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世界からお届け!SDGs通信 ロンドン編。オークの細木を裂いて編み上げるバスケット〈Oak Swill〉

  • 2022.12.27
世界からお届け!SDGs通信 イギリス編。オークの細木を裂いて編み上げるバスケット〈Oak Swill〉

木の再生力と職人の技がなせる、絶滅の危機にある湖水地方の工芸

定期的に木を低い位置で切り、その切り株から育つ複数の若木を生育する「Coppicing (コピシング)」という手法。木の再生力を生かしながら雑木林と共存する知恵は、日本の里山でも見られるものだ。細い丸木は主に薪用に使われてきたが、それを薄く裂いてバスケットに編み上げる湖水地方に伝わる伝統工芸が、Oak Swill(オーク・スウィル)である。

かつては日常生活から農作業、石炭の運搬などに幅広く使われ、Oak Swillの生産自体が一つの産業にもなっていた。残念ながら工業製品の普及で産業は衰退し、作り手(Swiller)も激減。今ではOwen Jones,Lorna Singletonなど職人は数えるほどに。英国Heritage Crafts の絶滅の危機にあるクラフトのレッドリスト入りしている。

オーク・スウィルの作り方はへーゼルの細い丸木を熱で曲げたものを枠に、数時間煮て柔らかくしたオークの細木をリボン状に裂いたもので編み上げるというもの。素朴かつ美しい佇まいは、まさに「用の美」といったところだ。森のメンテナンスや再生のためにも再発見してほしい伝統工芸なので、興味のある方はぜひリサーチしてみてほしい。

オーク・スウィルの製造工程の写真付き解説書Oak Swill Basket-Making in the Lake District by Mary Barratt (絶版)
オーク・スウィルの製造工程の写真付き解説書Oak Swill Basket-Making in the Lake District by Mary Barratt (絶版)。
バスケット〈Oak Swill〉
石炭から農産物までかつてはあらゆるものの運搬に使われていた。
バスケット〈Oak Swill〉
ヘーゼルの細い丸木を曲げて輪にしたものを枠に、リボン状にしたオーク材で編み上げる。
バスケット〈Oak Swill〉
オーク材は薄くはいだものでも耐久性が高く、丈夫で長持ちする。

profile

Owen Jones/オーウェン・ジョーンズ

コピシングによる木の生育から製品作りまで手掛けるオーク・スウィル作りの第一人者。製品はHPよりオーダーできる。

HP:http://www.oakswills.co.uk

profile

Lorna Singleton/ローナ・シングルトン

ジョーンズと共同で木の育成を手掛けながら、オークやヘーゼルのバスケットを製作する(Swill ではなくSpelk の呼称だが同じもの)。コースも主宰。

HP:https://www.lornasingleton.co.uk/

profile

山下めぐみ

やました・めぐみ/ロンドン在住ジャーナリスト・ライター。建築、デザイン、まちづくりなどを中心に、イギリスをはじめ世界各地よりリポート。建築で世界をつなぐプラットフォーム「アーキタビ」主宰。
HP:www.architabi.com

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