやすみ前に、ゆっくり読み聞かせするのにもぴったりの一冊です。 何より、ふかふかの毛並みとまんまるの瞳のヨルがなんとも愛らしくて、何度も繰り返し開きたくなるのです。

選書・文 原陽子さん はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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