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ショック! 1年生で留年するの? 同じ年齢だから同級生とは限らないドイツの学校システム【教えて!世界の子育て~ドイツ~】

  • 2022.12.26

海外ではどんな子育てをしているの? 日本から離れて子育てをするママたちに、海外でのようすを教えてもらう「教えて! 世界の子育て」。ドイツで子育てをする中原さんが驚いた、子どものお友達の「留年」。そこには国籍も言語も多様なドイツの学校システムがありました。

もういっかい1年生やってるの

学校から帰ってきた娘とおやつを食べながら話をしていた時のことです。 「ラーラのクラスに意地悪な子がいてさー」と話す娘に 「あれ? ラーラは去年同じクラスだったよね。今年はクラス別れちゃったの?」と訊くと、驚きの答えが返ってきました。

「ラーラはもういっかい1年生やってるの」

「……は?」一度聞いただけでは意味があまり飲み込めなかった、「もういっかい1年生をする」の意味が。ラーラのクラスの意地悪な子の話題は吹っ飛んでしまいました。 小学校1年生を繰り返す、というのは平たく言えば留年ということです。 病気がちで出席日数が足りなかったのなら分かるけど、ラーラが入院していたことはなかったはず。 「……ラ、ラーラはリンゼと別の学年になってしまって悲しんでない? リンゼは寂しくない?」これはデリケートな話になるのではないか、と恐る恐る聞けば 「べつにー。休み時間もランチも放課後も会えるし」 と結構ドライ。

「なんで1年生やりなおしになったの?」 「ドイツ語が上手じゃないからね、ラーラは」 なるほど、そういう理由ですか。

ラーラはドイツに来てまだ1年で母国語はクロアチア語。ドイツ語で進む授業についていけないのであれば仕方がないのかもしれない。うーん。1年生で留年っていう、その字面に私がショックを受けている。 しかし更に話を聞けば、去年一緒のクラスだった23人のうち、なんと3人が留年しているのだそうで、ラーラ以外の2人はドイツ人だけど最低限の算数が出来なかったから『1年生をもういっかいやってる』のだと娘は言います。 ドイツの学校では留年する(というか学年を繰り返す)可能性があるのは知ってはいたのだけれど、それはとても曖昧な、頭の中で言葉と像が実を結べない、現実味のないものだったのが、突然「娘のクラスの10%が留年」という稲妻になって、ぴしゃんと私の上に落ちてきたのでした。

小学校1年生で入学したら6年生まで同級生のお友達と一緒、それが普通だと思っていました。 ドイツの小学校(グルンドシューレGrundschule基礎学校)は4年間だけだけど、それでも同じ年に入学したら一緒に卒業するものだと思っていたし、同級生、先輩後輩、学年が幾つ下の子、そういう同級生感覚って私の中では結構しっかりある。

ところがドイツ人の夫はあっけらかんと「クラスメイトの年齢が同じじゃないのは普通だったし、同い年が同級生という感覚は薄いかも」というのです。 どうやらショックを受けているのは私の中の日本人らしい。

ショック! 1年生で留年するの? 同じ年齢だから同級生とは限らないドイツの学校システム【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像1
ドイツの学校システム。リンゼが通う学校はグルンドシューレGrundschule(基礎学校)と言いますが、文中では便宜上「小学校」と表記しています。私立学校や州によっては基礎学校が6年間のところもあります。

年齢ばらばら、留年も珍しくない、その理由。

学級に異なる年齢の子どもがいるのが当然の理由、今更調べてみたらおおまかに3つありました。

1つ目は、入学するタイミングをある程度選べるということ。そもそも入学した時点での年齢が違うことがあるのです。まじか。 ドイツの小学校の入学式はだいたい9月頃。三角の筒を掲げて入学していく可愛らしい子ども達が5歳から7歳と既に同い年ではないのです。 まず入学したくなったら小児科医(または保健所など)で認識能力や運動能力の簡単な検査をしてもらい、小学校に入学申請を出します。 入学したくなったらというのは、5歳児でも就学意欲と能力があれば1年生になれるということと、日本でいう早生まれにあたる6~9月生まれの子どもたちが保護者の判断や本人の心身の成長にあわせて入学するタイミングを6歳時か、または7歳時かで、選ぶことができるということです。 これで早生まれの不公平感が解消されることになります。来年入学する次女おいもさんは近所に1つ年上の友達がおり、今年は入学式だったはずだと「入学おめでとうー!」と声をかけたら「今年は見送って、来年入学することにしたの。おいもちゃんと一緒に通えるでしょ」と超自由。

2つ目は各個人の語学習熟度や成績などで進級が判断されるということ。小学校2年生の長女、どうやって成績がついているかというと、日頃の抜き打ちテストや宿題を忘れないでやってくるかなど、常日頃学校で見せている姿で評価がつけられています。 これは一夜漬けではどうにもならない、本当の意味での『ありのままの姿』ですから大変。偽ることができません。親もえらいこっちゃです。 「宿題した? 今日テストだった? どこか間違えた? ここ復習しよう(お母さんも分からないけど)」これの繰り返しが成績になっていく! ヒー! 「この日はテストですよ、ここからここまでが範囲だから出ますよ」というテストはもっと学年が上がってからだそう。 へっぽこドイツ語話者の私もへっぽこなりに頑張って、それこそ歯を食いしばってリンゼの宿題を手伝うわけですが、小学校2年の内容でも言葉につまづき、しゅくだいなんて嫌いだ! ドイツ語わかんねえ! と心底思うわけですからドイツ語が流暢でない6歳のラーラの悲しさ、わからないのに周りが先に行ってしまう焦り、おばちゃんには痛いほど分かる。 ラーラの場合はストレスを抱えたまま進級するよりは、もう一度スタートラインに立ち直した方が本人のためになるという判断なのでしょう。そして周りも「そのほうがラーラのために良かったよね」と肯定的です。

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外国人の親にとって、宿題を見るということはドイツ語の勉強をするということ……。むしろお母さんが足を引っ張る今日この頃。

そして3つ目は語学留学などで1年や半年、休学する子ども達がいること。 ギムナジウムの後半(高校生くらい)になってくるとAuslandsemester(外国の学校に1年通う)に行く子もおり、そのために1年休学すれば1年卒業が延びることになります。これにはありとあらゆるパターンがあります。 16歳でレアルシューレを卒業して就職し、1年働いて費用を稼いでから留学、帰国後はギムナジウムに転入するという物凄い計画性を持ってウルトラCをキメた友達もいます。 違う年齢の子どもたちが1つのクラスにいることは珍しくなく、その理由も多様です。

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リンゼが「まんてんだったよー!」とニコニコで持って帰ってきたドイツ語のテスト。チェックがついてるところが正解という意味なので一見全部不正解にみえて焦ります! 1が最高点で6が最低点と表記の仕方も日本とは違います。

こっちじゃなかったかも、学校を変えたいかも、と思った時に周りを気にすることなく自分のペースでやり直すことのできる仕組み、個人主義、子ども達に沿った自由度は素晴らしいなと思います。誰しもが同じ能力を持っているわけでは無いし、国籍も言語も多様なドイツでは、そういった柔軟さこそが一緒に暮らしていくための鍵となるからです。 しかしその反面、クラス全員を一定のレベルに引き上げる必要の無い学校や先生からの圧は弱く(先生は13時に終業でおうちに帰ります!)、その分家庭でのサポートや本人の資質と努力に左右されるところが多大にあるのではないか。親も子も大変やでこりゃ……。

そんなことを言っている間に日々は過ぎて、もうじき(まだ小学校2年生なのに!)長女の進路を考えねばならなくなることに目を回しています。

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